イギリス空軍は2020年6月28日(現地時間)、ドイツ空軍などの戦闘機部隊らと北海南部からドイツ北部にかけての空域において、共同訓練「MAGDay」を実施したと発表しました。これはNATO加盟国の部隊間における相互運用性を高める訓練で、イギリス、ドイツ、アメリカの空中給油機を使い、参加各国の戦闘機が空中給油を行なっています。

 NATOは多くの国が加盟する同盟組織です。個々の国が独自に作戦運用する場合もありますが、多くの場合「NATO軍」として、複数の国が共同で任務遂行にあたるため、日頃から部隊間の交流は必要不可欠です。

 共同訓練「MAGDay」は、NATOに加盟する空軍部隊が相互運用性を高めるために実施する訓練の名称。訓練のホストを務めるのはドイツで、MAGは「多国籍航空集団(Multinational Air Group)」の頭文字をとった略称です。

 2020年は計4回のMAGDayが予定されており、1回の訓練は最大4週間で、準備と飛行訓練がそれぞれ2週ずつのスケジュール。2月にはドイツ北部のシュレースヴィヒ航空基地で、ハンガリーとチェコのJAS39グリペン戦闘機を招いての訓練が実施されました。

 6月に実施された今回の訓練に参加したのは、ドイツ側がネルフェニッヒ航空基地の第31戦術飛行隊「ベルケ」とラーゲ航空基地(ロストック)の第73戦術飛行隊「シュタインホフ」に所属するユーロファイターに、ビューヒェル航空基地の第33戦術飛行隊に所属するトーネード。イギリス側は、コニングスビー空軍基地から第XI(F)飛行隊のユーロファイター・タイフーンと、ブライズノートン空軍基地からのボイジャー(A330MRTT)空中給油・輸送機です。


 訓練にはイギリスとドイツのほか、アメリカとオランダのF-16、そしてスイスのF/A-18も参加。戦闘機以外にも空中給油機として、イギリスのボイジャーのほかドイツのA310MRTTとA400M、アメリカのKC-135も参加しています。北海上空で戦闘機は異なる機種からの空中給油を受け、ドイツ北部の訓練空域でさらなる訓練を実施しました。


 訓練に参加したイギリス空軍第XI(F)飛行隊のパイロットは「この共同訓練MAGDayの実施にあたっては、ヨーロッパやアメリカの関係者たちとの綿密な計画や調整が不可欠です。その結果、NATOの主要な同盟国との間で、多様な任務における相互運用性を磨き、連携を強化することができました。今回の訓練では5か国やら40機が参加しています。このような訓練を通じ、NATOのような同盟の一部として航空作戦を遂行する際の鍵となる、チームとしての協力作業を経験することができるのです」と、訓練の効用についてコメントしています。

 ドイツ空軍参謀総長のインゴ・ゲルハルツ中将は「MAGDayにより、ドイツ空軍がヨーロッパの同盟諸国やパートナー国との共同任務において、準備段階から肩を並べて取り組めるようになりました」とコメントし、この共同訓練が同盟国の実働部隊において果たす役割の大きさを強調しています。

 共同訓練の効用は、現場の兵士らが密接なコミュニケーションを重ね、お互いをよく知り、信頼関係を醸成することにあります。関係国が互いに国境を接するヨーロッパにおいて、それは非常に重要なことなのです。

<出典・引用>
イギリス空軍 ニュースリリース
Image:Crown Copyright 2020/オランダ空軍

(咲村珠樹)