Twitterでは時折「RT(リツイート)回数だけ〇〇します」といった企画を目にします。ささやかな恩返し、といった意味合いの強いものですが、予想以上の反響を呼ぶことも。

 2020年に「『罫線で遊ぶ小動物』が1RTにつき1匹増える手帳です」というツイートが、2万2000回もリツイートされました。あれから約2年、コツコツと描かれた動物たちは2800匹を超え、今も増え続けています。

 北海道在住の画家、晴夏さんが「『罫線で遊ぶ小動物』が1RTにつき1匹増える手帳です」とツイートしたのは、2020年4月8日のこと。そこには、罫線につかまっているカエルのイラストが添えられていました。

発端となったツイート(晴夏さん提供)

 当時は新型コロナウイルスの感染拡大により、最初の緊急事態宣言が出された頃。「コロナウイルス禍が始まって仕事が急激に減ってしまったので、話題作りのために投稿しました」と晴夏さんは振り返ります。

 緊急事態宣言などにより、ふさぎがちになっていた世の中で、晴夏さんのイラストは一服の清涼剤のような役割を果たしたのかもしれません。気づけばリツイート数は2万2000回、そして「いいね」も6万1000件集まりました。

 ツイートに従えば、イラストを2万2000匹分描かねばならなくなった晴夏さん。「フォロワー数が2500名ほどしかいなかったため、ここまで数が増えることは想定していませんでした」と、予想以上に広まったことに戸惑いを覚えた様子。

 想定を超え、あまりにも大きな反響となった場合、約束をのらりくらりとかわし、反故にしてしまう人も少なくありません。しかし晴夏さんは違い「この投稿をした当日から描き始めました」。2万2000という数に対する葛藤も特になかったといいます。

描かれた動物たち(晴夏さん提供)

 ツイートが多くリツイートされたことについては「驚きながらも、沢山の方から私の作品を求めて頂けて嬉しかったです」と語る晴夏さん。コツコツと動物たちを描き続けていきました。

 2022年2月3日時点で、動物たちの数は2802匹に到達。描かれている動物は様々ですが「最初の投稿がカエルだったからかカエルが一番人気のため、カエルを描くことが一番多いです」とのこと。

 動物たちが描かれた手帳は何冊もありますが「切り取ってファイルにまとめたり、自分の画廊(北海道千歳市)に展示したりしているため、何冊か分かりません」とのお答え。それでも、各ページに所狭しと描かれた動物たちは圧巻の一言。何か物語のようなものさえ想像してしまいます。

所狭しと描かれた動物たち(晴夏さん提供)

 まだまだ2万近い数が残され、道のりは遠いですが、晴夏さんは「早く描くことよりも、1匹1匹丁寧に心を込めて描くことに重点を置いて続けていこうと思っています」とのこと。作品として1匹ずつ、命を吹き込んでいくという意志に、画家としての矜持を感じます。

<記事化協力>
晴夏さん(@_harenatsu)

(咲村珠樹)