自動車メーカーのGM(ゼネラル・モーターズ)とロッキード・マーティンは2021年5月26日(現地時間)、NASAが進める有人月探査「アルテミス計画」用の次世代月面車を共同開発すると連名で発表しました。GMはアポロ計画での月面車でも社内の研究所が開発に協力しており、再び月面車の開発に関与することになります。

 アポロ計画でボーイングによって製造され、1971年のアポロ15号から月着陸船に積み込まれた月面車(LRV=Lunar Roving Vehicle)。宇宙飛行士の活動範囲を飛躍的に高め、より多くのサンプルを月面から採取することに貢献したほか、搭載されたテレビカメラは地球から遠隔操作され、アポロ17号の月着陸船が月面から上昇する様子を生中継しました。

 NASAのアルテミス計画は、アポロ17号が1972年12月に月を離れて以来となる有人月探査。今回は月に降り立つ3名の宇宙飛行士のうち、1名は女性となることが公表されています。

 アルテミス計画でも月面車(LTV=Lunar Terrain Vehicle)が使用され、宇宙飛行士は広範囲に活動することが予定されています。アポロ計画ではシートのみの“オープンカー”でしたが、アルテミス計画では与圧されたキャビンを有する“走行する宇宙船”のような形式となります。

 ロッキード・マーティン宇宙部門のリック・アンブローズ上級副社長は「この提携は両社の持つ研究開発力を結集し、変革をもたらす車両を実現します。月表面の移動手段は、長期間の月面探査をする上で不可欠です。これら次世代の月面車は、非常に重要な調査を行う宇宙飛行士たちの行動範囲をドラマチックに拡大し、太陽系にいる我々の居場所(地球)を深く理解する究極のインパクトを与えてくれるでしょう」と、GMとの共同開発についてコメントしています。

 GMはアポロ計画の月面車でも研究開発に協力したように、バッテリー駆動の電気自動車について長く豊富な経験を有しています。また、宇宙飛行士の活動をより安全にするため、車両の自動制御技術についても、GMのノウハウは活用されます。

 GMでイノベーションと成長部門を担当するアラン・ウェクスラー上級副社長は「GMはアポロ15号で宇宙飛行士が運転した月面車の開発において、高度な技術とエンジンニアリングを提供した歴史があります。ロッキード・マーティンと手を携え、その深宇宙探査に関する経験とともに、アメリカ人宇宙飛行士を再び月に送るため、サポートするつもりです」とのコメントを発表しました。

 アルテミス計画で使用される次世代月面車は、アポロ計画の行動範囲を遥かに上回る走行距離が求められます。最初の月面探査では月の南極に向かうことが予定されており、その環境はより低温で荒れた地質であることが予想されます。

 アポロ計画よりはるかに広範囲の環境に適応し、宇宙飛行士の疲労を軽減するため自動制御の部分も多くなる次世代月面車。月での運用経験は、今後予定される火星表面の有人探査で使用する乗り物にも反映されることが予定されています。

<出典・引用>
ゼネラルモーターズ ニュースリリース
ロッキード・マーティン プレスリリース
Image:GM/Lockheed Martin

(咲村珠樹)