初めての育児で自分をかまう余裕がないほど大変な時期、もし災害に見舞われたら?地震、豪雨、台風など、どこに住んでいても、いつ・誰が遭ってもおかしくありません。その時に備え、何を用意しておけばいいのでしょうか。そんな幼い子のいる方向けの防災ガイド「子どもと防災」「災害に備える 準備編」が、インターネットで公開されています。

■ 子どもと防災

 親子向けの防災ガイドを公開したのは、長野県佐久医師会・佐久市による「教えてドクター!」プロジェクトチーム。

 プロジェクトでは普段、医師をはじめとした医療関係者の監修による冊子制作やアプリの提供、さらにはSNSを通じて医療に関する情報発信を行っています。

 「教えてドクター」がSNS(Twitter:@oshietedoctor)および、ホームページ上(https://oshiete-dr.net/column/bousai/)で公開しているのは、佐久市で配布されている冊子「教えてドクター」からの抜粋。幼い子どもがいる親向けの情報が発信されています。

 まず1つめの「子どもと防災」では、避難時に持ち出すものが分かる「避難バッグチェックリスト」が紹介されています。いざという時、最低1週間しのぐための子どもにとって必要なものが列挙され、チェックできるようになっているのです。

 「避難バッグチェックリスト」となっていますが、実のところ災害時に1週間しのぐための必要な備蓄品リストとしての側面もあり、すぐ持ち出せないけど1週間分のミルクに必要な水の量「56リットル」なども参考として別枠で書かれています。

 そしてリストを見ていくと、オムツの場合は1週間で約100枚は必要と書かれています。新生児用ならば1パック分ですみますが、パンツタイプの子ならば2~3パック分になる計算。パンツタイプの子はある程度、使用回数が減ってる場合もありますが、いざ被災すると不安な気持ちから赤ちゃん返りし、回数が増える子も中にはいます。普段は週60枚くらいで足りたとしても、リストの通り余裕をもって100枚用意しておく方が安心でしょう。

 ほかにも、1週間分のミルクセットは粉ミルク900g×2缶や、おしりふき200枚に、避難先で必要になるだろう紙コップやスプーンといったものや着替え、いつもと異なる環境で不安になる気持ちをしずめるため、確かにあったらいいと思う「おもちゃ」まで、用意しておくグッズが細々と列記されています。

 こうしてリスト化されていると、何がどれくらい1週間で必要となるのか判断する目安になります。特に初めての子を迎えたパパ・ママ1年生といった人たちにとっては、避難バッグの中身やストックしておく量を判断する際の参考になるはずです。人によってはオムツが100枚では足りない、ということもあるでしょうが、その場合はリストを参考にしつつ、数量を自分向けに調整してみてください。

 また、普段は完全母乳や布オムツを使用している人の場合、いざという時用にストックすべき量や持ち物の参考になると思います。普段は母乳が出ても被災するとストレスなどで、母乳の出が悪くなる・とまることがあるため用意しておく必要があります。布オムツに関しても、被災した後では次にいつ洗濯できるか分からない状況となるため、こちらも必ず用意しておくべきアイテムです。

■ いざという時のために知っておくべき「情報」

 次に「災害に備える 準備編」では、日頃から備えておくべきことが書かれています。

 ハザードマップをダウンロード・印刷しておく、地域の避難所の確認、母子手帳やお薬手帳のコピー・写真を撮っておく、安否確認の方法を決めておく、など。これは基本的なことではあるのですが、あたりまえすぎて実は備えていない人が多い項目。また、普段から備えていても、保険証やお薬手帳などのコピーの情報が古いまま、ということもあります。基本だからこそ見直し、内容を更新するきっかけとしても目を通しておくといいでしょう。

 そして一番大切なのが「避難のタイミングを知る」こと。台風や水害などのニュースで「警戒レベル1」「警戒レベル5」といった区分を耳にする機会が増えていますが、実際どの警戒レベルで避難すればいいのか把握できていない方は少なくありません。この冊子では、子連れの場合「警戒レベル3(地元の自治体が避難準備・高齢者等避難開始を発令する目安)」で既に避難しておいた方がいいと記しています。

 とはいえ、実際には必ず警戒レベル1から順に発表されるわけではありません。時には事態が急変し、1から3、3からいきなり5という場合もあり得ます。地震とは別に、台風や大雨などは先に予測できる災害です。たとえ昼間に警戒レベル1だったとしても、時間がたつにつれさらに雨風が強まる予報であるならば、レベル3になるのを待たず明るいうちに避難しておく判断も必要です。特に幼い子が一緒の場合、暗くなっての移動は危険が伴います。避難は情報の入手をはじめ、とにかく「はやめはやめ」が肝心です。

■ 我が子を守るために

 実は筆者も2児の子をもつ母です。上の子がまだ2才だった2011年、東日本大震災に遭遇しました。住まいや地域(千葉県北西部)はそこまで被害を受けませんでしたが、それでも影響を受けたのが買い物。地域のお店では様々な品物が品切れとなり、特にオムツ、ナプキン、お尻ふき、さらには粉ミルクまでもがお店で手に入りづらい時期がしばらく続いたのです。

 品切れになった理由は、次にいつ手に入るか分からない、という不安からの買い占めと言われています。なんとか買えるようになったのが1~2週間後、普段通り買えるようになったのは、1か月ほど経ってからだったと記憶しています。なお、先述したもの含む一部の品以外はずっと普通に売られていました。

 私は震災の数日前に、たまたま特売オムツとおしりふきを大量買い(箱買い)していたので買いに行かずにしのげましたが、それがなかったら大変な事になっていたと思います。恐らく幼い子をかかえて、手に入るか入らないか分からない状況下で、開店前からお店の前に並ぶことになったと思うのです。

 このとき痛感したのが、被災するしないに関わらず、最低1週間はしのげる備蓄を常にしておく必要があるということ。直接被災してない場合でも「パニック心理による買い占め」という人災に備える必要があると考えるからです。震災の時しかり、新型コロナウイルス感染症に端を発した今年(2020年)2月末頃からの買い占め騒動しかり、歴史は繰り返されています。

 子どもはすぐ大きくなるので「サイズアウトして無駄にならないようオムツやミルクは必要分しか買いたくない」という気持ちも十分分かりますが、いざという時困るのは親ではなく子どもです。我が子を守るために大切なもの。そう割り切って、たとえ無駄になっても、リストを参考にストックしておくといいでしょう。

 さらにいえば、個人的考えですが、同じ内容の避難バッグ(備蓄セット)を2つ用意するとより良いと考えます。1つは家の中に保管、もう1つは家の外の倉庫などで“衛生が確保できる状態(専用ケースに入れて等)にして”の保管。どういう状況で逃げださなければならないか、その時にならないと分かりませんから。

<記事化協力>
子どもの病気とおうちケア「教えてドクター

(栗田まり子)