日本維新の会所属の尼崎市議会議員、光本けいすけ(圭佑)氏が掲示した「鬼滅の刃」を想起させるポスターについて、週刊少年ジャンプ編集部は2021年2月4日に声明を発表。声明では「一部政治家のポスター等」と名指しは避けつつ、株式会社集英社および週刊少年ジャンプ編集部は一切関与していないとしました。光本市議側は、集英社の知的財産課に確認を取ったとブログで明らかにしています。

 【追記】
 なお、本稿公開後の15時31分に、光本氏は新たにブログを更新。「2連ポスターは本日別のデザインのものにすべて取替えさせて頂きました」と、新たなポスターに差し替えたことを報告しています。(追記ここまで)

 吾峠呼世晴さんの漫画作品「鬼滅の刃」は、アニメ版を含め大きな人気を呼んでおり、公式グッズ以外にもギリギリをついた“作品を想起させるグレーな関連グッズ”が数多く出回っています。政治の世界でも、菅首相が国会で「全集中」という作中の言葉を引用するなど、その人気を意識した言動が見られます。

 今回、日本維新の会所属の尼崎市議会議員である光本氏が掲出したポスターは、光本氏と大阪府知事で党の副代表を務める吉村洋文氏の写真と、全面に「鬼滅の刃」の主人公、竈門炭治郎が隊服の上に着用する羽織を想起させる、緑(日本維新の会イメージカラーである黄緑)と黒の市松模様のパターンを採用。

 また、作品のタイトルロゴに似せた「日本維新の会」のロゴ(日本維新の会が制定した公式ロゴではない)に、大ヒット上映中の劇場版「鬼滅の刃 無限列車編」でもう1人の主人公ともいえる炎柱、煉獄杏寿郎の名台詞「心を燃やせ!」が使われています。

 このポスターは掲出された当初から“悪い意味で”話題を呼び、作品の人気に「便乗」したものだという批判がSNSで拡散しました。また、原作漫画の知的財産権を管理する集英社および週刊少年ジャンプ編集部、アニメ版の知的財産権を管理するアニプレックスは関知しているのか、といった意見も。

 漫画やアニメはグッズ展開のほか、その人気からさまざまなコラボが実施されますが、その基準は「作品のイメージを毀損しないこと」が原則。民間企業の場合ではWin-Winの関係になるもの、そして献血など公共的なイメージのものに限られます。

 また、政治に関するものに対しては、様々な主義主張があるため、特定の政治的主張を作品が助長している、と受け取られることを避けるため、基本的にはコラボすることはありません。2020年の東京都知事選挙で、アニメ「コードギアス」のゼロ(ルルーシュ)をイメージしたコスプレ姿の候補者ポスターが掲示され、サンライズが製作委員会や作品関係者とは「一切関係がありません」と注意喚起した件が記憶に新しいところです。

 当の光本氏は2月4日11時に更新した自身のブログで、今回のポスターは学生インターンを迎えた際、政治に関心の薄い若い世代へアピールする手段としてデザインしたものだとしています。そして集英社の知的財産課とも「市松模様」「心を燃やせの台詞」「政党ロゴのデザイン」について、権利を侵害しないかの確認を取った上で作製したとのこと。

光本氏のブログ(スクリーンショット)

 とはいえ集英社側からすれば、そのものズバリの「パクリ(模倣)」であれば権利侵害だと断言できるでしょうが、作品を想起させるイメージについては「権利侵害です」と明言できず、せめて「関与しておりません」と発表するしかないのも事実。それを予測した上で、光本氏側があえてグレーな部分に踏み込んだ、と世間から思われても仕方ないかもしれません。

 光本氏はこのポスターについて、ブログで「様々なご指摘を受けましたこと」と「紙質が印刷会社の手違いで指定と異なるものが入荷されたこと」を理由として「別デザインによる再発注」をかけたと表明。現在掲示しているポスターについては、新しいポスターが出来上がり次第、順次張り替え作業をしていきたいとしています。

 人気のあるものに対し、とりあえず「乗っかっておく」というのは、ちょっとズレた人が「流行に敏感」であることをアピールしたい、という際に取りがちな手法です。今回は政党のアイデンティティともいうべきロゴまでデザインを変え、作品のイメージに近づけるという意味で、作品と所属政党、双方へのリスペクトを欠いたものだったといえるかもしれません。

<参考>
集英社・少年ジャンプ公式サイト お知らせ
尼崎市議会議員 光本けいすけ氏公式ブログ「私の2連ポスターについて
※画像は集英社公式サイト、光本けいすけ氏公式ブログからのスクリーンショットです。

※初出時より一部表現を変更・説明を追加しました。(2月5日15時50分更新)

(咲村珠樹)