NASAは2020年4月4日(現地時間)、フロリダ州のケネディ宇宙センターで今夏の打ち上げを目指して最終組み立てが続く火星ローバー「パーセベランス」に、6つの走行用車輪と着陸用パラシュートが装着されたと発表しました。打ち上げに向け、作業は順調に進んでいます。

 2020年7月の打ち上げを目標に、準備作業が続けられている火星探査機「Mars 2020」。そのローバー「パーセベランス」は、火星表面で生命活動の痕跡を探るとともに、将来計画されている有人火星探査への基礎調査も行います。

 火星表面での移動を担うのが6つの車輪。それぞれ独立したモーター(インホイールモーター)を備え、大きなサスペンションストロークで不正地での走破性を高めています。

 タイヤは火星表面の気圧が低いことと、パンクするリスクを考え空気の入っていないもの。タイヤパターンは基本設計を同じくするキュリオシティ(2012年8月から活動中)が山形ギザギザなのに対し、横方向へのリブが配されたシンプルなものになっています。

 これは2017年、キュリオシティがゴツゴツした岩がちな場所を走行した際、トレッドパターンがちぎれてしまった(タイヤ全体に及ぶ破損はなし)という経験に根差したもの。幾度となく繰り返される「自撮り」によって、タイヤの損傷を確認できたのですが、お陰でより耐久性の高い構造へと変化したわけです。

 2019年12月にローバーの走行試験が行われましたが、これはスペア用の車輪とモーターを使ったもの。今回の最終組み立て工程で、降下ステージへの格納状態にセットされたパーセベランスに、実際に火星で使われる車輪が初めてセットされました。

 タイヤには静電気による異物の付着を防ぐため、打ち上げ直前にロケットのペイロードフェアリングへ収納されるまでは、銀色の帯電防止カバーが装着されます。

 パーセベランスを火星表面に送り届けるため、降下ステージを火星大気圏で減速させるパラシュートは、地球に比べて大気密度の低い火星に対応するよう大きめに作られています。材質はナイロン、帝人のアラミド繊維「テクノーラ」、デュポンのアラミド繊維「ケブラー」が使用されており、直径50㎝の筒に収納されていますが、高度1万1000mで展開すると直径21.5mの大きさになり、1トンあまりの降下ステージをマッハ1.7から時速320kmまで減速(最終減速は逆噴射による)させます。

 新型コロナウイルスが猛威を振るっているアメリカですが、現在のところ2020年7月17日~8月5日の打ち上げスケジュールは変更なく進められています。惑星探査などのミッションでは、地球と目標となる天体の位置関係から、最も効率の良い飛行が可能になる打ち上げスケジュールが設定されるため、タイミングを逃がすと年単位(場合によっては10年単位)で遅延が発生してしまいます。夏に無事打ち上げられること祈りつつ、関係者は準備を進めます。

<出典・引用>
NASA ニュースリリース
Image:NASA/JPL-Caltech

(咲村珠樹)