タバコのような見た目なのに、中に入っているのがお茶のスティックという、そのギャップ感がSNSで度々に話題になるお茶製品「Chabacco(チャバコ)」。弊社でも過去に記事で紹介しています。

 しかし当時は話題をとりあげたのみで、実際の商品については詳しくどんなものか紹介していませんでした。「中身」がお茶とはしりつつも、具体的にはどういったものなのか?試してみることにしました。

大阪・梅田にある「NipponStandard」店内に取り扱いがある模様。

 大阪府大阪市の商業施設「LINKS UMEDA(リンクス梅田)」内にあるセレクトショップ「ニッポンスタンダード」。関西在住の筆者は今回購入するにあたり、冒頭のチャバコ公式HPを調べたところ、こちらで商品取り扱いがされていることが分かり足を運ぶことに。

 折しもの新型コロナウイルスの影響で、大阪・梅田の客足も日中ながら疎ら。そんな中で、店の左手前に構えていたチャバコ専用自動販売機。

店の左手前に話題の自動販売機が。

パッと見はタバコの自動販売機にしか見えません。

 実は先ほど紹介した過去記事は筆者が担当しています。しかし、先述の通りこうしてお目にかかるのははじめて。

 私は非喫煙者なのですが、なるほど確かに、これはタバコの自販機と見間違えるのも納得。初見ですと、立ち止まって確認される方も多いと思います。

■ 自販機には「世の中を、茶化そう」のキャッチコピー

 それにしてもこの自販機、チャバコのキャッチコピーでもある「世の中を、茶化そう」の表記の下に、設置しているのが大阪だからか、通天閣や今はなきづぼらやの看板など、「地域性」を意識したデザインになっていますね。「ただここ(梅田)って“キタ”なんやけどなあ(笑)」と、関西人だからこそ分かる”ツッコミ”をしたのは内緒です。

大阪ならではのデザインが施されています。

チャバコのキャッチコピーでもある「世の中を茶化そう」という記載も。

 せっかくの“感動のご対面”なので、もう少しだけじっくり見ていきたいと思います。

 上には「Chabacco」と記された部分に、ずらりと並んだ総勢10もの取扱商品群。それぞれのパッケージの上に貼られている「商品名」のラベルがなければ、本当のタバコと見間違えるくらいそれっぽく作られています。

「Chabacco」の表記と商品パッケージが陳列された自販機上部。

どうやら大阪では10品目のチャバコが商品展開されている模様。

 ただ、本当に誤解されたら困るのか、自販機左上には「これはお茶です」や、「中にお茶スティックが入っています」と注意書きされたポップが飾られています。

 さらに右側には、フックでひっかけられた商品説明書も設置。SNSで注目を浴びているからこそ、ひとりでも多くの購入者を増やそうとしている努力が所々に見えます。

タバコと誤解されないようにラミネートPOPで注意書き。

自販機の右側にはフックにかけた商品説明署。

 と、いつまでも突っ立っていても仕方ないので、そろそろ購入商品を決めましょう。とはいえ、10種類全て買うわけにもいかないので、今回3品に絞ることにしました。

今回は3品に絞って購入。

 まずは、筆者が以前記事にした当時の話題の投稿だった「茶草場紅ふうき(以下・紅ふうき)」。

まずは筆者が記事にて紹介した際に話題になった「紅ふうき」。

 2つ目は、先日にTwitterで大きな反響を呼んでいた「MATCHA(以下・抹茶)」。

チャバコ的「旬」な商品である「抹茶」もチョイス。

 そして最後は、商品見本で別途展示され、左上に陳列されていることから、恐らく売れ筋であろう「茶草場深蒸茶(以下・深蒸茶)」にしましょう。お金を投入し、これまたタバコの自販機のような商品取り出し口へ落下した商品を手に取る筆者。

最後は商品見本として別途陳列されている「深蒸茶」。

 「なんやこれ、軽っ!」

 中に入っているのはお茶スティックということで、冷静に考えてみると当たり前のことではありますが、パッケージの外観による「先入観」で、その軽さにびっくりの筆者。先述の通り、私は非喫煙者なんですが、これは本当にタバコと見間違えますね。

 さて、念願のチャバコも無事手に入りましたので、筆者はさっそくこれを試すため帰宅するとします。

自宅に戻った筆者。さっそくテイスティングをはじめます。

 というわけで自宅に戻ってまいりました。それではお茶を沸かす準備を……の前に、それぞれのパッケージの詳細を調べてみましょう。どうやらどの商品にも、底面に食品表示の記載、側面に「召し上がり方」というお茶を入れるときの説明や商品のバーコードが印字されていますね。

