アメリカ海軍のアクロバットチーム、ブルーエンジェルズ の専用輸送機C-130「ファットアルバート」が2020年8月に新しくなりました。最新型のC-130Jとなったファットアルバート、実はイギリス空軍から移籍という、チームの歴史で初めてのケースなんです。

 ブルーエンジェルズの整備機材や整備員を運ぶ専用のC-130輸送機は、伝統的にアメリカ海兵隊によって運用され「ファットアルバート」の愛称がつけられています。名前の由来は、1972年~1985年にアメリカで放送されていたビル・コスビーさん司会の子ども向けテレビアニメ「ファット・アルバート・アンド・ザ・コスビー・キッズ」の主人公、ファット・アルバート(ふとっちょアルバート)から。大きな体で仲間のために働く姿を、輸送機の任務に例えた訳です。

 ファット・アルバートは機材や人員を運ぶだけでなく、エアショウでも活躍します。ブルーエンジェルズの展示飛行が始まる前に、来場者を楽しませる「オープニングアクト」で大迫力のフライトを見せてくれるのです。離陸直後の急上昇や急旋回など、C-130の輸送機らしからぬ軽快でダイナミックな動きが人気です。



 2021年シーズンから、ブルーエンジェルズの使用機がF/A-18E/Fスーパーホーネットへ変更されるのに合わせ、ファットアルバートも機種を最新型のC-130Jへと変更されることになりました。これまでは実戦部隊から、ある程度年数の経過した機材を移籍させていたのですが、C-130Jはまだ従来のC-130Hに代わって配備が進められている途中であり、アメリカ海兵隊に余剰機はありません。



 ちょうど時期を同じくして、イギリス空軍ではC-130Jの数を減らし、エアバスA400M“アトラス”を調達する計画を進めていました。退役するC-130Jを売却したいイギリスと、新しいファットアルバート用の中古C-130Jを調達したいアメリカ海軍の利害が一致し、イギリス空軍のC-130Jを新しいファットアルバートとして購入することになったのでした。

 イギリス国防省で空軍装備部門を統括する、ジュリアン・ヤング空軍中将は「イギリス国防省は複数の利害関係者と協力し、この素晴らしい飛行機をアメリカ海軍ブルーエンジェルズに届けることを誇りに思っています。大西洋を挟んだ両国のチームによる努力の結果です。このC-130Jは何年もの間、イギリス空軍でよく働いてくれました。そして今度は改修を経て、新たな軍の一員として働くことを喜んでいます。新たに素敵なカラーリングに身を包んだブルーエンジェルズのC-130Jは、あらゆる所へ飛んで行ってくれるでしょう」と、ファットアルバートとして生まれ変わったC-130Jを祝福しています。

 イギリスからC-130Jを受け入れる、アメリカ海兵隊のグレッグ・マシエッロ少将は「これは同盟国と双方のプロフェッショナルによる協力の素晴らしい例です。今回のブルーエンジェルズ用C-130J調達に関する調整作業は、イギリス国防省と改修を担当したマーシャル・エアロスペースとのユニークなパートナーシップを際立たせています。チームは課題に取り組み、この視認性の高い財産を私たちに提供し、今後何年も海軍フライトデモンストレーションチームをサポートする“新しい”飛行機を仕立ててくれました」と、イギリス国防省とファットアルバートへの改修作業を担当したマーシャル・エアロスペース社に、感謝のコメントを発表しています。

 ファットアルバートの運用を担当する米海兵隊のパイロットと整備士はイギリスに渡り、当地で新しい機体と対面して飛行訓練を重ねました。アメリカ軍のアクロバットチームに所属する飛行機が、イギリスで訓練飛行をするというのも珍しい光景です。


 イギリス空軍から移管された新しいC-130J「ファットアルバート」は、8月4日にアメリカへ向けて飛び立ちました。アイスランドで一旦給油と途中整備を実施し、8月6日にテキサス州の海軍フォートワース統合予備役航空基地に到着。


 フォートワースでC-130Jは840日間のエンジン検査を実施し、その後ブルーエンジェルズの本拠地フロリダ州のペンサコーラ海軍航空基地へ向かう予定です。従来型F/A-18の最後となる2020年シーズンは、新型コロナウイルス感染拡大の影響でエアショウが全てキャンセルされてしまいましたが、2021年シーズンには、スーパーホーネットに衣替えした新生ブルーエンジェルズと、C-130Jファットアルバートの勇姿がエアショウで見られることを期待したいですね。

<出典・引用>
イギリス空軍 ニュースリリース
Image:U.S.Navy/USMC

(咲村珠樹)