2021年初頭に行われた「箱根駅伝」では、多くのギャラリー(推定18万人)が観戦に訪れているとして悪い意味で注目を集めました。

 公道で行われるマラソン大会もしかり。大会が開催されている・もしくは多くのランナーが公道を占拠して走っている以上、ギャラリーも必然的に増えてしまいます。新型コロナウイルスで生じた悩ましい問題です。

■スマホアプリを使った「オンラインマラソン」の試み

 筆者もフルマラソン歴3年であり、コロナ禍前までは大会に参加していたのですが、昨年より市民マラソンの様相が大きく変わってまいりました。新たに考案されたのが、公道を使わず参加者も集合しないため「密」にならないという、その名も「オンラインマラソン大会」。

 これは、手持ちのスマートフォンに「専用の計測アプリ(TATTA)」をインストールし、主催大会が定める指定期間内に指定距離(多くは42.195km)を走ると「大会完走者」として記録されるもの。それぞれの走る条件が違うため、タイムや順位などの競技要素は薄れますが、完走を目的とする市民ランナーにとっては、大会に出場し走れたという充実感が得られます。

 リアル大会が新型コロナウイルス禍で中止にせざるを得ない以上、自治体としては頑張っているランナーのためになんとかしてあげたい。それと共に、オンラインでも開催実績を重ねることで、次のリアル大会開催への布石にしたい……という想いのもとに生まれたのが「オンラインマラソン大会」であろうと想像します。

 参加費は自治体によってまちまちですが、コースに係員を配置しなくていいなど運営費用を圧縮できるためか、リアル大会に比べて三分の一程度の費用が多く見られました。

 参加者の記念になるようなものでは、開催地の特産品をセットにしたプランから、大会記念品のみというシンプルプランまで様々。市民マラソンは地元を走ってもらうことで自治体の魅力を感じてほしい、という地域おこしの側面もあるためか、ふるさと納税に近い雰囲気がありますね。

 市民ランナーの中には、毎年参加する大会を決め、その土地を走って地元の人々と交流するのを楽しみにしている方も少なくありません。思い入れのある大会には「とりあえず参加しておこう」という、記念参加的なランナーも多くいらっしゃるのではと思います。

いぶすき菜の花マラソン公式ホームページ

今回参加したオンラインマラソン「いぶすき菜の花マラソン on the web」

■ 人気のある市民マラソン大会はほぼ全てが中止に

 新型コロナウイルスの感染が拡大した、2020年年4月以降の著名な市民マラソン大会は、ほぼ全てが開催中止となってしまいました。
(参考:RUN NET 開催中止・開催延期が決定したRUNNET取扱大会一覧)

 この「ほぼ」というのは、中にはウェーブスタート方式(時間差でスタートさせる)で参加人数を極力絞ったものや、公園などの敷地内を中心にコースを設定し、なるべく公道部分を走らない「周回コース」を採用している大会もあるということ。いずれも地元に密着した小規模な大会で、だからこそ可能になったという側面もあるかと思います。

 2021年1月31日に開催される「大阪国際女子マラソン」では、スタート・ゴール地点である長居陸上競技場(ヤンマースタジアム長居)のある長居公園内に設定された周回コース(1周2.8km)を15周させる、ということで話題を呼びました。同じ所をグルグル回るのはトラックレースのようでもあり、はたしてロードレースであるフルマラソン大会と呼べるのか……という議論も見受けられます。

 話を戻しましょう。もちろん、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が発出された昨年4月時点では「オンラインマラソン」という概念が広く周知されていなかったため、開催予定の近い大会を中心に、多くの関係者が試行錯誤したに違いありません。

 そこに登場したのが「TATTA オンラインマラソン」。これにより、著名な市民マラソン大会の多くはこの方式を採用して、開催を続けることができました。

TATTA

このアプリをインストールし、手持ちのGarmin等の計測ウォッチと連携することで大会スコアが記録される

■ オンラインマラソン大会に参加してみました

 ものは試し、筆者もアプリを使用し「たった一人で42.195kmを完走する」という苦行!?を体験してみました。

 大会ルールはカンタン。「指定した期間内(だいたいどこの大会も2週間くらい)に42.195kmを走破してください。ちゃんとアプリを連携させてね」というもの。

 フルマラソンを何度も完走しているベテランの方にとっては拍子抜けするようなルールですが、リアル大会と違い、道路使用許可を取って車両の通行を遮断したコースではありません。

 市街地を走る方なら信号待ちはもちろん、大勢の人が行き交う密になりそうな所は歩いてやり過ごす、というケースだってありますもんね。日程を分散して走破してもよい、というルールは今のご時世に合っています。ただ、コース選びは重要です。

 筆者の場合、よく練習に利用させて頂いている千葉県の我孫子市と柏市にまたがる「手賀沼」を選びました。

手賀沼

整備されたアスファルトが延々と続き、遊歩道へとつながります。景観が最高なのです。

 平日なら人の行き交いが少なく、周回するまでもない・景色が良い、という理由です。近くに無いなら、思い切って遠出して、走りやすいコースに出向くのもありでしょう。

▼ 補給をどうするか?

