スイス連邦防衛調達局(armasuisse)は2020年11月18日(現地時間)、スウェーデンのBAEシステムズ・ヘグランドに対し、歩兵戦闘車Spz 2000(CV 9030 Mk.II)186両の近代化改修を正式に発注したと発表しました。この改修により、スイス陸軍のSpz 2000は2040年まで現役にとどまることになります。

 スイス陸軍は歩兵戦闘車・装甲兵員輸送車として、CV 90の30mm機関砲装備型、CV 9030を「Spz 2000」の名称で採用し、運用しています。スイスは2020年の防衛力整備計画の一環として、Spz 2000を近代化改修し、2040年まで運用期間を延長することを決定。連邦評議会の承認を得ていました。


 近代化改修の主な要素は、内部のエレクトロニクス関連のアップデートにより、最新のCV 9030 Mk.IV相当にすること。車体外部に取り付けられたカメラやセンサーは360度の光学的情報収集能力を付与し、状況の把握や敵性勢力の捕捉能力が向上します。





 また、車両のハードウェア面では、新しくアクティブダンピングシステムを持つサスペンションに交換。走行時の振動を効果的に軽減し、乗り心地が向上するとともに、走行装置の長寿命化によるメンテナンス回数とコストの低下を図ります。

 今回の契約では、まず2両のプロトタイプがスウェーデンのBAEシステムズ・ヘグランドで改修され、次にスイスのトゥーンにあるRUAG AGで5両の先行改修車が作られます。計7両のプロトタイプと先行改修車で評価試験が実施され、承認されるとRUAG AGで残りの全車両の改修が始まるという方式です。

 BAEシステムズ・ヘグランドのトミー・グスタフソン=ラスク社長は「armasuisseと、この運用期間延長改修契約を締結でき、本当に誇りに思います。私たちはスイスの皆様との関係をより一層深め、軍や政府、地元の業界と長年にわたって協力していけることを楽しみにしています。ともに、この実績ある車両を2040年以降も第一線の能力を維持し続けるようにしていきましょう」とのコメントを発表しています。

 186両のSpz 2000を近代化改修するプログラムは、BAEシステムズが地元スイスの防衛産業界と協力し、地元の製造技術と経済を支える側面もあります。永世中立国であるスイスにとって、防衛産業の維持は大きな命題のひとつでもあるのです。

<出典・引用>
スイス連邦防衛調達局(armasuisse) ニュースリリース
BAEシステムズ ニュースリリース
Image:スイス国防省

(咲村珠樹)