イギリス、ベルギー両政府は、無人偵察機MQ-9Bの運用に関して相互協力することで合意し、2020年8月18日(現地時間)に双方の空軍制服組トップが協力趣意書へ署名しました。今後両国は、MQ-9Bの運用経験を共有し、効果的な運用法の早期確立を図ります。

 MQ-9Bは、ゼネラル・アトミクス・エアロノーティカル・システムズ(GA-ASI)が開発した高高度長時間滞空型の無人偵察機。メーカーでの愛称は「スカイガーディアン」ですが、イギリス空軍では「プロテクターRG」という名称で採用しています。

 イギリス空軍では最大16機の導入が計画されており、2024年半ばには就役する予定。対してベルギーでは4機の導入が決定しており、2023年にも1号機が引き渡されることになっています。

 イギリス空軍参謀総長のマイク・ウィグストン大将と、ベルギー軍航空構成部隊(空軍)司令官のフレデリク・ヴァンシナ少将との間で交わされた相互協力趣意書では、MO-9Bの運用面における訓練、整備、補給、相互運用性、機能面の強化に関して相互協力を図るという内容。両国のMQ-9Bが一体となって運用されるような形になります。

 署名を終えたイギリス空軍のウィグストン参謀総長は「このベルギーとイギリスとの間で交わされた主旨書は、MQ-9プロテクター無人偵察機への可能性を共有するものであり、私たちの国家的および集団的安全保障に取り組むため、相互協力を図ります。両国空軍は最先端のセンサーとシステムを利用し、状況を一変しうる可能性を秘めたこの航空機の運用を通じ、協力してそれぞれの国やNATO、ヨーロッパの安全保障に寄与することになります。プロテクターMQ-9Bの導入は、ヨーロッパおよび世界における無人遠隔操縦航空機(RPAS)の段階的変化を反映しています。ベルギー空軍と再び肩を並べ、この道のりを歩んでいけることを嬉しく思います」との談話を発表しました。

 ベルギー軍(統一軍)のヴァンシナ航空構成部隊司令官は「このシステムを導入する2番目の空軍として、両国間の相互運用に向けて最初の一歩を踏み出すため、イギリスと協力できることを嬉しく思います。MQ-9Bは、世界の混雑する空域においてもシームレスに適合する、初めての遠隔操縦機です。この最先端の装備を活用し、両軍の相互運用性を合理化することに加え、その他の課題にも精力的に取り組むつもりです」とのコメントを発表しています。

 MQ-9Bスカイガーディアン(プロテクター)は、イギリス空軍の要求により開発が始まったという経緯があり、2番目の導入国となったベルギーにとっては、NATOの枠組みを利用しつつ、早期に運用ノウハウを確立したいという意図があるものと思われます。イギリスにしてみても、双方の国での運用実績を重ねることで信頼性をより高めることができるので、いわばWin-Winの協定といえそうです。GA-ASIは同じNATO加盟国のカナダにも、MQ-9Bスカイガーディアンの売り込みをかけており、メーカーとしても歓迎すべきものといえるかもしれません。

<出典・引用>
イギリス空軍 ニュースリリース
ベルギー軍航空構成部隊 プレスリリース
Image:Crown Copyright/GA-ASI

(咲村珠樹)