アメリカ海軍太平洋艦隊は2021年2月5日(現地時間)、南シナ海の西沙諸島沖で駆逐艦ジョン・S・マケインが「航行の自由作戦」を実行したと発表しました。西沙諸島はベトナムと台湾、そして中国が領有権を主張していますが、中国が実効支配して接近を阻む傾向を強めているため、その動きを牽制し「自由で開かれた海洋交通」を主張するものです。

 アメリカ海軍の「航行の自由作戦(FONOP)」は、国連海洋法に準拠した「自由で開かれた海洋交通」の権利を主張するため、世界各地で実施しているものです。

 インド太平洋地域では日本海(ロシアのピョートル大帝湾)、南シナ海(南沙諸島・西沙諸島・カンボジア沖のタイランド湾)、東太平洋(エクアドル沖・ガラパゴス諸島)、インド洋(ミャンマーのマルタバン湾・バングラディシュ沖のベンガル湾・モルディブ沖)、ペルシャ湾などで実施。そのほかにもカリブ海(ベネズエラ沖・ドミニカ沖)や黒海(ルーマニア沖)などで行われています。

 今回、西沙諸島沖で実行された「航行の自由作戦」は駆逐艦ジョン・S・マケインにとって、2月4日に実施された台湾海峡航行に続くもの。西沙諸島の領有権を主張するベトナム、台湾、中国に対し、国際法で認められた無害通航権(軍艦を含む全ての船舶が沿岸国の平和、秩序または安全を害しない継続的かつ迅速な通航をする権利)を主張するとともに、西沙諸島を取り囲む形で中国が一方的に設置したラインに対し、異議を唱える目的で実行されました。

 現在、西沙諸島の領有権を主張するベトナム、台湾、中国は、軍艦やそれに類する船舶が領海にあたる島々の海岸線から12海里の範囲を航行する際、事前の通告を要求しており、これは国連海洋法で保証された無害通航権とは相反するもの。西沙諸島は南シナ海のほぼ中央部に位置するため、国際法に違反した権利の主張は、自由で開かれた海洋交通や上空の通過を大きく阻害するものだ、というのがアメリカの立場です。


 またアメリカは、西沙諸島の領海を逸脱した形で中国が1996年、一方的に設定した基線(ベースライン)についても認めない、という立場を明らかにしており、この「航行の自由作戦」を通じて中国の主張が無効であると示す意図があります。

 アメリカの「航行の自由作戦」は1979年、アメリカの国益を維持するために始められたもので、国際法に準拠した形で実行されています。1991年以降の実行状況は国防総省のサイトで公開されており、どのような理由によって実行したかを確認することができます。

<出典・引用>
アメリカ太平洋艦隊 ニュースリリース
アメリカ国防総省政策担当国防次官事務所 航行の自由作戦年次報告書
Image:U.S.Navy

(咲村珠樹)