「ガンダムのファンアート」

 この言葉を目にしたとき、筆者を含む多くのガンダム好きの方は、「ガンプラ(ガンダムのプラモデル)」など、市販されている玩具をアレンジした作品を連想する方が多いのでは。

 そんな中、「動くガンダム」を一から作り上げたというクリエイターの投稿が、SNS上で大きな話題となっています。

 「バンシィの全自動変形」というタイトルで、Twitter上に作品を動画で公開したのはつとむニキさん。そこには、漆黒のボディに、金のアンテナと胸部が特徴的なMS(モビルスーツ)の胴体部分が映し出されています。

 ん?これは、福井晴敏氏の小説が原作となり、2010年から2014年にかけてOVA(オリジナル・ビデオ・アニメ)化、2016年にはテレビ朝日系列でTVアニメ化もされた「機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)」(以下、UC)で、マリーダ・クルスやリディ・マーセナスが搭乗した「バンシィ」こと、ユニコーンガンダム2号機!

 「それにしてもこのバンシィ、ガンプラにしてはやけに大きいけど、こんなの市販されていたかなあ?」

 そんなことを筆者が思った矢先、動画に映し出されていたバンシィは、「ウィーン」という起動音とともに急作動。腹部がくいっと上がったのを皮切りに、胴体の至る部分に金模様が露出、さらに背中にはバックパックらしきもの、そして顔面はいわゆる「ガンダム顔」にフェイスチェンジ。

 時間にしてわずか10秒ほどの間に、「ノーマルモード」だった動画内のバンシィは、「デストロイモード」に何と自動変形。そして、そこからさらにまた10秒ほどかけて、先ほどのサイコフレーム・バックパック・顔面が“収納”。再びノーマルモードに自動変形。

 「!?!?こいつ……動くぞ!!!」

 思わず動画に釘付けになる筆者。

 そうするとバンシィを映すカメラの向きは、正面から背中にチェンジ。そのまま先ほど同様の、「ノーマルモード→デストロイモード」と「デストロイモード→ノーマルモード」の自動変形の様子が配信。変形前後のバックパックの開閉部分も、克明に再現されています。こちらも網羅しているとは……ゴクリ。

 ちなみに、この時点での動画の再生時間は約50秒。まだ残り30秒ほどあるのですが、ここからは説明タイムに入るのかな?

 なんてことを思っていた筆者をあざ笑う?かのように、気づけばまた正面から映し出されていたバンシィの目元が「緑」に発光。ま、まさかこれは!!!

 そう察したのもつかの間、目元が緑に発光したバンシィは、そのまま全身のサイコフレームも同じく緑に「発光」し、再度「デストロイモード」に自動変形。何とこのバンシィ、「覚醒」と呼ばれるデストロイモードの変形機構まで搭載していたのです。

 バンシィの発する暖かな光には、多くの方が導かれた模様。投稿のリプライ(返信)欄には、「すごい」「かっこいい」「天才や」「これは惚れてしまう」と魅入られる方が続出、1分30秒もの「長編動画」にもかかわらず、動画再生回数は10万回を超える大きな反響となりました。

 それにしても、一体どういう仕組みで動いているのか大いに気になるところ。作者であるつとむニキさんに詳細をうかがいました。

■ 色んなギミックが仕掛けられている

 「このバンシィは『3DCAD』を使って1から設計したんですよ」

 「MSや戦闘シーンのカッコよさが、UCの魅力ですね」と語るつとむニキさんが、バンシィに“設計”にいたるきっかけとなったのは昨年(2020年)2月。

 「バンダイから『ユニコーンガンダムの自動変形の胸像』が発表されて、それを見て欲しくなって実際に作ってみたんです」

 この『ユニコーンガンダムの自動変形の胸像』というのは、バンダイのガンプラ「REAL EXPERIENCE MODEL ユニコーンガンダム(AUTO-TRANS edition)」のことを指すのですが、実はこの商品は、2021年11月発売予定のもの。まだ世には出回ったものではないんです。

 そんな中でつとむニキさんは、特設ページの情報を元に、この1号機こと「ユニコーン」をバンシィ以前に製作。また「胸像」という通り、胸部までのガンプラにもかかわらず、全身を含めての設計に着手。その結果生み出されたユニコーンは、サイズにして30分の1スケールのものとなっています。

 こちらもバンシィ同様に、3DCADにて形どり、それを3Dプリンタで出力させたのですが、全身が白の装いで、かつ内部に張り巡らせた様々なセンサー類により、「赤」と「緑」のデストロイモードが発動する仕様になっています。

 一連の動作を紹介した動画は、YouTubeで再生回数30万回を超える大反響。こちらもSNS上で大きな話題となりました。

 ちなみにこのユニコーンですが、「頭が大きいなどのご意見があったので」と、つとむニキさんは、先述の動画配信後に大幅改良を敢行。その結果、懸案だった頭部の小型化に加え、胴体の展開で肩幅が変わるようになりギミック感の増した全身ボディに、赤と緑以外にも様々な色が「発光」する「ゲーミングユニコーン」へ変貌。

 「ビフォー」の時点のユニコーンだけでも、十二分に記事にてご紹介できそうなクオリティ。その上で、今回バンシィを作ろうと思い立った直接のきっかけは、先述のユニコーンの完成動画をYouTubeにて公開した2020年9月。

