4月18日は「良い歯の日」。

 当日はSNS上でも、多くの「歯のケア」に関する投稿が話題となりましたが、一見それとは無縁に思える和菓子の作品が、Twitter上で3万を超えるいいねが寄せられ大きな反響となりました。

 投稿者したのは栃木県真岡市にある和菓子店「御菓子司 紅谷(べにや)三宅」店主の三宅正晃さん(以下、三宅さん)。

 自らを「小さなミスすら許されない現代のストレス社会に求められる癒しの次世代和菓子職人」と称し、伝統を重んじながらも、そこから一歩踏み込んだ独創性ある和菓子が、SNS上でも都度話題となる気鋭の和菓子職人です。

 そんな三宅さんですが、今回冒頭の「良い歯の日」に合わせて投稿したのは、なんと「歯」をイメージした和菓子。

 和菓子の「練り切り」という技法で作られたそれは、歯根まで克明に再現したリアル感のある形状。その上で、目とほっぺをとりつけることで、どことなくコミカルさのあるキャラ菓子。また「歯」の中に入っているのは、「虫歯」を連想しそうな餡子がぎっしり。ユーモアさも兼ね備えた創作和菓子となっています。

 三宅さんが、この歯の練り切り菓子「よい歯」を制作したのは2019年11月。ちょうど11月8日が「いい歯の日」というタイミングで、お客様からの依頼を受けたのがきっかけでした。

 「ただ話をいただいた当初は、『花鳥風月』を表現するのが和菓子の基本ということもあって、正直戸惑いもあったんです」と当時の心境を打ち明ける三宅さん。

 「でも『多様化の時代』ということもあり、最終的にはお受けして、積極的に取り組みました。制作過程ではよりリアルな歯も作ったんですが、正直不気味だったので、顔をつけたりして試行錯誤を繰り返し、現在の形となっています」

 ちなみにこの「よい歯」ですが、紅谷三宅では、冒頭の「良い歯の日(18日)」のある4月、先述の「いい歯の日(8日)」の11月に加え、「虫歯予防デー(4日)」のある6月の計3か月で限定販売。

 「お子様への食育に効果的なのもポイントですね」と語る三宅さんの狙い通り、商品は発売されるたびに大きな反響に。それは、4万を超えるいいねが寄せられた2019年時の“初出”投稿に対する、今回の反響(3万いいね超え)でも”実証”されていますが、紅谷三宅の通販サイトでも4月26日現在、「よい歯」は在庫切れとなっており、実際の売り上げにも繋がっています。

 「人参嫌いの子供のために、キャロットケーキを作って解決」なんて話は、筆者の幼少期からよく言われていましたが、こと「歯のケア」にしても、ある意味“当事者”ともいえる三宅さんのようなお菓子業界の関係者が、こうして「啓蒙活動」を行うことで、「虫歯予防」の説得力を高めているのかもしれません。

 そんな三宅さんですが、紅谷三宅では他にも『苺羽二重餅』・『丸ごとみかん羽二重餅』が人気商品とのこと。こちらはいずれも季節限定ということもあり、三宅さんの語る「花鳥風月」を意識した季節感の感じさせる和菓子となっています。

 一方で、どら焼き菓子の「紅日和」もまた売れ筋とのこと。こちらは、生地にハチミツを使用することでふっくらとした食感に、生地の表面に猫の肉球の焼き印が特徴的な和菓子。伝統にちょっとした遊び心が加わったものとなっています。

 他にも、紅谷三宅では様々な和菓子を販売展開。そこには、和菓子本来の伝統に沿ったものもあれば、従来の価値観だけにとらわれない革新的なものも。今回お話しいただいた「よい歯」制作時でのエピソードもですが、時に柔軟な姿勢で臨むことにより、三宅さんの生み出すお菓子の「生物」が話題になり、お客様に支持されているのではないでしょうか。

 筆者もひとりの和菓子好きとして、三宅さんの「食べられる芸術品」に注目したいと思います。

<取材協力>
御菓子司 紅谷三宅 店主:三宅正晃さん(Twitter:@beniyamiyake/Instagram:@beniya_miyake)
御菓子司 紅谷三宅(https://beniyamiyake.raku-uru.jp/

(向山純平)