1978年にNHK総合テレビで放送され、宮崎駿監督の名作として知られる「未来少年コナン」。そこに登場するダイス船長の船「バラクーダ号」を、1/24スケールのジオラマとして作っている方がいます。

 全長2.2mにも及ぶビッグスケール。本物の造船と同じ手法で2016年から「建造」を続けている、作者のかのーさんに話をうかがいました。

 バラクーダ号はインダストリアの機帆船(エンジンなど別の動力源も有する帆船)で、本来はプラスチップ輸送が主な任務。ところがダイス船長の功名心により、ハイハーバーからラナをさらったことで、物語の主要な舞台および乗り物となったのでした。

スターボードサイドから見たバラクーダ号(かのーさん提供)

 2016年からバラクーダ号のフルスクラッチモデルに取り組んでいる、というかのーさんは、宮崎アニメに登場するメカを模型化して楽しむ「宮崎メカ模型クラブ」の会長。クラブは、毎年5月に開催される静岡ホビーショーの合同展示会に参加するほか、不定期にクラブ独自の展示会で作品を発表・展示しています。

船尾から見た状態(かのーさん提供)

 巨大な模型を手がけるきっかけは「もともと帆船などでよく見かける、船体を輪切りにして内部構造を見せるクロスセクションモデルをやりたいと思っていたところに、コナンのフィギュアを作れる脳味噌晃くんが当クラブに入会してくれたことです」とのこと。

輪切りの状態(かのーさん提供)

 お2人で相談し、フィギュアの表情が見せられる1/24スケールでの再現が決定。「バラクーダ号は船首と船尾のオーバーハングが大きく、クロスセクションで船全体を作るのは無理かな、と思っていたのですが、ブロック構造の模型にすれば全体を表現できそうだ、とモチベーションが上がって今に至っています」

ブロックごとに分割可能な作り(かのーさん提供)

 ブロック構造の模型というと、現代の造船でも同じ「ブロック工法」が主に用いられています。制作の手順も本物の船と同じく、フレーム構造に外板を張り、ブロックごとに完成させていく手法が採用されています。

船首ブロック(かのーさん提供)

 まずは大まかな実物大の三面図を描き、スチレンボードでフレーム構造のモックアップを作って、各フレームの寸法を割り出します。プラ板でフレームを作る際は「精度を出すために一枚板からのクリ抜きです」とかのーさん。

プラ板からフレームを切り出す(かのーさん提供)

 天井を水平面の基点とし、各フレームをビームで繋いで船体を作っていきます。独特な曲面もこの積み重ねで作られますが「どうしてもミリ単位での誤差が出るので、現物合わせで微修正を重ねます」とのことで、ここで手を抜かないことが綺麗な曲面表現のキモなんだそうです。

船尾の構体(かのーさん提供)
曲面に合わせて外板を貼り込む(かのーさん提供)

 船体の外に設けられたタラップは、直径1mmのプラ棒を加工したもの。こういった細かなディティールが加わることで、よりリアルな船としての重厚感が出てきますね。

タラップ(かのーさん提供)

 左舷(ポートサイド)は外板のところどころに開口部が設けられており、外から船室がのぞけるようにもなっています。船長室など、内部の造作も手を抜かずしっかり作られているので、フィギュアを配置するとアニメのシーンのようです。

穴から内部がのぞける(かのーさん提供)
船長室の内装(かのーさん提供)

 板張りの船内廊下に細いラッタル、金属製の壁といった風合いの作り分けも見事。格納庫にはロボノイドも入っています。

船内廊下(かのーさん提供)
ロボノイド格納庫(かのーさん提供)

 現在のところ、船体については9割、船内は8割程度の完成状況というバラクーダ号。帆を展開した姿も期待してしまいますが「帆を張るとロープ表現も必要となり、船の各ブロックを分解して内部を見せられなくなってしまうので、分解前提では難しいと考えています」とのお話です。

船尾から見たポートサイド(かのーさん提供)

 ですが、ロープの表現と分解性を両立させる方策はないか、引き続き考え続けますとも語ってくれました。帆船は数多くのロープが使われるので、分割可能なジオラマに反映するのは困難なのかもしれません。

 かのーさんは「一旦完成したとしても、その後も色々と手を加えていくので、将来的には110%完成、120%完成……という感じにしたいですね」と、将来のディティールアップについても語ってくれました。着々と完成度が高まるバラクーダ号ですが、最終的にどんな姿になるのか、フィギュアとの共演も楽しみですね。

<記事化協力>
かのーさん(@kanof14f15)

(咲村珠樹)