 リアル大会なら、おおよそ2kmおきに給水所やエイド(補給所)を設置していることが多のですが、オンラインマラソンの場合はそんなものは無いため、自分で全てまかなう必要があります。自分で給水所を事前に設置する訳にもいかないので、一気に42.195kmを走ろうとすると、その分の補給物資を身につけることになります……思いのほかかさばり、重量もあるので誤算でした。

オンラインマラソン コースマップ

Googleマップで正確な距離を測定し、補給地点を決める

フルマラソン 補給食

水分、補給ゼリーなどを全て装備する。重たい…。

専用のウェアに水分ボトルと補給食を詰め込む

重たいけど専用のウェアに水分ボトルと補給食を詰め込む。重たい…。

ナイキ ズームペガサス37

流行りの厚底ナイキシューズ。(WEBサイトでオリジナルデザインにできます)

▼ フルマラソン大会スタート!

 一人きりでのフルマラソン大会。リアル大会独特の雰囲気も、観戦者も、応援者もなく、たった一人でスタートします。ただ、好きなタイミングでスタートできるのはメリットかも。念入りにトイレ行きたいし。

 今回は42.195kmを一撃で完走するつもりでトライしました。

 リアル大会だと、前半は他のランナーでゴッタ返すので自分のペースで走れず、割とストレスになりがち。一人だと全くノンストレスです。ただ……知らず知らずのうちにペースが速くなってしまう罠も。ペースメーカーになるランナーなんていませんからね。オーバーペースでガス欠にならないよう、常に時計とにらめっこです。

 途中、風景を撮影する余裕もありました。他のランナーの迷惑になるためリアル大会ではまずありえないので、この辺りはマイペースでリラックスできるフルマラソン大会という意味で新鮮であります。

手賀沼遊歩道

景色がキレイ!一人だと舐めてかかっているのか、撮影する余裕が出てしまう

手賀沼

▼ 想定外!?のアクシデント

 恐らく35km過ぎた所でしょうか、何と初めて脱水症状を起こしてしまいました……。その証拠に太ももが痙攣している。いわゆる「ハンガーノック」というものです。

 朝は寒かったので、水分はチビチビ補給する作戦でいけるはずでしたが……思いの外気温が高く、気づけばノドがカラカラ。携帯しているボトルは空に近く、たまらず走ることをやめて立ち止まることを繰り返します。

 リアル大会では2kmおきに補給所があるためリカバリーが効きますが、一人だと何もありません。公園に設置してある水道も、このコロナ禍のため避けていました。自分で全てマネージメントしなくてはならない「オンラインマラソン」ならでは、とんでもない誤算です。

■ オンラインマラソン大会を終えて

 いろいろとピンチな場面もありましたが、ギリギリサブ4(4時間以内)でフィニッシュ。リアル大会と違い、スタートからスイスイ走れてしまったため、いわゆる「入りの速い前傾ラップ」というものになってしまったのも理由かもしれません。

Garmin

ギリギリ4時間切り。前半ハイペースであったことが、ある意味功を奏した。反省。

 最も痛感したのは、やはり人の「声援」というものは脳へ刺激を与え、アドレナリンを出してくれる貴重な存在だということ。エイド(補給所)の存在もしかり。今年の箱根駅伝でも沿道の人出についていろいろ言われていますが、選手にとっては少なくとも大きな活力となったことでしょう。

 今回、それは全く無かったので刺激を得る機会が無く、粛々とこなしていくことで逆に精神力を鍛えられるハメになりました。ちょっと「走る修行」のような感じになるので、途中、悟りを開きそうになりますよ。

 そういう面では、ランナーとして本当の実力を確かめるということで、オンラインマラソン大会は貴重な経験となりました。単走という状況は、完全に気力と精神力の世界です。頑張っているアナタを誰も見てませんからね。

 誰でも気軽に参加できるオンラインマラソン、ぜひこの機会にチャレンジしてみてはいかがでしょう。

<参考>
指宿菜の花マラソン on the wieb いぶすき菜の花マラソン
TATTA~RUNNET連動GPSトレーニングアプリ
RUN NET RUN NET 開催中止・開催延期が決定したRUNNET取扱大会一覧

(福島利和)