実は私、休みの日はプラモデルを組み立てるのが趣味なんです。お店で買ったプラモデルをコツコツと組み上げて出来上がった瞬間はまさに至福のとき。

 ただそれだけでは物足りない方も多いようで、様々なアレンジを施す方が多いのもまたプラモデルの魅力。その中でも人気なのは「ペイント」と呼ばれる塗装加工を施すアレンジです。

 従来のカラーリングとは違ったそれは、とても“映える”もので、Twitterでも頻繁に作品が投稿されるのですが、先日もある模型ペインターの作品話題になりました。

 「HG(※)のシナンジュを青色キャンディ塗装してみました!細かいところは筆で塗っています とてもかっこよくできたと思います(*´ω`*)ぜひご覧ください」

 ※HG(ハイグレード)とは、株式会社バンダイが展開する「機動戦士ガンダムシリーズ」に登場する機体を立体化したプラモデル(通称:ガンプラ)の中で、1/144スケールで展開しているシリーズのこと。

 投稿をしたのはせなすけさん。実はせなすけさんは、Twitterフォロワー数は2万6000人、公式YouTubeチャンネル登録者数は6万人を超える人気プロペインター。また同時に、株式会社ホビージャパンが刊行する模型雑誌「月刊ホビージャパン」で、ライターとしても活躍しています。

 そんなせなすけさんが今回作ったものはというと、人気ロボットアニメ「ガンダムシリーズ」の作品のひとつ「機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)」にて、主人公のバナージ・リンクスと対峙する、ネオジオン軍残党“袖付き”の首魁(しゅかい)フル・フロンタルが搭乗する真紅のカラーが特徴のMS(モビルスーツ)「シナンジュ」。しかしながらその見た目は、真紅とは真逆の鮮やかな「青」のカラーリング。

 私事ですが、筆者は幼少の頃からガンダムと共に成長した人間。もちろん“UC”も全話視聴しており、このシナンジュには興味津々。一体どのように作ったのか、せなすけさんに詳しく伺いました。

 せなすけさんは、元々ガンダムシリーズのMSの中では赤い機体がお気に入りということで、今回のシナンジュもそれが講じて選択されたそう。ただ同時に、青系統の配色も好みなのだそうですが、今回については「ビビっとインスピレーションが働いて」とのこと。ガンダム的に言うと、“ニュータイプの勘”といったところでしょうか。

 そんな青のシナンジュ、テンションMAXの状態で寝るのも忘れて作成したとのこと。どうやって作ったのかはファンならずとも気になるところです。

 「今回はキャンディ塗装という方法でやってみたんです」

 と語るせなすけさん。随分と美味しそうな名前の塗装方法ですが、キャンディ塗装というのは、複数の色の塗料材を使用してペイントしていく手法。色を重ねるような塗装を施すことで、単色だけでは表現できない色合いが得られ、飴玉のように見えることからそう呼ばれています。

 実は、キャンディ塗装が初めてだったというせなすけさん。使用する塗料は、自身が模型ペイントの世界にのめり込んでいくきっかけになった、イギリスのミニチュアプラモデル「ウォーハンマー」を展開する模型メーカー、「ゲームズワークショップ」が販売している「シタデルカラー」を駆使して行いました。

 まずは素組みした状態のシナンジュを、銀のシタデルカラーで塗装。「え?青なのに銀なの?」と思った方も多いかもしれませんが、ここからがせなすけさんの真骨頂。全身を銀で覆われたシナンジュを、お次は青のシタデルカラーで塗装。そしたらなんということでしょう。銀のシナンジュが、鮮やかな青のシナンジュへと様変わりしたではありませんか!

 と、申しておりますが、これで終わりではありません。お次にとせなすけさんが手に取ったのは、何と紫のシタデルカラー。これを全身に吹きかけると、より濃淡で深みのある青になりました。

 さらに、肩部分は紫を多めに吹きかけることで、敢えて目立たせることで全体の青を逆に引き立たせるという逆説的な手法も披露。「初めてだよな……?」と筆者は思いながら、せなすけさんの超絶テクニックにただただ魅入られました。

 そうしてボディ部分の塗装が完了したあとは、パッケージに入っているデカールを貼付。動力部分などの細かいところは、複数のシタデルカラーで筆塗りして完成……と、文字では簡潔になりますが、これは無我の境地に入らないと、まず達成できないくらいの作業であることをお伝えいたします。

 その引き寄せられるような青により、シナンジュのまた違った魅力を引き出した見事なペイント。制作中の様子を納めたせなすけさんのYouTubeチャンネル動画の中で、100点満点と満足されたのも納得です。ツイートでも「青でもカッコいい!」という声が多数寄せられました。

 そんなせなすけさんですが、ガンプラに関しては、先述した「ホビージャパン」のライターを担うようになってから作り始めたそうで、「プロペインター」としてのキャリアでは後発に入るんだそう。今回せっかくの機会なので、ガンプラ以外の過去作品の一部を見せていただいたのですが、どれも言葉では言い表せないものばかり。昨今ネットスラング的に浸透している「語彙力」を磨く必要があるものばかりでした。

 余談ですが、8月31日発売の模型雑誌「ガンダムホビーライフ017」(KADOKAWA社発行)にて、「機動戦士ガンダム逆襲のシャア」にて、主人公アムロ・レイの最大のライバルである、シャア・アズナブルが搭乗するMS「サザビー」のガンプラのアレンジ作例として掲載されているとのことです。今回特別に掲載写真の一部の掲載許可をいただきましたので、こちらも紹介させていただきますね。ジークジオン!

<取材協力>
せなすけさん(Twitter:@l2Po3QMEtZd19wr/YouTubeチャンネル: https://www.youtube.com/channel/UCucE8e2-Yi3s60_vNl5KFdA )
ガンダムホビーライフ編集部

(向山純平)