2020年といえば、世界中が新型コロナウイルスに翻弄されつづけている1年。日本では3月頃から各種学校が休校となり、4月からは本格的な外出自粛がもとめられ、解除になって以降も引き続き「密閉」「密集」「密接」の「三つの密」を心がけるよう求められています。

 このため人が集まる場所は避け、旅行などでも遠方へ足を運ぶのではなく、近隣ですませる人が増えています。ともない、注目されはじめたのが「キャンプ」。キャンプ場は人と人との距離がある程度保たれ、しかも自然にも多くふれあえるとあり人気が集まっています。

 しかし、普段からやり慣れていない人や今年始めたばかりの人たちも多く訪れているようで、SNS上にはしばしばキャンプ愛好家たちから嘆きの声が投稿されるようになりました。

 つい先日も、Twitterユーザーのりょーきゃん【新潟キャンパー】さん(@r_camping_photo)の投稿が話題になっています。

 りょーきゃんさんは10月下旬のある日、馴染みの無料キャンプ場にでかけたといいます。そこで目にしたのは、あちこちに落ちていた炭(木炭)。

 あまりの事に出来る範囲の炭は拾って持ち帰ったと言いますが、この状況を広く知って欲しいと願いTwitter上で注意喚起を行いました。

『今回のキャンプ全体的に楽しかったんですが1つだけ
けっこうな箇所に炭が捨ててあってちょいがっかり
「炭は自然には帰らない」
一瞬感情的になりかけましたが、自分も最初は知らなかったので、多くの人に知ってもらえると嬉しいです』

『今回、あまりにも目立つ捨てられ方をしてたのでその分は自分が拾って帰りました。
環境破壊の側面だけでなく、
使えるキャンプ場が減る
他のキャンパーが不快な思いをする
そんな可能性もあります
心当たりがある方
次から気をつけてキャンプしていただければと思います』

 この投稿は1万RTも拡散され多くの人の目に触れることに。特に「炭は自然に還らない」という点が注目されていました。

 りょーきゃんさんに話を聞くと「キャンプを始めて2年になりますが、ここまで散乱しているのは今回が初めてです。芝生が焼けているのを見たことがある程度でした。(りょーきゃんさんが炭の散乱を目撃した場所が)無料のキャンプ場だからでしょうか」と、昨年とは違う変化を語っています。

 また、この頃は「水場(洗い場)が汚くなっていることが気になります。食事の残り、炭、バーベキュー網など捨てられていることがあります」という話も。

 無料キャンプ場だからこそ監視の目が届きづらく、好き勝手していく人が一層多いのかもしれません。ただ、こういう行為がつづけば、キャンプ場閉鎖も大いにあり得る事態です。

■ 炭はそのままだと肥料や土壌改良には使えません

 炭(木炭)の主成分は「炭素」です。細かい説明ははしょりますが、ざっくり説明すると非常に安定しているため、“そのままでは”とても分解されにくい物質である、ということ。

 遺跡などの発掘現場で、土中からうん万年前の炭や火事跡が出てきた、というニュースをみたことがないでしょうか?炭は放置すれば、それぐらい長く残り続けます。

 炭を土壌改良のために使用することはありますが(空気を入れるなどの理由で)、使用する場合にはそれ専用の加工が必要。キャンプなどで使われた単なる消し炭を「放置する・土に埋める」といった場合は、誰かが拾わない限り長くその場に残ることとなります。

 また、灰ならば肥料になって土地にもよく環境に優しいんじゃ……と思うかもしれませんが、灰の成分(何と一緒に燃やしたかでも影響します)や量によっては土壌汚染に繋がる可能性があります。肥料として使うならば、それ専用の加工がこちらも必要。

 家庭菜園などでは「炭・灰は畑に」という考えもあるようですが、それは自身の土地だからこそ許されること。同じ感覚でキャンプ場という「他人の土地」に、炭や灰を放置する行為は単なる「ゴミ投棄」でしかありません。

■ 癒やしのキャンプ場が地獄のキャンプ場に

 実は筆者もキャンプを趣味としています。今年も本格的なシーズン到来(趣味キャンパーの中には「秋からがシーズン」という考え方もあります)ということで、久しぶりに馴染みのキャンプ場へと足を運んだのですが……。

 訪れたのはもう7年ほど通い詰めているお気に入りの有料キャンプ場でした。10月末という季節的には暑くもなく寒すぎでもなくというちょうどいい日。

 到着すると既に何組かの方が設営を行っていました。顔なじみのオーナーに挨拶をして、指定サイト(サイト=場所。1組ごとに区切られたスペース)へと移動。設営を完了させ、もってきた食材をひらき夕餉の準備へ。合間には入浴も済ませて、日も暮れてきたことだし食事……となったときでした。

「ヒューパーン(打ち上げ花火)」
「キャハハハハハ!(歓声)」

 は?チェックインしたとき渡されたキャンプ場のルールの紙を見直す私。そこには「打ち上げ花火厳禁」と書いてあります。……ですよね?

