近ごろ、聴覚過敏や喘息にアレルギーなど「見えない困り事・見えない障害」を、「見える化」する取り組みが少しずつ浸透していっています。主な方法は、聴覚過敏マークを持ち物のどこかに貼り付ける、喘息マークを記したバッジを身につける、などです。

 しかし、折角身につけていても付けるものが小物類とあって、気づかれずに見過ごされることも。そんな悩みを解決してくれるアイデアがツイッターに投稿されています。

 アイデアをツイッターに投稿したのは、言語聴覚士として主に聞こえの分野で活動をしている杏奈さん。

「100均の転写シールで、布マスクに『聴覚過敏マーク』をつけてみました。視界に必ず入るのでアピール力が強くておすすめです。ヘルプマークや難聴マークなどでもいけるし、子ども達の好きなキャラクターを転写してもいいかも。作り方をのせておきます」

 と、無地の布マスクに転写シールでプリントして付けた聴覚保護マークの写真と、詳しい作り方のリンクを添えて投稿しています。

https://twitter.com/kikoelife/status/1251136078414675974

 杏奈さんは、聴覚障害の当事者を支える団体「KIKOE LIFE」の情報発信者として、サイト運営やツイッター・インスタグラムで聴覚に関する困り事がある人など向けに情報発信を行っています。

 今回のツイートも、「カバンにつけるだけでは、なかなか気づいてもらいにくいなと感じていた折、マスクは視界に必ず入るのでマスクをアピール媒体にすれば、周囲に理解してほしいことや伝えたいことを気づいてもらいやすくなるのではと思ったのがきっかけです」と、取材に答えています。


■ 作り方

 「KIKOE LIFE」のサイト内で、詳しい作り方が掲載されているので、ざっくりご紹介。

・立体型の無地の布マスクをまず用意します。ない場合は型紙に沿って切って1か所縫うだけでできる、自衛隊式布マスクの作り方を「陸上自衛隊 第12旅団」のツイートを引用して紹介しています。

・転写するデザインを決めます。「KIKOE LIFE」の記事内では、転写シールの大きさに合わせて「聴覚保護マーク」やヘルプマークを並べています(※ヘルプマークの扱いについては、著作権が東京都に帰属とともに、商標登録も行っていますので、必ずデザインは都が指定したものをそのまま使用してください。個人利用については、印刷などしての利用はOKですが、営利目的の場合は東京都への届け出が必要です)。

・転写シールは100均で販売されているもので充分OK。ただし、デザインしたいマークの大きさと転写シールの大きさが釣り合うように、また布マスクの大きさからはみ出ない程度に合わせましょう。

・家庭用インクジェットプリンタで印刷し、貼りたい画像を2~3mmほどの余裕をもって切り抜きます。印刷時、転写シートの説明書はよく読んでね!

・転写をキレイに行うコツは、柔らかいアイロン台で行わずに硬い板などの上で行う事。アイロン台の裏側や、板などの上に新聞紙などを敷いて、スチームなしで170度に設定。しっかり圧をかけて行うとキレイに転写できます。

・転写後、熱が取れたら台紙を剥がして出来上がり。

■ アレルギーや喘息の子どもにも

 筆者個人的には、花粉症の時期にこのアイディアを使うと良さそうかな、と思いました。何せ、自分が結構な重度の花粉症患者なので……。“花粉症です缶バッジ”をカバンのベルトに付け、肩部分にとどまるようにしてアピールしています。

 そして、喘息やアレルギーがある子ども用に、マークをマスクに転写するのはとても良いのではないでしょうか?少なくとも1年は、人がいるところにいる時はマスクを外せない状況が続くものと思われます。

 緊急事態宣言が解除になったからといって、新型コロナウイルスは完全収束宣言が出されない限り、どこに、誰に潜んでいるか分かりません。誰かと接触する機会がある人は全員もれなく、無症状でもウイルスを保持している可能性が高いと思った方がいい状態。学校や園が再開し、学童保育や一時預かりなどもマスク必須と考えると、子どもたちの状態を端的に可視化できるマークをマスクに付けておくのは、アレルギーの事故などを予防するのに一役買いそうです。

 ただ、気を付けるべき点がひとつ。人気キャラクターやお気に入りのキャラクターの転写をして子どもに付けさせた場合、幼児などは羨ましがったり、大人が見えないところでマスクの交換をして遊ぶ可能性もあります。そうした危険性を考え、キャラクターを併用する場合は必ず、他の子と交換しないように注意喚起のマークの大きさを優先し、キャラクターの使用は小さめにとどめておく方がいいかもしれません。子どもに対しても、分かりやすく丁寧に説明をしないと、子ども同士でウイルスの移し合いになる恐れがあります。

 大人から子どもまで幅広い世代で「見えない困りごとを見える」ためのマークを、顔という、恐らく殆どの人がまず最初に見る部分に付けるのは、非常に分かりやすく有益であると思います。本来、布マスクは「自分が人に移さない」ために着用するもの。他人の飛沫などを防御するものではないという事を念頭に置き、現時点では、人と接触する機会がある人全員が「他の人に迷惑をかけないように」着用するものという観念のもと、困り事の可視化となるオプションを付けると考えてくださいね。

<記事化協力>
杏奈@kikoelifeさん(@kikoelife)

<参考>
東京都福祉保健局|障害者|障害者施策|ヘルプマーク

(梓川みいな/正看護師)