「これ何するやつか知ってますか??※祖母の家で絶賛稼働中」という問いとともに、あおのりTVさんがTwitterに投稿した1枚の写真。これについて、多くのユーザーが反応をしています。

 「妻の母方の実家で撮影したものなんです」と語る青のりTVさん。「『懐かしいなあ』という気持ちと、『今の子は分かるかなあ?』と思ってのツイートだったんです」という投稿背景を語ってくれました。

 実はこの箱のようなものは、かつて一世を風靡した定番「米びつ」なんです。写真の左上に「KOMESTAR」、中央下部に「タイガーカセットコメスター」とあるとおり、大阪府にあるタイガー魔法瓶株式会社が販売したものです。

 「コメスター」の中ほどにある3つのレバー(左から1.5[1合]、3[2合]、4.5[3合])を押すことで、それぞれの分量の米が排出され、一番下のカセット式の米受けから取り出せるという仕組み。写真のような底が平らなタイプのほかに、前面中央部に花の絵柄があしらわれた脚付きタイプ(カセット式米受け無し)もかつて販売されています。

 筆者も幼少期に、祖父母の家で見かけて幾度か使用経験もありますが、こうして目にするのはかなり久しぶり。しかもあおのりTVさんの紹介したものは、年季こそ感じさせるものの、“絶賛稼働中”という言葉どおり綺麗に使われています。

 あおのりTVさん自身も、自分の実家で色違いのものを使用していたことがあり馴染み深いそう。とはいえこれは、ジェネレーションギャップを感じそうかと思いきや、リプライ(返信)欄では、知っているという声が多数。

 今回記事にするにあたり、筆者は検索をかけたり調べてみましたが、今でも様々なメーカーが販売展開中。また形状も似通っており、その実は世代間共通アイテムのようです。

■ タイガー魔法瓶にも取材 実は歴史的価値の高い製品だった

 実は今回調べていくうちに、筆者はあることに気がつきました。それは、販売元であるタイガー魔法瓶では、現在コメスターを取り扱っていないということ。

 タイガー魔法瓶といえば、社名にもなっている魔法瓶製品が有名ですが、「炊きたて」をはじめとした炊飯器も高い知名度を誇り、「米」に馴染みのあるメーカーです。そこで筆者は、タイガー魔法瓶社に本件について問い合わせてみることに。

 「『コメスター』こと計量米びつは、1969年(昭和44年)に第1号が発売されました。ちなみに『炊きたて』は1970年発売開始なんです」

編集部では今回、タイガー魔法瓶社にも取材。実は歴史的価値のある商品でした。

 こう教えてくれたのは、タイガー魔法瓶の広報宣伝チーム担当者。余談ですが今回Twitterで話題になっていることは、ちゃんと把握していらっしゃいました。思わず宣伝チームで盛り上がったのだとか?

 さて、話を戻しますが、タイガー魔法瓶株式会社といえば、携帯用魔法瓶やハンディポットといった魔法瓶事業が代表的。コメスター発売以前は魔法瓶事業一筋で、当時は「家庭用製品の総合メーカー」を目指すため、商品の多角展開に踏み出す岐路に立っていたそうです。

 そこでタイガー魔法瓶社が注目したのが「米」。今から約50年前に、「コメスター」ならびに「炊きたて」を市場に投入しました。

 あおのりTVさんが投稿し話題になったタイプは、1975年に発売したRBO型。画像にも写っている「カセット式の米受け」(米びつに米受けが内臓され、引き出して取り出すことができる)は、当時業界初の試みだったそうです。

 それ以前のものは、下部にある排出口の下に釜やボールを置いて受け取る必要がありました。ゆえに受け取りそこねると米がこぼれて大惨事、といったトラブルが頻繁にあったのです。この問題を一気に解決したのがコメスターRBO型。当時大ヒットとなり一世を風靡……したのですが、時はながれ残念なことに同社のコメスターは2014年に終売。

 「主食が多様化したことにより、炊飯頻度が低下し、またそれに伴い、お米もどんどん小容量化していきました。さらに家での設置スペースが限られるなど、住環境の変化も理由となっています」「最近は冷蔵庫で保存されている方も増えていますね」と担当者。

 人々のライフスタイルの変化とともに、役目を終えたと判断したのが終売の理由だそうです。しかしながら、そうそう壊れるものではないので、かつて販売されたコメスターたちは現在も全国各地で活躍中。「今も使ってるよ!」という方たちは、どうぞ引き続き大事に使い続けてあげてください。

<記事化協力>
あおのりTVさん(@aochan_tv)

<取材協力>
タイガー魔法瓶株式会社(@Tiger_PR_JPN)

(向山純平)