海上自衛隊とアメリカ海軍太平洋艦隊は2020年6月23日、南シナ海で海上自衛隊の練習艦隊(練習艦かしま/しまゆき)と、アメリカ海軍の沿海域戦闘艦ガブリエル・ギフォーズが共同訓練を実施したと発表しました。3隻は隊列を組んでの戦術運動や、それに伴う通信訓練を行っています。

 海上自衛隊の練習艦隊は、第70期一般幹部候補生課程の修了者約155名(うち女性:約10名)を対象に、6月9日〜7月22日の44日間にわたって遠洋練習航海(令和2年度・前期)を実施しています。目的は、長期にわたる洋上生活や各種の訓練を通じて、部隊勤務に必要な基礎的知識や技能を習得させ、指揮統率の基本を体得させるとともに、他国との交流を通じて国内外に対する視野を広げ、将来の伸展性を有する初級幹部を育成すること。

 ただし今回の遠洋練習航海では、新型コロナウイルスの世界的流行を受け、通常ならば多くの寄港地で実施する交流行事をせず、補給のためにシンガポールのチャンギに寄港するだけとなりました。船は洋上に出ると、新型コロナウイルスなどの伝染性感染症が蔓延しやすい閉鎖空間となるため、新型コロナウイルス感染防止には神経を使っています。

 このため、南シナ海でアメリカ海軍の沿海域戦闘艦ガブリエル・ギフォーズ(LCS-10)と共同訓練を実施するのは、外国の部隊と交流する数少ない機会。実習幹部にとっては、これまでの訓練の成果を確認する貴重なものとなりました。

 沿海域戦闘艦ガブリエル・ギフォーズは、自由で開かれたインド太平洋地域の維持を目的とした定期哨戒のため、東南アジアの南シナ海周辺で活動中。練習艦かしま(TV-3508)と練習艦しまゆき(TV-3513)からなる海上自衛隊の練習艦隊が、ちょうどガブリエル・ギフォーズの哨戒区域を航行するため、今回の共同訓練が実現しました。

 ガブリエル・ギフォーズが属するアメリカ海軍第7遠征打撃群(ESG-7)司令官のフレッド・カチャー少将は「我々の友人や仲間と海でともに活動する機会は、我々が一体となる即応体制とパートナーシップ構築のため、非常に重要な機会です。海上自衛隊の皆さんと複合的な航海技術を磨くことで、自由で開かれたインド太平洋地域を維持しつつ、相互運用性と即応性を高めることができます」と、今回の訓練についてコメントしています。

 ガブリエル・ギフォーズのブルークルー(沿海域戦闘艦は乗組員のチームが複数存在し、定期的にチームごと交代して任務を遂行する)艦長、ダスティン・T・ロネロ中佐は「今回の共同訓練は海上自衛隊の実習幹部諸君と実施するため、特に価値のあるものです。彼らは将来、海のプロフェッショナルとして私たちと何年も一緒に活動するであろう存在であり、今のうちから開かれた海を理想とする同じ気持ちで一緒にスキルを磨くことで、複雑化する状況でも物事を簡単に進められるようになるでしょう」と、練習艦隊の実習幹部と訓練する意義を強調しています。

 海上自衛隊の練習艦隊司令官、八木浩二海将補は「実習幹部諸君は、基本的な海事技能を磨いただけでなく、アメリカ海軍との相互運用性を向上させることの重要性を学ぶことができました。また、今回の共同訓練がアメリカ海軍とのパートナーシップを強化し、この地域の平和と安定を促進するための基礎づくりに役立つことを、実習幹部諸君が理解してくれることを願っています。共同訓練の機会を提供していくれたガブリエル・ギフォーズの皆さんに感謝しています」とのコメントを発表しています。

 新型コロナウイルスの影響で、他国の部隊との交流が困難な形で実施されている2020年度の遠洋練習航海。今回のアメリカ海軍との共同訓練は、海上自衛隊の未来を担う実習幹部にとって、またとない機会になったようです。

<出典・引用>
海上自衛隊 プレスリリース
アメリカ太平洋艦隊 ニュースリリース
Image:U.S.Navy

(咲村珠樹)