神仏や神獣のバックグラウンドをコンセプトにしたフィギュアを製作している上根拓馬さん(以下、上根さん)。

 「古典技術を研究することで、仏師が培ってきた技術力を現代美術に応用しています」という作品は、国内外のギャラリーや美術館等で発表されています。

 そんな上根さんの、自身の作風を確立したという作品が、先日Twitterで紹介され話題となりました。

 「元々は、コレクターに依頼されて製作したものなんです。その時の展覧会は、『二十八部衆』を中心とした京都三十三間堂の仏像たちを、『現代版』としてアレンジしたいというのがコンセプトでした」

 と、投稿作品の「千手 Senju」について語る上根さん。今からちょうど10年前の2011年に製作した「千手観音」をモチーフにしたフィギュア造形です。ちなみに現在は、群馬県にある美術館に展示されているそう。

画像提供:上根 拓馬さん

 「仏像製作には、『乾漆(かんしつ)』と呼ばれる技法があるんですが、これは『漆に繊維を絡ませ、パテ代わりに盛って整形をする』というものなんです。ただ現代では、FRP繊維とガラス繊維もしくは炭素繊維で置き換えることができ、フィギュアからF1までその技術が使われています」

 「そんな仏像のコンセプトを、『古典技術を現代技術を使って表現する』という、私の作風のスタイルが確立した作品でもあるんです」

 その“モチーフ”通り、左右無数の手には、それぞれ宝戟や錫杖のような持ち物という「古典」が。一方、青を基調とした配色が施され、頭部には、宇宙服のヘルメットのような被り物。さらに全身は機械のようなボディと、「現代」に加え、近未来的要素も加わった作品になっています。

 「千手 Senju」が、自身の作風のはじまりとなった上根さんは、先述の通り国内外で作品を発表されています。10月27日から11月3日にかけては、東京都渋谷区にあるBunkamura Galleryにて開催される展覧会「7人の眼-In the near future」に作品を展示。

東京都にあるBunkamuraにて開催する「7人の眼-In the near future」では新作 「難陀龍王(なんだりゅうおう)」を展示。

 こちらでは、仏教における守護神である「八大龍王」の中で、一番目に数えられる「難陀龍王(なんだりゅうおう)」をモチーフにした立体造形「ガーディアンズ , the Naga 難陀龍王」を展示するそうです。

<記事化協力>
上根 拓馬さん(Twitter:@KamineTakuma78/Instagram:@takumakamine)

(向山純平)