結婚式は、日本では奈良時代、西洋では古代ローマの時代からあったと言われています。歴史ある結婚式では、変わった風習や面白い由来がたくさん。今回は、その中から厳選して、結婚式の雑学を3つ紹介します。

■ 結婚式で新婦が新郎の左側にいる理由

 神前式・キリスト教式・披露宴中。新婦は必ず新郎の左側にいます。結婚式のどこを切り取っても、日本でも海外でも、この立ち位置は不動です。実は新婦が新郎の左側にいるのには、とても素敵な理由があります。

 「新郎は、右手で剣を持ち、左手で愛する新婦を守る」

 男性が女性を奪い合っていた時代、新郎は右手で剣を持って戦い、左手で盾をもち、新婦を敵から守っていた……。それが由来となり、現在の新郎新婦の立ち位置が確立されました。愛する女性を守っているなんて、なんだかロマンチックですよね!

 ちなみに、挙式のときに新郎が右手に持つ純白のグローブには「大切な結婚式の最中は、剣を持たない(戦わない)」という意味があります。

 昔から、大切な儀式である結婚式。新郎の心理としては、剣の代わりにグローブを握りしめ、なんとか平穏無事に乗り切りたいという願いが込められているかもしれません。

■ 白無垢とウエディングドレス、白は白でも……?

 一般的に、神前式なら白無垢、教会式ならウエディングドレス。新婦はどちらも純白の衣裳を身にまといます。「あなた色に染まりたい」はよく聞くところですが、理由はそれだけではありません。白無垢とウエディングドレスは、白は白でも、それぞれに全く違った由来があります。

--ウエディングドレスはもともと白ではなかった

 現在では「ウエディングドレス=白」が常識ですが、18世紀後半までのヨーロッパの花嫁衣裳は赤、青、緑などのダークカラーのドレスが主流でした。素材も現在とは異なり、ベルベットや絹などに刺繍を施したものが多かったようです。ウエディングドレスをリメイクし、結婚式後も着用することから、汚れの目立たない暗い色のドレスが好まれたんだとか。

 その常識を覆したのが、かの有名な英国のビクトリア女王。1840年2月10日に行われたアルバート王子との結婚式で白のウエディングドレスを着用したことで、上流階級の子女へ瞬く間に評判が広まり、現在ではウエディングドレス=白がすっかり定着しました。

 ちなみに、白いウエディングドレスはビクトリア女王が最初というわけではなく、1406年にデンマーク・スウェーデン・ノルウェー王エーリク7世と結婚したフィリッパ妃(イングランド王ヘンリー4世の娘)が、記録に残る限りでは白いウエディングドレス着用の最も古い例とされます。

 ビクトリア女王はアルバート王子と死別した1861年以降、長期喪に服して黒の服を着用し続けたことから「喪服=黒」を定着させた1人とも言われています。

--結婚式で白無垢を着る理由は

 「邪気を払う」「嫁ぎ先の色に染まる」「白は太陽の光の象徴」など、結婚式で白無垢を着る理由は諸説ありますが、中でもあまり知られていない由来をひとつ紹介します。

 白無垢の始まりは室町・平安の時代における武家の婚礼だと言われています。結婚式は神聖な儀式であり、花嫁はこれまでの人生で色づいたものをリセットし、清浄な状態で嫁ぐとされました。その象徴として花嫁は白無垢を身にまといます。

 産まれたときに着る「産着」。死者に着せる「死に装束」。花嫁が着る「白無垢」。白無垢を着ている花嫁は、結婚を機に新たな人生を歩むため生まれ変わる、という意味が込められています。

 また、元々白無垢からのお色直しは、赤色の色打掛が一般的でした(現在では様々な色を自由に選ぶことができます)。赤の打掛は生の象徴。白無垢で一旦これまでの人生をリセットし、赤の打掛で新たに生まれ変わり、嫁いだ家で人生を歩んでいくことを意味します。

 結婚するために、一旦人生をリセットし、生まれ変わらないといけないなんて……。現代を生きる女性としてはなんだか複雑な心境です。

■ バージンロードは外国では通じない?

 花嫁が父親と歩くバージンロード。バージンロードは、花嫁の人生を表していると言われています。チャペルの扉が開くのは、花嫁の誕生。祭壇までの道のりは、花嫁のこれまでの人生。そして祭壇の前に立つ新郎と一緒に、これからの人生を歩んで行く……。そんな素敵な意味が隠されています。

 また、本来バージンロードには「アイルランナー」と呼ばれる布製の絨毯が敷かれています。これは、教会の下に棲む悪魔から花嫁を守るためと言われています。

 アイルランナーの色は、宗派によって異なり、カトリックでは赤または緑、プロテスタントは白になります。現在では、宗教色が薄くなり、アイルランナーのないバージンロードやデザインに注視したバージンロードなど様々です。

 ところで「バージンロード」は日本人が考えた和製英語。英語ではWedding road(ウエディングロード)・Wedding aisle(ウエディングアイル)。アイルとは教会の通路を意味します。至ってシンプルなネーミングですね。
 
 神前式が主流だった時代に、キリスト教式を広めたい結婚式業界の人が名付けたのが「バージンロード」と呼ばれるようになった由来と言われています。

 とはいえ、バージンロードは、花嫁と付き添い人、牧師(または神父)のみ歩くことが許された神聖な通路。ゲストで参列する際には、バージンロードは避け、両端の通路を歩くようにしましょう。

 昔も今も、人生の節目となる結婚式。様々なしきたりや由来を探っていくと、他にも面白い発見があるかもしれません。

【一柳ひとみ:筆者プロフィール】
都心にあるシティホテルで、サービススタッフ、宴会担当や婚礼担当(ウエディングプランナー)として、10年以上勤務。現在は3児の子をもつ母。保育士として働きつつ、臨時で結婚式の仕事やライター業も行っている。