アメリカ海軍が採用を決定した無人空中給油機、ボーイングMQ-25スティングレイが、初めて空中給油ポッドを装着しての試験飛行を実施しました。ボーイングが2020年12月9日(現地時間)明らかにしたもので、航空機単体だけでなく、より実任務に近い状態での試験に開発フェーズが移行したことを示すものです。

 無人空中給油機MQ-25は、空母から発進して空中に待機し、味方機に空中給油を実施する「空のガソリンスタンド」のような存在。現在、空母運用機は通常の作戦機に「バディポッド」と呼ばれる空中給油装置を装着し、味方機に空中給油をしていますが、この方式だとバディポッドを装着した機は重量の関係で武装ができず、攻撃時に作戦機を1機無駄にしていることになります。

 このため、空中給油を無人機に任せることで、貴重な作戦機とパイロットをすべて攻撃任務に振り向けよう……というのが、アメリカ海軍の構想です。これが実現可能になったのも、無人機の技術が急速に発展したからだといえます。

 MQ-25が装着する空中給油装置も、従来の「バディポッド」と同じイギリスCobham製のポッド式空中給油システム(ARS)。左の主翼下にポッドを1つ装着し、遠隔操作でミッドアメリカ・セントルイス空港(スコット空軍基地)を離陸。2時間半の飛行で、外部にポッドを装着した状態での飛行特性や操縦性などをチェックしました。

 アメリカ海軍でMQ-25開発計画を担当する、海軍航空システムセンター(NAVAIR)の無人空母航空プログラム・マネージャ、チャド・リード大佐は「試験機が空中給油システムを装着して飛行したことで、MQ-25が艦隊の主要任務である空中給油をどのように遂行するか、それを評価する上での大きな一歩を踏み出すことができます。今後はF/A-18と一緒に飛行するとともに、空母の飛行甲板上における試験を通じ、貴重な初期データを収集します」とコメント。開発が新たな段階に入ったことを歓迎しています。

 空中給油ポッドを装着して最初の飛行を無事終えたMQ-25試験機は、今後も飛行試験を続けて様々な飛行状況における空力的特性や操縦特性のデータを収集します。このフェーズでは、最終的に空中給油作業に必要な、空中給油用ホースの伸長・格納までを実施することになっています。

<出典・引用>
ボーイング ニュースリリース
Image:Boeing

(咲村珠樹)