インターネットの発達とともに手を変え品を変え出てくる、コンピューターウイルス。最初はPCを内部から壊すものだったのが、今や個人情報を盗んで悪事を働くものへとなり、いたちごっこのような様相。そんな悪質なウイルスが具現化したような作品が話題を呼んでいます。

 「『90年代アニメに出てきそうなコンピューターウイルス』を作ってみました」と、その作品をツイッターに投稿したのは、現実とダークファンタジーが交錯するような創作物を手掛けている、同人サークル「黒の錬金術学会」の倉戸みとさん。

 そのツイートに添えられている写真に写っているのは、基板の上にねちゃ~っと貼りついて、一つの目がにらみつけている様にも見える、人間の内臓みたいな色や雰囲気のエイリアンの様な、謎の生き物みたいなもの。大きなウイルスの隣には、同じように一回り小さなウイルスが貼りついています。

 90年代のホラー映画や、アーケードのシューティングゲームの敵の様な様相に、見た人たちは様々な想像が掻き立てられているようです。中でも、ウルトラマンティガに出てくる怪獣「ビザーモ」を思い浮かべる人がどうやら多い様子。筆者は知らなかったのですが、検索で出てきた画像を見て、「手術後に取り出した内臓がドロドロしているみたいだな……」という印象を受けました……。耐性がない方は検索する際お気を付けて。

 他にも、エヴァンゲリオンの第11使徒を連想する人、様々なゲームの敵キャラを連想する人、ホラー映画やアニメの一場面を連想する人と、その捉え方は実に多様。ですが、一貫しているのは、グロっぽい雰囲気をまとっているものという印象。

 ゲーム脳な筆者、ちょうど基板の大きさがファミコンのカセットくらいに見えたので、ここからちょっとしたゲームのあらすじが思い浮かんでしまいました。昔はゲームのカセットを貸し借りするのが当たり前だった時代。貸し借りを繰り返しているうちにどこからともなく侵入してきたウイルスが基板に憑りつき、ゲームの内部を侵食してしまう……。主人公となるキャラはゲームの中へと入り、目玉であるコアを撃破すべく戦艦に乗り込み、戦いに挑む---。

 色々と妄想が捗ってしまいそうなこのディテール、作者の倉戸さんにお話を伺ってみたところ、いい感じのジャンク基板が出てきたので、何かの材料になると思って作ってみたとの事。大きさは筆者が見立てた通り、ファミコンカセットの大きさと大体同じくらいだとか。

 「コンピューターウイルスと呼ばれるわりに、昔のSFではウイルスではなく『粘菌』みたいなデザインが多かったので、バグ(虫)とウイルスの中間くらいの存在みたいな」と、このコンピューターウイルスの背景を語ってくださいました。確かに、昔のSFやホラー系に出てくる「怖いもの」は、妙に有機物的な生々しさがありましたよね。

 今でこそ、パソコンやスマホの脅威になっているものはこんな生々しいものではない認識ですが、80年代後半から90年代のSFやゲームに使われている敵には、生々しさを感じる有機物の様なものが多かったように思います。

 ちなみに、ウイルスのコア(?)となっている目玉は、以前他の作品を倉戸さんが作られた時のもので、100均で売られている半球状のクッションゴムの底に、白目部分を抜いた虹彩の部分をデザインして貼り付けたものを使っているそうです。

 さらに透明度を上げたいけどレジンで作るのが難しい人は、手芸店にある半球のアクリルパーツを使うとキレイに見えるのだとか。

 2日ほどかけて作られたというこの作品、公開した時の反応がバリエーション豊富で、倉戸さんも「たくさんの方から『私はこの作品を連想した』というリプライを頂き、そのバリエーションの多彩さは予想以上でした」とびっくりしていらっしゃる様子。

 一つの作品が多くの人の心を掴み、様々な反応を寄せてくるというのは、作家冥利に尽きますよね。

<記事化協力>
倉戸みとさん(@mitragyna)

(梓川みいな)