エアバスは2020年7月19日(現地時間)、イギリスの新しい軍事通信衛星「スカイネット6A」の開発・製造を受注したと発表しました。2003年から運用中のスカイネット5シリーズより性能を向上させ、サイバー攻撃にも強くなるスカイネット6Aの打ち上げは、2025年を予定しています。

 スカイネットは、イギリスの軍事用通信衛星シリーズ。第1世代のスカイネット1Aは1969年11月22日アメリカのケープカナベラルから打ち上げられ、静止軌道からイギリス軍の通信を支えました。ペアを組むスカイネット1Bは1970年に打ち上げられましたが、静止遷移軌道から静止軌道に移動する際、エンジンの不調により軌道に到達せず、運用が断念されています。

 その後は1974年打ち上げのスカイネット2、1980年代後半から2001年にかけて6機が打ち上げられたスカイネット4を経て、現在は2007年から2012年にかけて打ち上げられた4機のスカイネット5により、イギリス軍の通信がサポートされています。この代替として2018年から計画されたのが、今回のスカイネット6でした。

 スカイネット6Aの製造をエアバスに発注するにあたり、イギリスのベン・ウォレス国防大臣は「新しく、そしてより先進的な衛星の機能は、各地に展開したイギリス軍の通信を長年にわたって支えてくれるでしょう。イギリスの防衛は、特にサイバー分野と宇宙分野で革新と変革を必要としています。この新しいスカイネット衛星のように一線級の装備は、現在から将来にわたって我々が直面する脅威から守ってくれるでしょう」との談話を発表しました。

 エアバスで防衛・宇宙部門のマネージング・ディレクタを務めるリチャード・フランクリン氏は「イギリス国防省と軍事衛星を通じて長年培ってきた歴史を継続できることになり、大変誇りに思っております。衛星の製造とサポートサービスは、イギリス政府と産業界との重要な枠組みであり、今回の契約はイギリス国防省と、このセクターにおける業界の主導的地位を支えるものです。エアバスは世界クラスの軍事通信サービスを軍に提供することに注力しており、イギリス国防省に新たなステップの変革をもたらすことを楽しみにしています」とコメントを発表しています。

 エアバスによるとスカイネット6Aは、エアバスの通信衛星プラットフォームである「ユーロスターNeo」をベースに開発される予定。最新のデジタル信号技術により、現用のスカイネット5シリーズと比較して大きな性能向上と妨害への耐性を獲得することになります。

 衛星の最終組み立てと試験は、イギリス宇宙庁などのサポートのもと、イギリスのオックスフォードシャーにあるエアバス事業所で実施される予定。打ち上げ予定は2025年で、最低運用年数は15年とされています。打ち上げの詳細日程は、今後の進捗に合わせて打ち上げ予定が近づいた時点でアナウンスされるとのことです。

<出典・引用>
エアバス ニュースリリース
イギリス国防省 ニュースリリース
Image:Airbus/CNES/ArianeSpace

(咲村珠樹)