さまざまなジャンルで問題になっている「転売屋」の存在。本当に欲しい人が適正価格で購入できず、プレミア感を演出した上で高く売りつけるという、法的には限りなく黒に近いグレーな存在です。転売屋は消費者だけでなく、まっとうな商売をしているお店が被害に遭うことも。SNSには、転売屋によって営業妨害されたお店の声がありました。

 TRPGやボードゲームといったアナロクゲームと、それに関する雑貨、ファンタジー雑貨を取り扱い、人々の冒険心をくすぐるお店「コノス」。「またやられた…… 転売屋さんからのクレームで、適正価格で販売してるボードゲームが不適と判断されての販売停止措置」とTwitterに転売屋からの被害を投稿した弓路さんは、コノスの店長さんです。

 弓路さんにうかがうと、転売屋からのクレームにより適正価格で販売している品物が販売停止措置になるのは、コノスが出店している大手ショッピングサイトで、日常茶飯事なのだそうです。「商業、インディーズ、国内、国外問わず、私が良いと思ったもの、大手があまり取り扱っていない商品を取り扱っています」と、弓路さんはコノスの特色を話してくれました。

 コノスの強みであるはずの「大手があまり取り扱っていない商品」。裏を返せば大手のお店で適正価格を知ることができないため、転売屋が暗躍しやすい商品でもあるのです。

 コノスでは独自のルートで正式に仕入れ、適正な価格で販売しています。しかし大手ショッピングサイトでは、個々の商品、特に海外から輸入された商品やインディーズの商品に関して「適正価格」を把握できません。転売屋はここに目をつけ、クレームを入れるようなのです。

 どこのショッピングサイトでもそうですが、「あのお店の商品はおかしい」というクレームが寄せられると、その真偽を確かめるため、一旦販売停止の措置を取らざるを得ません。クレームの内容は様々ですが、それによって真面目に商売しているお店を一時的に販売停止に追い込み、その隙に高値で売り抜けるのが転売屋の手口のようです。

 弓路さんは「転売を明確に意識したのは、2017年にリリースされたとあるインディーズゲームの時です。当時このゲームは一般流通にはほとんどのっておらず、特に格安量販店では新品の入手が不可能でした。コノスは幸い、独自のルートより潤沢な在庫を確保していましたが、明らかに用途不明な大口の注文が重なったんです」と語り、購入者の情報をもとに調べた結果、高額で転売されていることを把握したといいます。

 おそらく海外の輸入翻訳ゲームでは、もっと早くから転売屋が暗躍していたのでは、と弓路さんは推測しています。「複数人で大量購入し店の在庫をなくすといった、すべてを焼け野原にするような買い占め行為というよりは、マイナーな販売店から仕入れて大手のECサイトやネットオークションで転売するという行為が中心だったように思います」と当時の記憶をたどりつつ話してくれました。

 現在では、様々な商品で起きている買い占め~高額転売という手口。この背景には「少ない手間で大金を稼ぐ」として転売ノウハウを情報商材として売ったり、転売を「販売代行」と称して手数料を上乗せして売りさばいたりといった方法が広まった結果、転売屋の間で過当競争が起きているようにも感じられます。

 お店でも高額転売を容認しない姿勢を示しており、販売にあたっては様々な防止策を講じています。弓路さんも「ほぼ専売になっている商品については、箱の中に『コノスが販売した商品であること、定価がいくらであるか』という情報を入れて、シュリンクをかけるようにしました」と、お店の防衛策を教えてくれました。

 ほかにも怪しい複数口の注文は、念のため注文情報をもとに調査し、疑わしい場合は注文をお断りしているとのこと。こういった努力が転売屋に知られるようになり、今回のような直接販売停止に追い込む実力行使に出たのではないか、と弓路さんは推測しています。

 本来、フリマアプリやネットオークションなどは、不用品を捨てるには忍びないので、誰か必要な人がいたらお譲りします、という行為のためのプラットフォームです。しかし現状は、海から拾ってきた海底火山の軽石を出品したり、転売屋が金儲けする温床となっているのも事実。

 サービスを提供している側の取り締まりも盛んに行われていますが、出品数が膨大なため、すべてを精査するのは難しいのが現状です。消費者の側が出品者の情報を確認して転売品に手をつけない、また安易に転売に手を染める人も「そんなに楽して継続的に儲かるわけではない」と、騙されていることに気づくことが必要ではないでしょうか。

<記事化協力>
弓路さん(@yumiji3156)

(咲村珠樹)