女優の伊藤かずえさんが30年以上にわたって乗り続けている愛車、初代シーマを日産自動車がレストアすることを発表。2021年4月から一時預かる形で、新車当時の姿へ近づけるべく作業をするといいます。進行状況は日産公式Twitterなどで発信するほか、代車として伊藤さんが日産の現行ラインナップから選んだ車両が提供されます。

 女優の伊藤かずえさんはクルマ好きとして知られ、1990年に購入した白い初代シーマを大切に乗り続けているのは有名。走行距離10万kmを超えた時点でエンジンと足回りのパーツを全て交換し、2007年の新聞記事では「40万kmまで一緒に走る」と語っています。

 日産シーマは1987年、トヨタ・クラウン(S13#系)の4ドアハードトップに3ナンバー専用ワイドボディが登場し、その対抗車として東京モーターショーで発表され、翌1988年1月より販売が始まったもの。「FPY31」という車両形式から分かる通り、1987年に登場したY31系セドリック/グロリアとプラットフォームを共用し、ホイールベースはほぼ同じ(シーマの方が5mm長い)ながら、3ナンバー専用のボディ(全長4890mm:全幅1770mm)が与えられました。

 伊藤さんが購入したモデルは、初代シーマ後期型の「タイプIIリミテッド(E-FPAY31)」。V6・3リッターDOHCターボのVG30DETエンジンを積み、最高出力255PS/6000rpm・最高トルク35.0kgm/3200rpmのパワーで電子制御エアサスペンションを沈み込ませ、暴力的ともいえる加速を誇ったモデルです。

 日産自動車がレストアを申し出るきっかけとなったのは、2020年10月に伊藤さんがシーマの12か月点検の際、Twitterに投稿したこと。これがSNSやメディアで大きな話題となり、投稿を見た人々から「やっちゃえ、日産!」や「日産はレストアを検討して!」といったコメントが寄せられたといいます。

 日産社内でも何かできないかという声が上がり、有志によるチームが立ち上がったとのこと。チームリーダーの日本事業渉外部・遠藤和志部長は「伊藤さんが30年以上に亘り、「シーマ」を大切に乗り続けていただいていることに感謝するとともに、大変嬉しく思います。「シーマ」は日本における自動車の歴史において、一石を投じたクルマの一つであると自負しております。30年以上お乗りいただいた車両を、伊藤さんが期待する“新車時と同じ状態”に戻すレストアは非常に難しい作業となりますが、「技術の日産」に恥じぬよう、総力をあげて、伊藤さんにご満足いただける仕上がりにしたいと思います。是非、皆さまもご期待下さい」とのコメントを発表しています。

 伊藤かずえさんは今回の申し出を受け「この度、このようなお話をいただき感謝しています。父と塗りなおした塗装やへたってしまったシートなど思い出が詰まっているけれどもきれいにしたい部分がどうなるのか楽しみです。レストア中も見学できるという事なので、毎日のように作業の様子を見に行ってしまうかもしれません。30年乗り続けた「シーマ」とお別れするのはすごく寂しいですが、戻ってくるの を楽しみにしています」とのコメントを寄せています。

 日産には、日産テクニカルセンター内の開発部門従業員を中心に活動する「日産名車再生クラブ」があり、2006年の発足以来スカイラインGT-R(KPGC110:1972年東京モーターショー出品・スカイラインGT-Rレーシングコンセプト)を皮切りに、プリンス自動車や日産の名車をレストアしてきた実績があります。今回レストアを手がけるのは日産名車再生クラブではありませんが、ノウハウが反映されるといいですね。

 筆者も20年ほどスカイライン(R32)を乗り続けた過去があるだけに、伊藤さんの思い入れもよく分かります。筆者のスカイラインはエンジン補機に致命的な不具合が発生し、スペアパーツが調達できずに泣く泣く手放しただけに、伊藤さんの初代シーマが若さを取り戻すことを楽しみにしたいと思います。レストアの様子は日産公式Twitter(@NissanJP)ほかで、随時発信していくとのことです。

情報提供:日産自動車株式会社

(咲村珠樹)