狭いようで広い日本。地元ではありふれて当たり前でも、ほかの地域からすると珍しがられることって、結構あるものです。とあるTwitterユーザーが投稿した「地元で当たり前」の写真が、こんなものがあるのか!と反響を呼んでいます。

 この写真を投稿したのは、宮崎県に住むTwitterユーザーのシンさん。「愛する故郷 宮崎県」というアカウント名で、郷土である宮崎の魅力を発信しています。

 シンさんが「宮崎の道端でよく見かける物」と投稿した写真には、なにやら茶色く干からびた感じの物体が、道端に落ちている様子。端の方を見ると、繊維状にほぐれている様子も見受けられます。

 リプライ欄にシンさんが続けて投稿したように、これは宮崎で街路樹として植栽されているワシントニアパーム(ワシントンヤシ)やフェニックス(カナリーヤシ)の皮(正確には葉の根元部分)が剥がれ落ちたもの。木の成長にともなって落ちるほか、台風など強風が吹き荒れた翌日にバラバラと散らばって落ちているのを見かけます。

 シンさんはかつてホテルマンをしていたこともあり、これを宿泊に訪れたお子さんが興味津々で見ていたことを思い出し、宮崎空港(宮崎ブーゲンビリア空港)近くで見つけたのを撮影したとのこと。「フェニックスやワシントニアパームは宮崎らしさを象徴したものですし、新型コロナウイルス禍という状況で旅行したくてもできない方々に宮崎らしさの一端をお見せしたい気持ちがありました」とシンさん。

 寄せられた反響では「てっきりベーコンかなと」や「なんかの動物の、肉削いだ跡かと思っちゃいましたー」といった肉っぽい印象を抱いたものが目立ちます。また「台風通過後の登下校の時に公園でめっちゃ見かけるやつじゃないですか」といった宮崎県出身者の反応のほか、伊豆半島、千葉県浦安市、和歌山、徳島など各地でも見かけるというものも。

 ワシントニアパームやフェニックスなど、ヤシ科の植物は枝分かれせず、幹の頂部に葉が固まって上へと伸びていくのが特徴。このため、成長過程で枯れた葉が幹から落ちる際に、このような茶色いものが周りに散らばる訳です。ゴツゴツした幹の表面は、葉が落ちた跡。

 筆者も宮崎生まれで、親戚の家にフェニックスが庭木として植えてあったことから、非常に馴染み深いもの。シンさんは「知らなかった方々も多い中で、他県での目撃報告も多くて驚きでした」と感想を語ってくれました。

 宮崎におけるワシントニアパームやフェニックスの植栽は、1960年代に「宮崎観光の父」と呼ばれる岩切章太郎さん(宮崎交通創業者)が南国イメージを演出するため、宮崎市の中心部を通る橘通や大淀川沿いの観光ホテル街前(橘公園)、日南海岸に植えたことに始まります。その後、宮崎空港と宮崎市街地を結ぶ国道220号線バイパス沿いや、読売ジャイアンツが1975年から春季キャンプを実施している宮崎県総合運動公園(1959年~1974年は宮崎駅近くの宮崎県営球場)などに植えられました。

 永六輔さん作詞、いずみたくさん作曲でデューク・エイセスが歌う全国のご当地ソングシリーズ「にほんのうた」で、宮崎県の歌として1967年にリリースされた「フェニックス・ハネムーン」は、現在JR宮崎駅の接近・発車メロディにも採用。宮崎を象徴する存在として、1966年には県民の投票によりフェニックスが県の木に制定されています。

 千葉県浦安市では舞浜や新浦安(入船、明海、日の出、高洲)地区に、ワシントニアパームが植えられています。鹿児島県、徳島県徳島市をはじめ、静岡県の熱海市や伊東市、福島県いわき市のスパリゾート・ハワイアンズでも、南国の雰囲気をワシントニアパームやフェニックスが演出しているので、ご存知の方も多かったようですね。

 シンさんは「新型コロナウイルス禍の自粛期間中なので、また落ち着いたら宮崎県に来てもらいたいです」と語ってくれました。例年であればこれからプロ野球やJリーグの春季キャンプで、宮崎県には多くの観光客が訪れる時期ですが、新型コロナウイルス禍が落ち着いたら、ぜひ宮崎県に遊びに来てほしいと筆者も思います。

<記事化協力>
シンさん「愛する故郷 宮崎県」(@Miyazak_Lover)

(咲村珠樹)