ファッションにおいて赤や黄色といった、いわゆる「差し色」を取り入れるのは難しく、年齢を重ねるにつれ無難なカラーを選んでしまう傾向があります。「自分に合う差し色がわからない」「色が良くても着こなせない」こう考えている方は多いのではないでしょうか。

 ジーンズブランドRockwell Japanを運営する祇園涼介さん(@twelveO2twelve)が近所に住む88歳のお爺さんをコーディネート。ベージュのコートの下には真っ赤なシャツにボトムス、加えて首元に添えられたブルーのストールがアクセントに。全身を彩られたお爺さんの表情もとても明るくイキイキとしています。これぞまさに「ファッションの力」。

 「歳をとると派手な服を着る人はおらん。赤や黄を着たら元気が出るのに」

 祇園さんのチャレンジはこの言葉から始まりました。普段は野菜や果物をもらったりとお世話になっている近所のお爺さんが、会話の中でポロっと漏らしたファッションに対する本音を聞き「ファッションで恩返しをすること」を決意。

 「めちゃくちゃカッコいい服を着てもらって、最高の一枚を撮ってプレゼントして元気をつけてもらおう」

 こう意気込んでチョイスしたコーディネートは2パターン。ポイントは「バランスを取るためのトーンの抑え方はしないこと」だそう。

 若い人が彩度の強い色を使う場合には、黒や紺といった暗めの色の中に差し色としてビビットカラーを使うといった定石があります。しかし、今回は88歳のお爺さんという事で表情や肌のトーンを活かしたいと思案。バランスをとるために暗い色で抑えるのではなく、全体が明るくなる合わせ方のほうが、より魅力を引き立てるのではないかと考え、ベージュのコートとブルーのスカーフを選んだとのこと。

ピンクの傘も良くお似合いです

 また、一方のスカジャンのコーディネートは「とがったカッコ良さ」を出すイメージに。年齢を重ねたからこその迫力を、最大限引き出せるように意識したそうです。

こちらは少しとがったイメージに

 撮影当日、祇園さんから服を受け取り早速着替えたお爺さん。慣れない服装に最初は恥ずかしそうにしていましたが、とても気に入ったようで徐々に笑顔に変わっていったといいます。

 バチっと決まったコーディネートを見て、「めちゃくちゃカッコいい!イケてる。自分もこんな風に着こなしたいと思いました」と祇園さん。

 撮影は写真家のロバートリーさんが担当。撮影時も終始和やかな雰囲気で、出来た写真はどれもお爺さんの明るい笑顔が印象的な、素晴らしい出来栄えとなりました。お爺さんの表情を見ていると、なんだかこちらまで元気になれますね。

お爺さんの笑顔がとても素敵です

 この写真をツイッターに投稿したところ、ツイートには10万件もの「いいね」が付くなど大きな反響が。

 「皆さんから『元気をもらった!こんな風に自分も歳をとりたい!』と好意的な反応をいただき、やってみてよかったなと心から思いました」

 寄せられた反響についてこのようにコメントした祇園さん。かつてアパレルブランドに従事していた筆者にとっても「ファッションの力」を再認識する写真でした。自分には似合わない、何が合うのかわからないとあきらめてしまうのはとてももったいない。ファッションとは日常に活力を与えてくれるもの、そう信じています。

 なお、今回の祇園さんの活動はYouTubeチャンネル「あなびと暮らし」でも公開中です。

<記事化協力>
ぎおんRockwell Japan(@twelveO2twelve)

(山口弘剛)