側面には、「召し上がり方」が記載。

バーコードも印字されています。

 ちなみに底面の表記ですが、「販売者」に関しては、筆者が以前記事にした際に応対してくれた「株式会社ショータイム」の記載となっています。

底面には食品表示の記載。

 その上で「加工所(製造者)」に関しては、紅ふうきと抹茶は「川根インダストリー株式会社」、深蒸茶に関しては「株式会社テクノパック」の表記になっていますね。大阪の自動販売機だけでも、10種類もの商品展開をしていることを鑑みると、何社か製造メーカーを分散しているのでしょう。どちらも静岡県に所在地を置いているようです。

 また、紅ふうきのみ「加工所」ではなく、「製造者」と記載されているのも気になるところです。食品衛生法的にいうと、「原料から別のものを作り出すこと」が「製造」であり、「原料をベースにして、何らかの属性を付加すること」が「加工」。

 そういえば、紅ふうき茶は「べにほまれ」と、「ダージリン」の2つの茶葉を交配して作られるお茶。なので、「別のものを作り出している」ので「製造」扱いになるのでしょう。逆にいうと、深蒸茶と抹茶は「原料ベース」で、大きく手を加えていないとも考えられますね。

それぞれの食品表示の比較。茶葉をかけあわせた「紅ふうき」のみ、「製造」の表記が。

■ 急須がなくてもOK

 そろそろテイスティングに入りたいので、「召し上がり方」を確認しましょう。ふむふむ、紅ふうきと深蒸茶はアイス・ホット両方の作り方が記載されています。アイスはミネラルウォーターの入ったペットボトル、ホットは耐熱カップさえあれば出来るようです。

 こういった類の商品は、急須など「専用器具」が必要かとつい思っていましたが、これだと敷居も低く、初心者も試してみたい気持ちになりますね。

それぞれの「召し上がり方」を比較。抹茶はホット推奨の模様。

 ちなみに、抹茶もアイスで飲めるようですが、こちらは米印のついた注意書き程度の記載。「飲めないことはない」という書き方を鑑みると、どうやら「ホット推奨」のようです。

抹茶に関しては「ホット推奨」の模様。

 ではそろそろお茶を入れていきます。ポットでお湯を沸かし、ミネラルウォーターも準備。さらにアイスとホットそれぞれの湯呑み茶碗も用意。耐熱の計量カップとペットボトルに、それぞれ必要量のお湯と水を注ぎます。

まずはお湯と水を準備。

■ お茶の相棒お茶請けとともにテイスティング

 下準備が完了したところで、まずは「看板商品」感の強い深蒸茶からまいります。

まずは深蒸茶からテイスティング開始。

 スティックを開封して先ほどのお湯と水に……の前に、中身の形状を見てみましょうファサっとな。ふむふむ中身は粉末パウダーですね。確かにこれは「加工」になりますね。

深蒸茶のスティックの中身は粉末パウダー。

 先ほどのカップとペットボトルに降り注ぐとします。お湯はスプーンで混ぜ、水はバーテンダーのごとくシェイク。するといずれも薄緑に“変色”。ホットの方が水量が少ないためか、やや濃厚な緑となっています。

スティックをふりかけた結果、容器は緑に変色。

 これを湯呑みに注ぎます。使用水量の違いもあって(アイス:350ミリリットル、ホット:200ミリリットル)、やはりホットの方が濃緑。筆者は日頃からアイスホット関係なくお茶を飲みますが、こうして見比べることはほとんど経験がありません。なかなか興味深い対比です。

使用水量の少なさと熱もあって、ホットの方が深い緑に。

 それではいただくとしましょうゴクゴク。全体的にまろやかで落ち着いた感のある味わいですね。ホットの方もそこまで「主張」の強さは感じません。ただそれでいて、芯が通った口触りに口全体に広がる爽快感。「これが静岡茶のスタンダードですよ」と、ライトユーザーの方たちに紹介しやすい万人受けするお茶です。

 それにしても、今回のテーマは「日本茶の飲み比べ」とはいえ、このままお茶を飲むだけなのも風流がないと感じる筆者。お茶といえば、それぞれにあった「お茶請け(お茶菓子)」をつまみながら、それによるお茶の「化学反応」も楽しみたいところ。3時のおやつを習慣化している筆者のお菓子箱には大量のストックがあります。ごそごそごそ。

 例えば深蒸茶ですと、お茶同様の優しい口触りの和洋菓子が欲しいところですが……ん?