 「このタイミングで、MGEX※のユニコーンガンダム1号機が発売されたんですが、それを見たときに、可動域がものすごく広くて、多彩なポージングが出来ることに感動したんです。なので、それに限りなく近いポージングが出来ることを目指して、バンシィを作ることにしました」
(※「MGEX」とは、バンダイのガンプラシリーズ「MG(マスターグレード)」のハイエンドブランドシリーズのこと)

 しかしながら、つとむニキさんが語る通り、いくら「兄弟機」とはいえ、バンシィとユニコーンは別の機体。その上、「REAL EXPERIENCE MODEL」という“元ネタ”があったユニコーンと違い、バンシィに関しては、過去にバンダイが販売したガンプラや本編映像くらいしか参考資料はありません。ユニコーン以上に困難といえます。

 そういった中で、つとむニキさんは前回のユニコーン同様に、機体は3DCADを駆使して「設計」し、それを全て3Dプリンタで出力して製作にあたりました。

 ちなみにつとむニキさんは、「積層型」と呼ばれる3Dプリンタを使用。これは、文字通り層を重ねたものを使用しているため、ガンプラのように、すべすべとした表面にするためには、「積層痕」と呼ばれるザラザラ面を、ヤスリなどで削る作業が必須。これもかなりの根気のいる難作業ですが、「あくまでモチベーションが下がらない程度ですよ」とつとむニキさんは、その積層痕が消えるまで表面処理を実施。結果、ガンプラに匹敵するほどの光沢感のあるボディとなっています。

 これだけでも十二分に凄いのですが、つとむニキさんの作品の真骨頂といえば「動く」という点。

 「サイコフレームが露出する」仕組みについては、つとむニキさんが「パカパカ」と称するボディの開閉システムを、センサーを発動すると同時に、内部に取り付けた釣り糸により、外装ボディを引っ張り上げるという仕掛けにしています。

 これにより、センサー発動すると、外装の透明フレームが露出するように。さらに取り付けたLEDによりフレームが「発光」。

 次に、ユニコーンガンダムの変形の最大の特徴ともいえる顔。こちらは、まずアンテナ部分については、予め全体を動かすプログラミングを施し、それを作動することで、“とさか”に設置したモーターが観音開きのように開く仕掛けとなっています。

 続いて顔面部分に関しては、「頬を展開収納する用」と「顔の交換と頬の回転用」の2つのモーターを予め用意。

 その上で、まず前者で頬を展開。次に後者で頬を回転させながら顔の交換、そして最後にまた前者で頬を収納という順序でノーマルモードからデストロイモードへのフェイスチェンジを実現しているのです。発想力が凄まじすぎる……

 また顔部分についても、内部のLEDにより、デストロイモード時に、頬・顎・目元といった部分がボディ同様に「発光」。この発光時の「色」ですが、実はユニコーン同様に、様々な色で発光する「ゲーミングバンシィ」だったりします。マジかよ……

 さて最後は、ビームサーベルが搭載されているバックパック部分。これもまた3Dプリンタで出力した外装部分の内部に、サーボモーターが搭載されています。

 各パーツの接地部分には、歯車を組み込むことで、曲げたりすると、歯車がスムーズに連動して動く仕組みに。さらに、サーベル用作動用に搭載したモーターを、ギアを用いて伝達させることで、グルングルンと一回転できるようにしています。

 そしていざ作動させると、それがモーターに伝わり、最終的にビームサーベル部分のバックパックが180度回転させる仕組みに。もちろんこちらについても、バックパックを収納していた部分に”搭載”されている「サイコフレーム」により、デストロイモードの発動時には発光できるようになっています。

 以上が、今回の全自動変形バンシィの全容。とはいえ、今回記事にてご紹介したのは、あくまでメインにあたる部分で、ほんの一部に過ぎません。

■ ネットでは「野生のアナハイム社員」と呼ばれることも

 他にも様々なシステムを搭載したこの超ハイテク機器には、記事を書いている筆者も思わず、「つとむニキさんって、実はバンダイの社員さんじゃ?」と疑ってしまうほど。しかし、つとむニキさんは高等専門学校出身で、かつ在学時に5年間ロボコンを専攻されていたというバックボーンがあるものの、現在は一般の社会人の方。ユニコーンも含めて全て1人で設計されました。

 余談ですが、つとむニキさんのYouTube動画のコメント欄では、つとむニキさんのことを、「野生のアナハイム社員」という称される方が度々散見されたのですが、まさに言い得て妙。あくまで私見ですが、最高の敬称ではないでしょうか。

 もはや語彙力を失いすぎて、「語彙力ってなんだっけ?」と自問してしまいそうなつとむニキさん作の自動変形バンシィ。しかし、完成度でいえばちょうど50%。ユニコーン同様に「足は飾り」ではなく、これから下半身の設計にも入るそうです。

 真に完成した暁には、改めて取材を申し込みたいと感じた筆者。最後に、「すごいという気持ちに言葉は不要であること」を教えてくれたつとむニキさん自身のものつくりスタンスをご紹介したいと思います。

 「自分にとってのものつくりというのは、『そのときに1番作りたいものを作る』ということですね」

<記事化協力>
つとむニキさん(Twitter:@foresttail924/Instagram:@tsutomumorio)

(向山純平)