艦内で新型コロナウイルスの感染が拡大し、グアムに寄港して医療支援を受けたアメリカ海軍の空母セオドア・ルーズベルト(CVN-71)。乗組員の交代が終わり、いよいよ戦列に復帰するためのプロセスの一環として、航海中を想定した様々な模擬訓練を実施しました。

 艦艇が実戦状態に復帰するには、乗組員たちが航海中に発生する様々な事象に的確に対応できるか、その能力を問われます。港に接岸した状態で実施する、これらの緊急事態に対処する模擬訓練をアメリカ海軍では「ファストクルーズ(Fast Cruise)」と呼んでいます。

 陸上と違い、海の上では素早い救援は期待できず、艦単独で事態に対処することが求められます。乗組員は定められた手順に従い、緊急事態に対応できるかが確認されました。

 たとえば、艦内で怪我人が発生し、治療のため医療設備の整った場所へ移送する「メディバック(MedEvac=Medical Evacuation)」と呼ばれる患者後送訓練では、艦内の医務室で応急処置を行ない、患者の容体を移送が可能な安定した状態にしてから、ヘリコプターに乗せるまでの手順が確認されました。


 新たに艦長として着任したカルロス・サルディエッロ大佐は「ファストクルーズは、船と乗組員にとって重要な節目となります。乗組員らは船のシステムを個々に確認すると同時に、すべてを統合してセオドア・ルーズベルトが海へ復帰できることを証明することができました」と、この模擬訓練を総括しています。

 訓練の大枠は、これまでと同じ手順で実施されましたが、新型コロナウイルスの感染拡大を教訓として、一部が手直しされました。乗組員はそれぞれ、マスクやフェイスシールドなどの個人防護具(PPE)を使用し、十分な対人間隔の確保(ソーシャル・ディスタンシング)に努めて課業にあたっています。


 艦の運用手順を確認するファストクルーズを終えると、今度は艦載機(CAW-11)を空母に戻すための運用訓練(CQ)のプロセスが始まります。この訓練に際し、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、直接訓練とは関係のない部署の乗組員は乗艦せず、陸上で隔離状態におかれることとなりました。

 戦列に復帰するまでは乗組員が全員乗艦する事態を避け、新型コロナウイルスの感染拡大リスクを最小化する措置をとりつつ、空母セオドア・ルーズベルトは最新の注意を払ってすべてのプロセスを進めていきます。

<出典・引用>
アメリカ海軍 ニュースリリース
Image:U.S.Navy

(咲村珠樹)