ノースロップ・グラマンは2020年5月21日(現地時間)、アメリカ海軍が進める小型高速攻撃兵器(Compact Rapid Attack Weapon)計画の一環として新しい超軽量魚雷(VLWT)を開発し、試験に成功したと発表しました。

 ノースロップ・グラマンは、吸収合併したウェスティングハウスから魚雷の開発・製造を受け継いできました。その歴史は第二次世界大戦中の1943年、イギリスから提供されたドイツのG7es電気推進魚雷を解析し、リバースエンジニアリングの手法で開発されたMk18魚雷から始まります。

 現在、ノースロップ・グラマンはMk54短魚雷と、Mk48大型誘導魚雷の目標探知装置を供給しています。今回の超軽量魚雷では、ペンシルベニア州立大学応用研究所(PSU-ARL)が2016年に開発し、各メーカーに公開した基礎設計に基づき、開発が行われました。


 ノースロップ・グラマンの開発チームは、基礎設計にあった高コストの部品を見直し、より低価格で信頼性と生産性を確保したものに交換。ペンシルベニア州立大学応用研究所が作った試験装置で、性能が担保されていることを確認したと言います。

 魚雷開発チームを率いるノースロップ・グラマンのデビッド・ポーター氏は「魚雷のノーズセクションが最初の試験に成功したことは、ノースロップ・グラマンの低コスト設計が確かなものであることを示しており、実戦での性能を犠牲にすることなく、大幅にコストを低減することができます」と、今回の試験成功を受けてコメントを発表しています。

 ノースロップ・グラマンが開発した魚雷のノーズセクションは、コロラド州にあるバーバー・ニコルズが開発した、保管化学エネルギー推進システム(Stored Chemical Energy Propulsion System=SCEPS)と呼ばれる閉サイクル蒸気タービンを採用した推進部と組み合わされます。閉サイクス推進システムは、水圧により排気が不可能な深海では必要不可欠なものであり、潜水艦用とともに対潜水艦用魚雷に使用されているものです。

 ノースロップ・グラマンで海面下システム部門を統括する、アラン・ライトル副社長は「先進の海面下戦闘能力に関する国のニーズは、現在これまでにないほど高まっています。私たちは、海中での破壊力を高め、マルチな戦闘プラットフォーム運用における革新的概念をもたらす、この超軽量魚雷(Very LightWeight Torpedo=VLWT)の配備でサポートする用意があります」とコメントしています。

 ノースロップ・グラマンでは、この超軽量魚雷の生産を6つの州(カリフォルニア州、ユタ州、ミネソタ州、コロラド州、ウエストバージニア州、メリーランド州)で分散して行う計画とのことです。

<出典・引用>
ノースロップ・グラマン ニュースリリース
Image:Northrop Grumman/U.S.Navy

(咲村珠樹)