イギリス空軍は「バトル・オブ・ブリテン記念日」の2021年9月15日(現地時間)、タイフーン・ディスプレイの特別塗装機がイギリスの通称「アルビオン」の由来となった英仏海峡の名所、ホワイト・クリフ上空を飛ぶ写真を公開。81年前の過酷な防空戦に参加した多くの人々に敬意を表しました。

 第二次世界大戦中の1940年、ナチス・ドイツのイギリス侵攻作戦における前哨戦として展開された航空戦が「バトル・オブ・ブリテン」です。西方電撃戦の結果、ナチス・ドイツの勢力下となったフランス北西部の飛行場からイギリス本土へやってくる戦闘機や爆撃機を、イギリス空軍の戦闘機隊が迎え撃ちました。

 イギリスでは熾烈をきわめたバトル・オブ・ブリテンのうち、午前と午後の2回にわたって爆撃隊がロンドンに来襲した9月15日を「バトル・オブ・ブリテン記念日(Battle of Britain Day)」として、イギリス本土を守るため戦った多くの名もなき人々(The Few)に敬意を表する日としています。

 この記念日に合わせ、イギリス空軍が公開したのは、主力戦闘機ユーロファイター・タイフーンの展示飛行チーム「タイフーン・ディスプレイ」の特別塗装機(ZJ914)。バトル・オブ・ブリテンの主戦場だった英仏海峡に面した「ホワイト・クリフ(ドーバーの白い崖)」上空を飛行しました。

英仏海峡上空を飛ぶタイフーン・ディスプレイ特別塗装機(Image:MOD Crown Copyright)

 ホワイト・クリフはチョーク(石灰岩)でできた白い崖。英仏海峡からイギリスを目指した際、真っ先に目にすることから、イギリスの略称「アルビオン(ラテン語で「白い」を表すアルブスに基づく)」の由来になったと考えられる名所です。

白い石灰岩の崖(Image:MOD Crown Copyright)

 ユニオンジャックをデザインした特別塗装のタイフーンは、9月2日〜5日にイングランド南部で開催されたエアショウ「ボーンマス・エアフェスティバル」で展示飛行を済ませ、拠点であるコニングスビー空軍基地へと戻る途中にホワイト・クリフを経由。イギリスを象徴する場所で記念撮影をするとともに、バトル・オブ・ブリテンを戦った人々に敬意を表しました。

ユニオンジャックをデザインしたタイフーン・ディスプレイ特別塗装機(Image:MOD Crown Copyright)

 パイロットのサンティ大尉は「バトル・オブ・ブリテン記念日のため、ホワイト・クリフでユニオンジャックのタイフーンを飛ばすことができて光栄です。かつてバトル・オブ・ブリテンを戦った戦闘機パイロットと同じように、見事な海岸線と真っ白な崖を眼下に飛ぶのは素晴らしい経験でした」と語っています。

真っ白い海岸線を飛ぶ(Image:MOD Crown Copyright)

 ホワイト・クリフはその地形を利用して、バトル・オブ・ブリテン当時は防空レーダー網が築かれました。「帰還してエンジンを止めた静寂の中、私はコックピット内で1940年の夏に戦闘機パイロットたちがどのような気持ちで飛んでいたのか思いを巡らせました。今回の飛行は、私にとって一生忘れられないものになるでしょう」ともサンティ大尉は語りました。

ホワイト・クリフ上空を飛ぶ特別塗装のタイフーン(Image:MOD Crown Copyright)

 バトル・オブ・ブリテン記念日が平日になったため、イギリス空軍では記念式典を9月19日の日曜日に改めて開催すると明らかにしました。式典はロンドンのウェストミンスター・アビーを会場に、ウィグストン空軍参謀総長らが出席して行われます。

<出典・引用>
イギリス空軍 ニュースリリース
Image:MOD Crown Copyright

(咲村珠樹)