 キャンプ場の多くは森の中に存在しています。このため、周辺に燃え移り山火事など起きないよう「打ち上げ花火禁止」にしているところは少なくありません。手持ち花火ですら「夏場の限られた時間」「指定場所のみ」というところもあるほどです。それくらい火気の扱いには慎重。やっていいこといけないことは、必ずキャンプ場ごとにルールが定められています。有料ならばチェックインの際に配布される紙を、無料ならば設置してある看板などで必ずルールを確認しましょう。

 花火の家族はすぐ誰かに注意されたのか、2~3発打ったところですぐに止めてくれました。恐らくオーナーが注意したんだろうなぁと思いつつ、その後食事をすませてお酒も楽しみ22時頃に就寝。キャンプ場では割と早い時間に消灯するのが私の定番。その他の家族も似たようなものです。

 夜21時以降は「静かに」というのがこのキャンプ場のルール。その他のキャンプ場でも似たような時間から「サイレントタイム(静かに過ごす時間)」のルールが必ず定められています。そして寝袋に入ってうとうとしかけたその時でした。

「わおーーん わおーん(男の人の声)」
「ギャハハハハハ」

 は?少し高台のサイトから男の人の雄叫びというか吠える声、そして何人かの大爆笑が聞こえてきます。眠れない……。私の付近のテントはどこも家族連ればかり。みなほぼ消灯状態に入っていました。なのに10分ほどしつこく続く大声。

 酔っ払いのグループかなぁ。と思ったところ、どうやらこちらもオーナーに注意されたようでしばらくすると静かになりました。

 さてもう一度寝よう……と思った今度は、すぐ向かい側のソロキャンパーさんが、エンジンかけっぱなし&車のライトつけっぱなしで車中で寝てしまったもよう。覗いてみると、タープの中が少し片付けられた状態。

 恐らく片付けるためライトをつけたものの、酒に酔ったかなにかでライトもエンジンも消し忘れて車の中で爆睡してしまったようでした。声をかけても起きない、窓を叩いても起きない……。ぐぬぬぬぬ!

 オーナーはもうお帰りになった時間。受付窓口もしまっています。その後、私はひたすら朝まで、そのエンジン音に悩まされながら朝を迎えたのでした。ちなみに翌朝気づくと、エンジンかけっぱなし&ライトつけっぱなしさんは早々に撤収して7時には消えていました。

 そんなこんなで踏んだり蹴ったりだった1泊2日のキャンプ。いままで7年通いつめていますが、かつて一度もこんなことはありませんでした。酔っ払いが多少騒ぐことはありましたけど……。打ち上げ花火に、エンジンかけっぱなしなんてほんと一度もなく。(そもそもエンジンかけっぱなしはどのキャンプ場でも禁止されています)

 先に紹介したりょーきゃんさんのキャンプ場と場所は全く異なりますが、私も昨年までとはキャンプ場の雰囲気が変わっていることに気づきました。

 その後は撤収作業をすませて、あとは指定のゴミ出し場所にゴミを出したら帰ろうと管理棟脇へと向かっていたところ……今度は、向こうから燃えさかる段ボールをもった少年が走ってくるではないですか。

「どした僕!!」
「ゴミ出し場が燃えかけてる!どうしたらいいかわからないから、火がついた段ボール抜いてきた」

 ひとまず少年から段ボールを取り上げ、近くの水場で消火。消火しながら少年には「火事をみかけたら火はおいといて先に大人を呼ぶよう」ついでに説明。彼にケガがないことも確認したあとは、ゴミ出し場に大急ぎでかけつけてみると……もうもうと上がる煙。

 私が到着したのと同じタイミングで施設の職員の人もかけつけ、消火作業へ。発見が早かったのもあり、一部のゴミを燃やす程度ですんだのですが、その後駆けつけたオーナーから話を聞くと。

「これ今年だけで2度目。消えてない炭をゴミに入れて出しちゃいけないって、なんでわからないのかな???もう常識じゃないの???」

 めちゃくちゃ怒ってました。このキャンプ場には「炭や灰を捨てる場所」がちゃんと設置されています。何故そこに捨てなかったのか……。私も不思議でなりません。

 キャンプ場によっては炭捨て場がないところもあります。その場合は、しっかり水をかけて消火状態を確認してゴミとして出す、ゴミ出し場がない場合は持ち帰る、というのが基本。ただこのところの急なキャンプ需要により、火の扱いや炭の扱いを知らない人も多く訪れるようになっているようです。

