同人サークルと聞くと二次創作の漫画というイメージが強いかもしれませんが、他にもオリジナルの創作分野や個人の研究成果の発表、グッズ作成とジャンルは色々。今回は手のひらサイズで本物の食べ物そっくりのフェイクフード“偽食(ぎしょく)”を制作する「奇妙堂」の姐御さんにこれまでの活動についてお話を伺いました。

 【奇妙堂さんインタビュー】
 ――お久しぶりです!その節はありがとうございました。(筆者と奇妙堂さんは以前に少しおつきあいがあります)

 (奇妙堂さん)
 ご無沙汰しております~。私(奇妙堂)をどう紹介して下さるのか一読者としても楽しみです!

 ――それではまず自己紹介と奇妙堂さんがどういったサークルか教えてください!

 (奇妙堂さん)
 はーい!私、奇妙堂は手のひらサイズのフェイクフードをメインに樹脂製小物を制作しています。今は私一人で運営しているのでサークルというより屋号に近いかも?ちなみに元々はコスプレ衣装屋だったんですよ。

 ――あれって偽食じゃなくてフェイクフードっていうんですか……

 (奇妙堂さん)
 Twitterだと文字数制限があるので簡単に言い換えれないかなって考えて偽食(ぎしょく)って当て字にしてるんです。なのでフェイクフードでも大丈夫ですよ(笑)

 ――確かに7文字と2文字はかなり違う!というか元は衣装関係だったんですね。どうして偽食作りに?ってフェイクフードか。

 (奇妙堂さん)
 どっちでもいいですよ(笑)元々は複数人で同人誌を制作していたのですが、その時のメンバーの一人と私でコスプレ衣装屋をやろうという話になったんです。実はコスプレ衣装って宝石みたいな装飾品や小物などが色々必要で、それらを原型から作ったりしてました。ただ年が経つにつれて携帯やネットが普及して手軽に衣装も買えるようになったんで、2009年に一旦活動休止したんです。

 ――これまでの活動の半分はコスプレ衣装制作だったんですね

 (奇妙堂さん)
 そうそう。ちなみに「奇妙堂」の名前って実は同人誌サークルとしての活動は1995年から始めてて、そのときに他と被らないような普通じゃ使わない名前にしようというのが理由なんです。で、1997年にコスプレ衣装屋として本格的な活動開始したときに改めてサークル名を考えたんですけど、面倒でそのまま「奇妙堂」でいきました(笑)

 ――面倒って(笑)コスプレ衣装作りを休止してから現在に至るまではどういう活動をされていたんです?

 (奇妙堂さん)
 コスプレ衣装を辞めた後は、3年くらいは衣装に使えるような樹脂石を制作してたかな?そしたらある時友人から「フィギュアやドール用の小物として使えるフェイクフードを作ってくれない?」って頼まれて。それが2013年だったかな。そこで手を出して気づけば…って感じですね。もう7年かあ(笑)

 ――そんなきっかけだったとは!しっかし姐御さんの偽食のクオリティはいつ見ても本当に凄いんですが、作る上でのこだわりのポイントとかここが特に大変なところってどういったとこです?

 (奇妙堂さん)
 大変なのは全部(笑)

 ただやっぱりフェイクフードというのは美味しく見えるってのが一番大事。なので制作時は、実物よりもあえて縮尺を変えてみたり、ちょっと大げさ感があるくらい美味しそうに見せたり……厳密には「本物をそのまま小さくして作ってない」んです。

 それと、私の作っているサイズって一般的に「ミニチュアフード」って呼ばれるような1/12スケールのものではなく、現物の1/3や1/4くらいのサイズだったりします。でもこのサイズって市販の食器類が無くて、器も一から作るかそれっぽいもので代用するんでそこが特に大変かな。

 ――確かにあのサイズ感はインパクトありますよね。やはり差別化するためにそうしたんですか?

 (奇妙堂さん)
 いや元々のきっかけの依頼されたサイズがそのサイズだっただけ(笑)

 ――なん……だと……?

 (奇妙堂さん)
 ただ、このスケール(1/3~1/4)って市販品も個人の方もあまり取り扱ってないみたいで。作ってみると私自身にも作りやすいサイズ感で、それが面白くてついつい作りこんじゃう……って感じ。

 ――確かに最近食系のガチャも結構出回るようになりましたね。ちなみに今まで作った中で一番反響があったものって何になります?

 (奇妙堂さん)
 私は今のところSNS関係で活動しているのは、メインはTwitterあとはInstagramを少々なんですけど、Twitterで今までで一番バズったのはみかん作りかな。筋の部分とかあれこれ工夫したんですけど、それにしてもすごい反響で。それと”あのもつ鍋”も反響凄かったんですよ。

――あのみかんの筋をティッシュで表現するのはなかなか思い浮かびませんよ!前にリクエストしたもつ鍋も正直無茶振りかなと思ってたんですが、キャベツやニラの作りも精巧でびっくりしました。あとやっぱりもつ鍋独特の鍋の形もすごくて

 (奇妙堂さん)
 鍋の部分の再現は苦労しましたねえ。でも自分だけだとどうしても作りやすいものに偏るんで、無茶振りされるくらいのリクエストの方が自分のスキルアップにもつながります。あれは本当に勉強になりました。

 ――そう言ってもらえて安心しました。で、そろそろ時間なので最後の質問を。ずばり奇妙堂さんにとって同人活動とこれから活動してみようかなって考えている方へアドバイスをお願いします!

 (奇妙堂さん)
 失敗も楽しむことですねえ。コスプレ衣装も、造形も、フェイクフードも最初から思う通りには仕上がらないんですよ。私も何度も何度も失敗したけど、それを踏まえて次に活かしました。そしてその工程を楽しむってのが大事かなって思います。まだまだ未熟ですけどね(笑)

 ――まさにトライアンドエラーですね。ありがとうございました!

 (奇妙堂さん)
 いえいえこちらこそ~

 というわけで今回は偽食作りの達人の奇妙堂さんのご紹介でした。この取材のあとにも作品を見せていただきましたが、どれも凄まじいクオリティのものばかり。奇妙堂さんと同じ愛知県名古屋市にあるフジパン株式会社の看板商品”ネオバターロール”では、籠やキーホルダータイプも別途で制作しネオバターロール独特の艶感を見事に再現。

 また家庭料理関係では鉄板の上に盛り付けた餃子の、焼きあがった餃子や鉄板の”シズル感”が鮮やかで見るだけでお腹が減ってしまいます。さらに奇妙堂の”偽食”を散りばめたオリジナルミニ四駆が登場したりと、その作品は食品の枠を超えたものとなっています。

 なお個人で活動されているため量産はなかなか難しいということで、活動拠点の名古屋をメインにハンドクラフトイベントへ出展したりTwitterを通じて知り合いになった企業やお店の方からの依頼で制作もされているそう。

 また栃木県栃木市にある、岩下食品株式会社が運営している「岩下の新生姜ミュージアム」では岩下の新生姜の偽食を展示されているようなので、お越しになった方はぜひご覧ください。

<取材協力>
奇妙堂・姐御さん(Twitter&Instagram:@kimyodou/HP:kimyodou.web.fc2.com
岩下食品株式会社 岩下和了さん(@shinshoga)

(向山純平)