オランダのウィレム=アレクサンダー国王が2020年7月9日、フォルケル空軍基地でオランダ空軍F-16の訓練飛行に参加しました。国王は旅客機と軍用機のパイロットライセンスを所持しており、政府専用機を自ら操縦することもあります。

 オランダのウィレム=アレクサンダー国王は、王子時代に海軍に在籍し、フリゲートの乗組員としての軍歴がありますが、空への想いからKLMオランダ航空の飛行学校「KLMフライトアカデミー」に入校し、2001年にエアライン用のパイロットライセンスを取得しました。このほかに、1994年には軍用パイロットライセンスも取得しています。

 その後はライセンスを維持するため、国王としての公務の合間を縫って、KLM傘下の航空会社KLMシティホッパーでフォッカー70(退役済)や、2017年からはB737のゲストパイロットとして定期便に乗務しています。国王が乗務している!と乗客に気づかれたことは、まだないんだとか。

 政府専用機を自ら操縦して外訪することもあるというウィレム=アレクサンダー国王だけに、空軍基地の視察で戦闘機に乗らないわけはありません。F-16Dの後席に乗り、実際に訓練飛行を体験することになりました。

 国王が視察したフォルケル空軍基地はオランダ南部の北ブラバント州にあり、レーワルデン空軍基地と並んでオランダ空軍の戦闘機部隊がある基地。現在は第312飛行隊と第313飛行隊ががF-16を運用しています。基地のエンブレムには四方を向いた弓矢がデザインされており、常に臨戦態勢で警戒を怠らない、という意味が込められたもの。

 訓練に先立ち、国王もほかのパイロット達と同じく、飛行前のブリーフィングに出席します。第312飛行隊長ミチエル・ヴァン=デル=ステーグ中佐から、今日の訓練内容と天候状態などの注意を受け、F-16Dの後席に乗り込みます。

 F-16Dに同乗し、実際に飛行訓練を体験したウィレム=アレクサンダー国王。基地上空では地上の人々に手を振る余裕も。

 パイロットらとの交流では、オランダ空軍の現状についてもレクチャーを受けました。現在、オランダ空軍では老朽化が進むF-16をF-35Aに置き換える計画が進んでいます。空軍には3つの飛行隊に60機のF-16が在籍していますが、すでに一部は稼働状態にありません。

 新しいF-35Aは、2019年10月に実戦仕様の1号機がレーワルデン空軍基地に到着。まずはレーワルデン空軍基地の第322飛行隊が、最初にF-35Aへ機種改編を行ないます。

 2019年11月6日には、ウィレム=アレクサンダー国王がレーワルデン基地を視察。実際にF-35Aのコクピットに乗り込むなど、これからのオランダ空軍主力戦闘機について見識を深めています。


 現在、8機のF-35Aで機種転換訓練をしている第322飛行隊がF-35A飛行隊として生まれ変わるのは、2017年発注分の24機が納入完了となる2022年。この時、一部がフォルケル空軍基地の部隊に配属される予定です。

 オランダが発注したF-35Aが納入完了となり、すべての部隊で運用可能となるのは2024年の予定。それまでF-16はオランダ、そしてNATOでの任務に飛び続けることとなります。

<出典・引用>
オランダ王室 ニュースリリース
オランダ空軍 ニュースリリース
Image:オランダ国防省

(咲村珠樹)