そこにあったのは「お菓子のホームラン王」ナボナ。

 おや、これは……お菓子箱にあったのは、東京にある老舗菓子メーカー「亀屋万年堂」が販売展開している「ナボナ」。甘さ控えめでしっとりとした口触りのこれですと、深蒸茶と相性も良さそうです。

均整のとれた深蒸茶には優しいくちどけのナボナをお茶菓子に。

 ということで、こちらも合わせていただきましょうモグモグゴクゴク。相手を選ばないオールラウンダー感のある深蒸茶ですが、オーソドックスなナボナとの組み合わせですとさらに真価を発揮。いずれの旨さもより引き立たせる結果になりました。

ナボナのくちどけの良さが深蒸茶の味わい深さを押し上げる結果に。

 では、次のお茶にまいりましょう。2品目はお茶の王道でもある「抹茶」。これひとつで1000円という高価格に加え、ホット推奨のこちらですが、使用水量は深蒸茶の150~200ミリリットルに対し、なんとわずか50ミリリットル。この時点で相当な濃さであることが想定されますね。

2品目は抹茶。

 抹茶に関してはホットのみで実施。水量が少ないため、複数のスティックを使用します。こちらも同様に粉末パウダーですが色は濃緑。そしてなかなか水に溶けない!根気よく混ぜたところ、まさに深緑といった深みのある色合いになりました。

使用水量の少なさもあり、深蒸茶よりもその色合いは深緑に。

 やけどに気を付けつつ、冷めないうちにいただきましょうゴクゴク。うおっ、これはパンチの効いた味わいです。先述の通り、筆者は生粋の関西人。なので抹茶といえば、京都の「宇治抹茶」を連想するのですが、控えめな苦みのそれとは対照的に、こちらははっきりと「苦い」と感じます。

 これだけ力強さのある抹茶ですと、例えば最中のようなお茶菓子があれば言うことなしですが……ん?

主張の強い味わいの抹茶には、どっしりと構えた食感の最中をチョイス。

 再びお菓子箱をあさるとでてきたのは、長野県にある製菓会社「天恵製菓」が販売展開する「粒あん最中」。餡と皮を黄金バランスでかけあわせたこれなら、抹茶の力強さを下支えしながらも、さらなる付加価値が生まれそうです。

抹茶のパンチ力をしっかりと優しく受け止める最中。旨みがさらに広がり相乗効果となりました。

 ということで、こちらも合わせていただきましょうモグモグゴクゴク。ふむふむ、やはりお茶と餡子は名コンビ。餡と最中両方の「皮」のほんのりした苦みが、名バイプレーヤーになって文字通りの渋い活躍。抹茶の苦みを優しく受け止めてくれたことで、より口全体に広がる旨みが生まれる相乗効果となりました。

 文字通りの濃厚接触を堪能できたところで、最後の一品「紅ふうき」をいただくことにします。

最後は以前記事にも取り上げた紅ふうき。

 こちらは深蒸茶と同様の入れ方かのですが、せっかくなのでアイス用のペットボトルで、深蒸茶との濃さの比較もしてみます。なるほど紅ふうきの方がより深みのある緑となっていますね。アイスでこれだと、ホットはかなりの深緑かも?

深蒸茶と同様の手法で作った紅ふうき。より深い緑となっています。

 湯呑み茶碗に注いで並べてみましょう。実際に注ぐと、ライムグリーンと表現されそうなクリアな緑。3品の中で明るさの感じられる色合いとなっています。どちらかというと、アイスの方がはっきりとした緑となっているのが特徴的です。

ライムグリーンのようなクリアな緑の紅ふうき。

 ではこちらも、冷めぬうちに味の確認をしましょうゴクゴク。ふむふむ、これはさっぱりした味わいの中でも、どこからともなく旨みが引き立ったキレのある味です。それでいて口当たりもよく、これはなかなか個性的なお茶ですね。

 ある意味で「お茶らしさ」のない紅ふうきですが、これだけすっきりとしたクリアな味わいですと、あられのような塩気のあるお菓子が相性良さそうですが……ん?

そこにあったのは新宿中村屋の「カリーあられ」。

 おっとこれは、東京の老舗メーカー「新宿中村屋」のカリーあられ。抑えの効いたカリー風味で味付けされたこれですと、双方の特長が引き立ちそうですね。

カレー風味がキレのある紅ふうきを引き立たせます。

 ではこちらも合わせていただきましょうモグモグゴクゴク。いやはや、これもまたナイスな組み合わせですね。「お茶菓子」というと、どうしても甘味でお茶に合わせに行ってしまいますが、ものによっては、あられのような塩味感のあるお菓子もまたオツ。紅ふうきのようなキレの強い挑戦的なお茶ですと、パートナーも刺激的なものがいいのかもしれません。

 というわけで、テイスティングタイムは終了。その話題性もあって、「映え」がクローズアップされがちなチャバコですが、中身に関してもそれに負けず劣らずの高クオリティな逸品でした。品質は度外視したような「見せかけの商品」ではないからこそ、一過性の話題で終わらず、じわじわとファンも拡大していっているのでしょう。

今回の3品のスティックのデザインは全て同じ。混ぜるな危険です。

 そうそう、この飲み比べでひとつ大きな発見がありました。それはパッケージに入っているスティックについて。実は今回飲んだ3品いずれも全く同じデザインなんです。そして各商品の印字もないので、筆者のように複数買いした場合ですと、混同しないように注意する必要がありますよ。

(向山純平)