「発達障害」のひとつと言われる注意欠陥多動性障害(ADHD)。大人になってから診断された一人のイラストレーターがまとめたADHDについての画像が多くの共感を呼んでいます。

 「私が思う生きにくいadhdまとめてみたから!!!!見て!!!!!!!!」と、心の叫びとともにツイッターに投稿したイラストレーターの塩沢しおさん。その4枚の画像には、塩沢さんが抱えている生きづらさが文章とイラストを交えて描かれています。

 1枚目には、注意力が散漫である事自体に自分で気付く事ができない状況と、整理整頓が極端にできずに散らかってしまう状況が。

 2枚目には、順序立てて選択するという、手順の組み立てと優先順位の付け方が苦手なために片付けが上手くいかない状況。そして頭の中も体も多動状態で、脳内に様々な考えがぞろぞろと浮かんでしまうがために、不注意が強く、順序立てて物事を考えるのが苦手で、取捨選択が上手くできない事を描いています。

 3枚目には、順序立てて考える事ができない結果、どういう状態に陥ってしまうかが描かれています。手順が多いものほど後回しにしてしまいがちな傾向から、短い時間の間に「快」を得られる「短期報酬」に繋がる楽な方向へと流れていってしまう事を説明。

 4枚目では、塩沢さん自身の多弁傾向について、何故そうなってしまうのかを説明しています。沈黙が苦手な塩沢さんは、頭の中の多動によってネガティブな思考が出てしまったり、発言する事に対する恐怖が裏返って出てしまう様です。

 このため、最初のうちはコミュニケーション力があると思われてしまいがちですが、思い付いた事や見た事感じた事をそのまま口に出してしまう事もあるため、発言内容が失礼なものになったり軽率になったりという事もある様子。考える事と発言する事のバランスが上手く取れないため、考える事にウエイトが行ってしまうと沈黙状態に、発言にウエイトが行ってしまうと多弁傾向に陥り、失言に繋がる事も。

 続くツイートでは、そんな自身が抱える状況をどう緩和しているかを2枚の画像にわたって解説しています。

 注意散漫なのは自覚をする事ができず、自己解決をする事ができないため、他人にその都度指摘してもらうなど。整理整頓が苦手ゆえの散らかりは、片付いた状態をツイッターにあげたり、定期的に誰かを家に呼ぶなどして片付けざるを得ない状況を作ったりする事で、汚部屋になる事を回避していたそう。

 優先順位付けとするべき事、しなくても良い事の取捨選択が難しい塩沢さんの場合、家事をする時は余計な思考が入り込む余地をなくすため、大音量で音楽を流して取り組むといった工夫をしているそう。

 また、買い物をする時は、ウインドウショッピングをすると必要か不要化の取捨選択が難しいために散財しがち。このため必要なものだけをピックアップして購入する、必要なものを都度メモに取るなどして、買い忘れを防止するといった方法を取っているそうです。

 この一連の内容に、「これ自分もだ」「当てはまること多い」といったリプライが続々。また「病院で診断を受けた方がいいような気がするけど診断を受ける事が恐い」といった声もちらほら……。

■ 「障害」という言葉に引っ張られ過ぎな日本人

 発達障害自体、その特性の強弱は大きなグラデーションを持つものですが、診断が付いている人はもちろん、診断がついていない人はそれ以上に生きづらさを感じている人が多いもの。

 また、診断がついても「障害」という言葉に引っ掛かりを感じている人も多く、「もし診断されたら自分は障害者になる……」という気持ちから、診察へ行く事、発達検査を受ける事を躊躇する人も多いのです。

 塩沢さんは、大人になってから診断を受けた時のことを、「生きづらかったのはこのせいだったのか、とホッとした気分でした。が、同時に『生まれ持った障害だったのか』とショックな気持ちと半々くらいでした。でもやっぱり『自分がダメな人間』だと強く思ってた気持ちが少し軽くなったのを覚えています」と語っています。

 やはり、「障害」という言葉に引っ掛かりを感じてしまうものですが、これは今までの日本の教育や一般的と言われている「定型発達の人」をベースにした社会の構造が「障害=ネガティブなもの」というイメージを植え付けているのです。

 塩沢さんも、小学生当時から覚えた違和感を中学の時以降、強く感じる様になったと言います。女子特有の友人の付き合い方や話す内容など、高校、専門学校と進むにつれて「普通」との逸脱を大きく感じるようになったと言います。そして、その「普通」にあわせる事を強いていた事も。

 「発達障害」と大きく一括りにまとめられているものの中には、正反対の特性だったり、似ているけどちょっと違うものだったり、一般社会で何とかなってはいても途方もなく疲れてしまったり、一般社会の中で働く事すらままならない特性の強さを持つ人がいたり……と、その程度も何もかも人によってかなりの差があります。

 そして、何より必要なのは、「まず自分自身を理解する」。これに尽きます。塩沢さんは成人の発達検査(WAIS)で、自分の強みと弱いところを知る事ができ、「皆が当たり前に出来てるから全部できないといけない」と思うのではなく「苦手な部分を認識して受け入れる」事を念頭に置いているそう。

 発達障害でも、耳から聞いた事を覚えるのが得意なタイプ、目で見た事を覚えるのが得意なタイプ、短期記憶が弱くても少しのヒントがあれば思い出せるタイプと色々です。発達検査ではこのような事も分かるので、弱点となっている部分を知る事は、生活上での失敗をカバーするためには大切な事。

■ 自分を知る事は周りにも助かる事

 現在は、大人の発達障害当事者の会や、発達障害の自助グループも各地で広がりを見せつつあります。その人たちの中には、やはり偏見を恐れて匿名でオンラインでのみ参加している、という人も少なくありません。

 しかし、発達障害自体は実はそれほど珍しいものではなく、大なり小なりの現れ方で特性を持っている人は存在しています。ちょっと癖が強かったり、こだわりが強かったり、おっちょこちょいだったり、忘れん坊だったり、没頭すると時間どころか食事すら忘れていたり……。ただ、上手い事それをカバーできるかどうか、世渡りがそれなりにできるかどうか、周りに大きな迷惑をかけるほどではなかったりなどで、「定型発達の世界」で何とかなっているだけだと考えられます。

 このため、発達障害と自分を知らないまま新卒で就職し、何度も同じところでつまずいて怒られてを繰り返した結果、うつ病という二次障害になってしまう人も。

 今ではADHD特有の、頭の中のとっ散らかっている状態を落ち着けることができる薬もいくつかできています。人によって効果があるかどうかは使ってみないと分からないところですが、その薬を使うためにも発達検査を受ける事は必要となります。

 自分のどこが弱いのか、何が強みになるかを知る事、そして適切かつ必要な工夫や補助をつけるために、まずは自分自身を知るところから始める必要があります。周りの目を気にしていたら、それに縛られて何もできなくなってしまいますから。

 そして、もし自分の子どもが発達障害かも……?と感じたら、障害という言葉の強さに惑わされず、偏見も雑音も一切無視して子ども用の発達検査を受けさせてあげてください。その方が、親にとっても「この子はこういう苦手があるけどここは伸びる部分なんだな」というのが分かって、心の荷が多少は下りると思います。二人の発達障害児の母である筆者がそうでしたから。

<記事化協力>
塩沢しおさん(@shiozawaowa)

(梓川みいな)