 りょーきゃんが見つけた炭というのも、そうした「火の扱いが分からない」人たちの仕業なのかな、と自身のつい最近の出来事と重ね考えてしまいました。

 りょーきゃんさんが発見した炭も、よくよくみると最初の写真は灰の一部が炭の形でのこっています。自然に消えた火の灰は炭の形を残すことがありますが、水をかけるとある程度崩れます。これはあくまで想像ですが、自然に火が消えた炭や灰を水もかけずにそのままひっくり返していったように私にはうつるのです。

 自然に火が消えた炭や灰は「火が完全に消えているように見えて、中に火種が残っている」ことがあります。この炭も、もし消えきっていなかったら……考えるだけで、ゾッとしてしまいます。

■ キャンプ場のルールは確実に把握を

 あまり厳しいことを言うつもりはありませんが、今年キャンプを始めた方、まだそこまで慣れていない方に私からもお願いです。以下のことを最低限守れば、キャンプは誰にも迷惑をかけず楽しく過ごせます。

▼キャンプ場についたら施設のルールを把握・厳守する
有料キャンプ場の多くは入場(チェックイン)時にルールの紙を配布しています。無料の場合は看板など設置されていますのでそこで確認してください。まずこれを行うだけでも多くのルール違反は防ぐことができます。

▼自分が使った場所(水場、サイト)にゴミを残さない
キャンプ場はそもそも「撤収時にゴミ出し(もしくは持ち帰り)まで求める」ところがほとんど。帰るときに来た時と同じ状態でサイトを返すのが基本です。

水場については三角コーナーが置かれていることもありますが、多くの人が使用する場所。みんなが置いていけばすぐ満杯になります。その場で出た野菜くずや残飯などは自分のサイトまでもって帰りその他のゴミと一緒に出すのが無難。

それでも「管理人がいるんだからやってくれるだろう」と思う人もいるかもしれませんが、それは甘い考え。確かに掃除は行われますが、掃除が行われるまえに放置されたものが風で飛んであちこちに散乱しているのをみたことがあります。

また、キャンプ場付近は野生動物の生息地であることも多く(タヌキなど)、綺麗にまとめてゴミを放置していったとしても、動物たちが荒らしてしまうこともよくあります。結果、動物の命や生態に影響を与えてしまうことに……。しっかりゴミを持ち帰る・管理することは、美観だけでなく動物を守ることにも繋がります。

▼火の扱い・処理は十分注意する

キャンプ場ごとにたき火・BBQ台の使用ルールがあります。「直火NG」「直火OK」など。また施設によっては「焚き火台を使用しての焚き火はOKだけれど、サイト内の決められた場所のみ」と焚き火できる場所を細かく決めているところもあります。基本的にキャンプ場のルールを説明した紙や看板などで把握することができますので、この点必ず確認を。花火の扱いも同じくです。

そして炭を捨てる際には、確実に消火を確認すること。さらに「炭(灰)捨て場」があればそこに持っていく、なければしっかり水をかけ消火をしてゴミに出す。ゴミ出し場自体がない場合には同じく消火をしっかりして全て持ち帰る。こちらも施設ルールを確認して従ってください。

あと基本的なことですが「火が消えてない炭をゴミ袋に入れて出すと燃えます」。絶対に未消火状態の炭をゴミ袋に入れてしまわないように。

▼他人の土地で勝手にキャンプしてはいけない

これは今回の話とはことなりますが、念のため注意として書いておきます。

近年「野営キャンプ※」がYouTubeをきっかけに流行っていますが、勝手に他人の土地でキャンプをするのは絶対NG。山林、浜辺、川辺、畑、どこででもです。無断で立ち入れば不法侵入となります。

一見すると誰の土地かわからない場所でも、かならず所有者・管理者が存在します。近年この野営キャンプの流行により、他人の土地で無断キャンプする人がいるようで、Twitterではたまに目撃情報が投稿され、少しずつですが問題視されはじめています。

キャンプをしたいなら基本キャンプ場へ。どうしても野営キャンプがしたいなら、その土地の方と交渉するか、自身で山林など購入してください。

※野営キャンプ=より自然な場所でキャンプを楽しもうという、キャンプ愛好家の中でも上級者向けの遊び。自身で山林を購入して専用の遊び場を設けている人もいます。

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 このごろ言われることは減ってきていますが、キャンプの基本は「来た時よりも美しく」と言われています。帰るときは来た時と同じ状態以上に綺麗にして返すぐらいが後の人にも周り(人にも自然)にも優しい、という考え方です。ちなみにボーイスカウトやガールスカウトでは、この「来た時よりも美しく」を全てにおいて厳しくたたき込まれます。経験者なら覚えありますよね?

 自然遊びは自由が多い分、守るべき事も同じく多くあります。有料キャンプ場だろうが、無料キャンプ場だろうが場所をその日“のみ”借りているだけ、ということを忘れずルールを守って過ごせば、きっといつ来ても楽しい癒やしの時間を過ごせることでしょう。

<記事化協力>
りょーきゃん【新潟キャンパー】さん(@r_camping_photo)

(宮崎美和子)