アメリカ海軍は2020年5月24日~25日、南シナ海において沿海域戦闘艦ガブリエル・ギフォーズが、シンガポール海軍のフリゲート、ステッドファストと共同訓練を実施したと27日(現地時間)に発表しました。この地域において進出を強めている中国の動きを牽制する狙いがあるとみられます。

 共同訓練に参加したアメリカ海軍のガブリエル・ギフォーズ(LCS-10)は、インディペンデンス級沿海域戦闘艦の5番艦。幅広い船体(後部飛行甲板の面積確保)とウォータージェット推進による高速性能を両立した、三胴船(トリマラン)のフォルムが特徴です。




 現在ガブリエル・ギフォーズは、西太平洋とインド洋を担当区域とする第7艦隊のうち、強襲揚陸艦アメリカ(LHA-6)を旗艦とする第7遠征打撃部隊(ESG 7)の第7駆逐隊(DESRON 7)に所属しており、主に東南アジアで活動しています。2020年4月2日にはマレー半島西部のアンダマン海で、外洋演習航海に出ていた海上自衛隊第6護衛隊の護衛艦てるづき(DD-116)と共同訓練を実施しました。



 今回、南シナ海でガブリエル・ギフォーズと共同訓練を実施したシンガポール海軍のステッドファスト(FFS-70)は、2008年に就役したフォーミダブル級フリゲートの3番艦。フランス海軍のラファイエット級フリゲートをベースにしており、優れたステルス性を有したミサイルフリゲートです。

 ガブリエル・ギフォーズとステッドファストは2日間にわたり、共に航行して通信や戦術運動の訓練を実施し、アメリカ、シンガポール両海軍における相互運用性と信頼構築に励みました。内容的には、4月に海上自衛隊のてるづきとガブリエル・ギフォーズが実施した共同訓練と変わりません。

 ガブリエル・ギフォーズのブルークルー(沿海域戦闘艦では色名が付けられた乗組員のチームが複数あり、一定期間ごとに交代して任務にあたる)で艦長を務めるダスティン・ロネロ中佐は「我々ガブリエル・ギフォーズのブルークルーにとっては、シンガポール海軍艦艇と洋上で共同訓練するのは初めてのことです。訓練では、双方の乗組員が高い戦術技量を見せてくれました。ステッドファストとの訓練は学ぶべきものが多く、それとともに海におけるプロフェッショナルな姿勢を共有することで、同盟関係をより強めてくれます」と訓練について総括しています。

 シンガポール海軍ステッドファスト艦長のカーリン・ソン中佐は「この洋上訓練は両国海軍にとって、プロとしての能力を磨き、総合運用性を強化する機会です。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大という困難な状況下で、訓練計画は(双方が集まる合同会議ではなく)バーチャルな状況で立案されましたが、長年にわたって築き上げてきた十分な相互理解のおかげで、作業は非常にスムーズなものでした」と、訓練に至るまでの過程を振り返ってコメントしています。

 訓練終了を受け、第7駆逐隊司令官のアン・マッキャン大佐は「洋上での共同訓練は、双方の能力を実践する機会であり、両国間の絆をさらに強化することにつながります。自由で開かれたインド太平洋地域を維持するためには、地域の同盟各国との連携が不可欠です」というコメントを発表しました。

 アメリカ海軍とシンガポール海軍の艦艇が共同訓練を実施するのは、2019年10月にグアム近海で実施された「パシフィック・グリフィン」以来。シンガポール海軍は、夏に予定されている環太平洋合同訓練(RIMPAC)にも参加を予定しています。

<出典・引用>
アメリカ海軍 ニュースリリース
Image:U.S.Navy

(咲村珠樹)