海上自衛隊のP-1哨戒機が、毎年グアム島で開催されている恒例の固定翼哨戒機多国間共同訓練「シードラゴン2021」に参加。ホスト国アメリカのほか、インド、オーストラリア、カナダの5か国から参加した哨戒機部隊とともに、訓練の最優秀部隊に送られるチャンピオンベルト「ドラゴンベルト」を目指し、対潜水艦戦闘の戦技を磨きました。

 グアム島アンダーセン空軍基地を拠点に、毎年この時期に開催される多国間共同訓練「シードラゴン」は、ヘリコプターではない各国の固定翼哨戒機部隊が集まり、実際に潜水艦を相手にして様々な対潜水艦戦闘の戦技を磨くもの。今回、海上自衛隊から参加したのは第1航空隊(鹿児島県鹿屋航空基地)に所属する、P-1哨戒機(5527)の搭乗員と整備員たちです。

「シードラゴン2021」参加部隊と航空機(Image:U.S.Navy)

 訓練のホスト役となるのは、青森県の三沢基地に所在するアメリカ海軍の第72任務部隊(CTF-72)。P-8A哨戒機を運用するVP-5とVP-8が中心となり、1月27日まで2週間(うち飛行時間約125時間)の日程で訓練が実施されました。

「シードラゴン2021」のブリーフィング(Image:U.S.Navy)

 訓練では様々な状況下で、実際の潜水艦を相手に上空からソノブイを投下し、潜水艦を探知・追跡するほか、爆雷などで攻撃するというシナリオをこなします。しかも訓練での戦技はポイント化して評価され、訓練最終日にはもっとも多くポイントを獲得した最優秀部隊に対し「ドラゴンベルト」というチャンピオンベルトが授与されます。互いに競い合いことで、より訓練の成果が上がるという仕組みです。

「シードラゴン2021」で準備をするインド海軍P-8Aクルー(Image:U.S.Navy)

 また競い合うだけでなく、哨戒機を運用するもの同士での交流も重要な要素。インド海軍とオーストラリア空軍のメンバーは、両国が導入予定の無人哨戒機MQ-4Cを実際に見学し、アメリカ海軍が有人機と無人機をどのように組み合わせて活用しているか、という事例を学びました。

MQ-4Cのレクチャーを受けるインド海軍とオーストラリア空軍のメンバー(Image:U.S.Navy)
MQ-4Cのレクチャーを受けるインド海軍とオーストラリア空軍のメンバー(Image:U.S.Navy)

 訓練の相手方となる潜水艦は、アメリカ海軍のロサンゼルス級攻撃型原子力潜水艦。潜水艦にとっても、対固定翼哨戒機との戦闘訓練になるので、どちらも真剣勝負となります。

訓練の相手方となるロサンゼルス級原子力潜水艦(Image:U.S.Navy)

 訓練でホスト役を務めたVP-5のP-8Aパイロット、リード・アルセ大尉は「訓練の期間中、哨戒機クルー同士の戦技を競いながら向上させることで、多くのことを学びました。参加した皆さんが、世界中のどこにおいても水面下からの脅威に対処する際、最高のパフォーマンスを発揮できる状態でグアムを後にしてくれることを願っています」とコメント。互いに競うという環境が、訓練の質を上げていることに言及しています。

訓練に参加したアメリカ海軍のP-8A(Image:U.S.Navy)

 今回のシードラゴン2021で最多のポイントを獲得した部隊は、カナダ空軍第407飛行隊から参加したCP-140オーロラ(P-3Cのカナダ空軍制式名)のクルー。王者を示す「ドラゴンベルト」を手にしました。

<出典・引用>
アメリカ海軍 ニュースリリース
Image:U.S.Navy

(咲村珠樹)