1980年にNHKで放送され、人気となったアニメ「ニルスのふしぎな旅」。その放送40周年を記念し、読みやすさを重視した新たなスタイルで作品の魅力を伝える児童書が2021年3月18日から刊行が始まります。

 全5巻のシリーズには、アニメOP/ED曲の作曲者タケカワユキヒデさんによるセルフカバー版が聴けるQRコードも付属します。

 スウェーデンの女性作家、セルマ・ラーゲルレーフ(1909年にノーベル文学賞を受賞)によって1906年~1907年に発表された「ニルスのふしぎな旅」は、初等教育用の地理読本として企画された物語。主人公の少年ニルス・ホルガションは、小さくなってガチョウのモルテンに乗り、アッカ隊長率いるガンの群れとともに、スウェーデンをくまなく巡ります。

ニルスとキャロット
ガチョウのモルテン

 日本でも翻訳本が1918年に出版されるなど、古くから親しまれてきた「ニルスのふしぎな旅」。学研とスタジオぴえろ(現:ぴえろ)によって1980年にテレビアニメ化され、NHKで全52話のシリーズが放送されると大人気となりました。

 今回、新たなスタイルで刊行される「ニルスのふしぎな旅」はテレビアニメ版をベースに、ニルスの冒険を全5巻にまとめたシリーズ。文章だけでなく、漫画で表現したページを挿入することで、状況や世界観をわかりやすく描いてキャラクターたちへの共感を高める工夫がされています。

 漫画で描かれているのは、迫力あるアクションやキャラクター同士の繊細なやりとりなど、ビジュアルでの表現が効果的なシーン。子どもたちだけでなく、幅広い年齢層の読者が楽しめる構成となっています。

空に舞い上がるニルス
動きのあるシーンは漫画で表現

 主人公のニルスは勉強が嫌いで、いたずら好き。いつも家畜をいじめているような子でしたが、ある時トムテ(北欧の民間伝承に登場する妖精)を怒らせてしまい、姿を小さくされてしまいます。それと同時に動物と話ができるようになったニルスは、ガンの群れに加わろうとしたガチョウのモルテンを止めようとするうち、飛び立ったモルテンとともに空へ……旅を通じて様々な動物たちと出会い、色々なことを学んでいくニルスの姿を通じて、自然との共生や動物への思いやりの心を育めるようになっています。

とらわれのリスを助けるニルスとキャロット

 また、ガンの群をまとめるアッカ隊長はメス。作品が発表された20世紀初頭、まだ女性の社会的地位が低かったことを考えると、とても進歩的なリーダー像が描かれています。現代にも通じる普遍的なテーマを含んだ作品ともいえるでしょう。

包容力のあるアッカ隊長

 元タイガースの加橋かつみさんによって歌われた主題歌も、テレビアニメに欠かせないものでした。NHK「みんなのうた」でもアニメと同時期に放送されたOP曲「ニルスのふしぎな旅」、そしてED曲「いつまでも友だち」が、作曲者のタケカワユキヒデさんによりセルフカバー。掲載されたQRコードからのアクセスで聴くことができます。

 新たな形でリリースされる全5巻シリーズの「ニルスのふしぎな旅」第1巻「新たな空への旅立ち」は、1冊1000円(税抜き)で2021年3月18日発売。以降は奇数月(5月・7月・9月・11月)に続刊が発売される予定です。

情報提供:株式会社学研ホールディングス

(咲村珠樹)