皆さんは「モノレール」という乗り物を利用したことはありますか?モノレールというのは、通常の鉄道では車両が走行する「レール(軌道)」を2本使うのに対し、1本(モノ)で走る交通機関(鉄道)のこと。

 このため、線路も車両も通常の鉄道とは違った独特な形状をしているんですが、その特徴は意外と知られていません。そんな中、大阪府にある大阪モノレール公式Twitterが投稿した分岐器(ポイント)切り替えの様子が、先日大きな話題となりました。

 モノレールは、線路(軌道)に車両がぶら下がって走行する懸垂型、そして軌道の上に車両が跨がって走行する跨座型(こざがた)と、大きく2つの形式に分けられます。1990年に開業した大阪モノレールは、コンクリート製と鋼製の軌道の上をゴムタイヤで走行する跨座型(日本跨座式)を採用し、現在は「本線」とされる大阪空港駅〜門真市駅の大阪モノレール線と、万博記念公園駅〜彩都西駅の「彩都(さいと)線」こと国際文化公園都市モノレール線という2路線で営業しています。

 「万博記念公園駅には、モノレールでは珍しい分岐器があります!動画は10倍速ですが、こうやって見ると、なんだか生きものみたい……?」

 そうつぶやきながら、大阪モノレール公式Twitter担当者が投稿したのは、本線から彩都線が分岐する万博記念公園駅から撮影した、10倍速で大阪モノレールが走行している様子。これに登場する分岐器の動きが面白いんです。

 分岐器(ポイント)というのは、英語圏では「ターンアウトスイッチ」と呼ばれるもので、列車の進行する線路を切り替える装置。これを調整することで、線路(レール)の一部が動いて線路の開通方向が切り替わり、別の方向へ列車は進むことができます。

 通常の鉄道では線路のほんの一部が動くだけですが、今回のツイートの様子では、まるで猫のしっぽのように動く様子がとてもユニーク。軌道桁に車両が跨がる跨座型モノレールは、車両の通過する間隔を大きく確保しなくてはいけないので、分岐器も軌道を大きく動かす必要があるんですね。

 当日のツイートでも、2万近い「いいね」が寄せられ、コメント欄も「こんな仕組みだったんだ」「見ていて飽きない」「生き物みたい」「日本の技術と精度の凄さですね」とその独特の動きに目を奪われる方が多数。

 今回編集部では、この投稿を行った大阪モノレールの運営会社である、大阪モノレール株式会社広報担当の方に直接話を伺ったのですが、担当者としてもこの反響には大変驚いたそうです。

 元々大阪モノレールでは、ダイヤの乱れなど運行情報を知らせるTwitterアカウントを運用していました。それに加え「より多くの方にモノレールを知っていただければ」という理由で、2020年6月に大阪モノレール公式アカウントを別途開設されたそうなんですが、今回のツイートだけで300人近くフォロワーが増えたそう。

 さらにお話を聞いていくうちで面白かったのが、日本で10社局(2019年10月末で休止した東京都交通局上野動物園モノレール含む)しかないモノレールですが、そのうち跨座型を採用している鉄道会社は6社しかないそう。

 その中でも大阪モノレールは、本線である大阪空港駅~門真市駅を結ぶ「大阪モノレール線」以外に、万博記念公園駅~彩都西駅を結ぶ「彩都線(国際文化公園都市モノレール線)」を有しており、6社のうちで唯一複数の路線がある事業者なんです。

 今回動画を撮影した万博記念公園駅は、彩都線への分岐駅。双方の路線は軌道が2つある複線なので、本線と彩都線が分岐する側では都合4つの軌道桁を走る列車が駅に発着するのですが、分岐器の場所だけは軌道が2つだけ。そのため、駅の大きな窓ガラス越しに見ていると数分おきに分岐器が動いて軌道が切り替わり、それぞれの方向へ列車が発着していくのが一望できます。

 ちなみに、大阪モノレールの分岐器の部分はいくつかの「関節」を持った軌道桁になっていて、柔軟に動くよう工夫されているんだとか。駅から撮影した動画では、鋼製の軌道桁がグニャグニャ動いてるように見えて「柔らかい軌道桁があるの?」と思ってしまったのですが、そんなことはなかったようです。

 実は私も、過去大阪モノレールを利用したことがあり、さらに万博記念公園駅にも何度も降車して、なおかつその分岐器も見たことがあるはずなんですが、今回お話を聞くまで完全に失念しており、こうして記事を書いていく中で「あれか!」と思い出しました。

 大変お恥ずかしい話ですが、一方でそれくらい関西では浸透している存在でもあります。しかし編集部の鉄道ファンによると、この分岐器は世界中の鉄道ファンに知られていて、YouTubeには多くの動画が公開されているんだとか。

 駅から見える跨座型モノレールの分岐器としては、東京のJR浜松町駅と羽田空港を結んでいる東京モノレール羽田空港線でも、始発駅のモノレール浜松町駅は軌道桁が1本(単線)、その先から2本(複線)になっているので、列車が発着するたびに羽田空港側にある分岐器が動くのを見ることができます。また、車両基地に隣接した昭和島駅でも車両基地での入換の際、分岐器が動く様子を見ることができます。

 ちなみに今回ご紹介大阪モノレールですが、2020年6月1日に開業30周年を迎え、記念グッズのほか、7月1日〜8月31日には大人500円(大人券1枚で小児2名まで無料)で全線乗り放題になる「サマー1dayパス500」を販売し、9月1日からは「開業30周年記念乗車券」を数量限定で販売するとのこと。

 また、8月1日から「コロナに打ち勝つ!」という想いを込めて、ハート型の絵馬を3000枚作成。先ほどご紹介した万博記念公園駅構内に、8月31日まで絵馬祈願所を設置しています。

 今後、門真市駅から約8.9kmの延伸計画(2029年開業目標)もあるという大阪モノレール。完成すれば総延長36.9kmと、日本最長のモノレールがさらに路線を伸ばすことになるそうです。

<取材協力>
大阪モノレールさん(公式:@OsakaMonorailPR/運行情報:@OsakaMonorail)

(向山純平)