ロシアの航空機メーカーUACは2020年11月11日(現地時間)、ロシア軍向けの大型輸送機Il-76の最新型、Il-76MD-90Aの1号機が組み立てを終えたと発表しました。従来より搭載貨物量と航続距離が向上したほか、貨物搭載機器やコックピット機器が大幅に近代化しています。

 ロシア軍の主力大型輸送機がイリューシンIl-76。原型機は1971年に初飛行し、現在は改良型のIl-76MDが運用されています。

 Il-76MDの性能向上型として設計されたのが、Il-76MD-90A。貨物の搭載能力が48トンから60トンへ向上したほか、新しいPS-90A-76エンジンの採用により、燃料消費量が12~15%減り、航続距離も18%延長されました。

 Il-76MD-90Aはエンジン以外に、機体構造についても改良が加えれました。胴体や降着装置の耐荷重が増加したほか、これまで2つのパーツで構成されていた主翼パネルを25mの一体成型に変更。これにより主翼重量が軽減され、製造過程もシンプルになりました。

 使い勝手の部分も向上しています。貨物を機内に積み込む装置は自動化がすすめられ、荷役を担当するロードマスターは、監視カメラの映像を見ながらワイヤレスコントローラーでホイストクレーンなど、荷役用の機器を操作することが可能となり、負担が大幅に軽減されました。

 パイロットや航法士、航空機関士が乗るコックピット内も、大幅に近代化されました。操縦席は従来のアナログ計器に代わり、多機能ディスプレイを装備した「グラスコックピット」となりました。

 多機能ディスプレイはパイロット用が6面(3面×2名分)、航法士席に2面、そして航空機関士席に1面の計9つ。それぞれ必要な時に必要な情報を呼び出して表示することが可能です。


 また、通信機器や航法機器も最新のものが採用され、より精度の高い飛行が可能に。機体の各所に装備されたカメラは、貨物室やコックピットなどの状況を録画することができ、飛行の様子が記録されます。

 Il-76の主任設計者、アンドレイ・ユラソフ氏は「タスクを完了すると、フライト全体の記録を解読して表示することができます。パイロットは、航空機の操縦を中断することなく、プロセスがどのように進行しているかを確認することができます」と、Il-76MD-90Aの新機能について説明しています。

 完成したIl-76MD-90Aは、UACの飛行試験センターに移されました。今後初飛行や塗装が施され、引き渡し前の試験飛行が行なわれる予定です。

<出典・引用>
UAC ニュースリリース
Image:UAC

(咲村珠樹)