オランダ国防省とヴァージン・オービットは2021年1月25日(現地時間)、オランダ初の軍事衛星をヴァージン・オービットの空中発射式ロケット「ランチャー・ワン」で打ち上げると発表しました。衛星の名前は、オランダ空軍初の飛行機にちなんだものとなっています。

 イギリスのリチャード・ブランソン氏が率いるヴァージン・グループで、空中発射式ロケットの打ち上げを手掛けるヴァージン・オービット。ヴァージン・アトランティック航空を退役したボーイング747-400「コズミック・ガール」を発射母機に、成層圏からロケットを宇宙へ打ち上げます。

 2021年1月17日に、NASAから受注した小型衛星打ち上げに成功したヴァージン・オービットは、試験段階から商業打ち上げビジネスに移行することを宣言。その顧客第1号となったのが、オランダ国防省(オランダ空軍)でした。

 打ち上げ予定の人工衛星は、キューブサット(CubeSat)と呼ばれる規格にのっとって作られた超小型衛星。立方体の基本ユニット6つ分の大きさを示す「6U」というサイズで、ちょうど1リットルの牛乳パックを2つ束ねたような形です。

 オランダ国防省は2017年11月30日、初の人工衛星を打ち上げることを発表。デルフトにある宇宙開発企業ISIS(Innovative Solutions in Space)、オランダ国立航空宇宙研究所、デルフト工科大学が共同で設計した、航法・通信・観測(偵察)を目的とした人工衛星が完成しました。

 衛星の名称は「ブリークII(Brik II)」。これは、1913年にオランダ空軍がオランダ軍の航空局(LVA)として創設された際、初の飛行機として導入した「ブリーク(De Brik)」に敬意を表したもので、オランダ人のマリヌス・ファン・ミールがフランスのファルマン複葉機を参考に設計・製作した国産機でもありました。

 当初は2019年の中ごろに打ち上げられる予定でしたが、衛星に搭載する機器の部品調達に手間取り、完成が遅れていました。今回のブリークIIは、超小型衛星が軍事部門で役立つかを実験する技術試験衛星の側面を有しているそうです。

 オランダ空軍参謀総長、デニス・リュイト中将は「初の人工衛星打ち上げは、空軍だけでなくオランダ軍全体にとってのマイルストーンです。私たちは国防省の未公表宇宙戦略の一環として、宇宙での能力を開発したいと考えており、最新の防衛白書においても同盟諸国と肩を並べる宇宙での情報集能力開発が重要だとしています。この大きな第一歩をヴァージン・オービットの機動的な打ち上げ能力と共に踏み出すのは、またとない機会です」とコメントし、オランダ初の軍事衛星打ち上げを楽しみにしている様子。

 今回の打ち上げでは、オランダ空軍のほかにアメリカ国防総省の宇宙実験計画に基づくペイロード(積み荷)も相乗りする予定。詳細は明らかになっていませんが、同じく小型のもののようです。

 ヴァージン・オービットのダン・ハートCEOは「オランダ空軍にとって初めての人工衛星打ち上げをサポートすることができ、大変光栄に思っています。オランダとアメリカが、私たち独自の機動的ロケット打ち上げシステムにより、相互に利益を得ることを楽しみにしています。宇宙インフラに依存し、それが脅威にさらされる時代において、相手の優位を削ぐためには、より機動性と即応性が求められます。私たちの空中発射技術は、そのギャップを埋め合わせるだけの可能性があります」とのコメントを発表しています。

 現在のところ、打ち上げは2021年3月を予定しているそうですが、打ち上げに使用する空域の使用許可などが必要なため、細かなスケジュールは後日決定されるとのことです。

<出典・引用>
オランダ国防省 ニュースリリース
ヴァージン・オービット プレスリリース
Image:オランダ国防省/ヴァージン・オービット

(咲村珠樹)