ソフトバンクが出資する衛星インターネット通信会社OneWebは、同社のインターネット中継衛星の第3陣、計34機を2020年3月21日(現地時間)にカザフスタンのバイコヌール宇宙基地から打ち上げ、成功したと発表しました。これで打ち上げられた衛星は74機になります。

 OneWebは、地球周回軌道に配置された600機以上の人工衛星ネットワークにより、世界中のどこからでもインターネットを利用できるようにするサービス。同種のサービスは、スペースXによる「スターリンク(StarLink)」など複数の企業が参入しており、独自に人工衛星ネットワークを構築しています。

 今回の打ち上げは、OneWebにとって3回目のもの。すでに2019年2月28日に、打ち上げテストを兼ねた第1陣の6機がフランス領ギアナからソユーズSTロケットで、そして2020年2月7日には、バイコヌール宇宙基地からソユーズ2.1bロケットで第2陣の34機が打ち上げられています。

 人工衛星本体の大きさは、一辺が1m程度のもの。これをロケットのペイロードフェアリングに収まるよう、積み重ねて収納されています。今回の打ち上げに際しては、1965年3月18日に人類初の船外活動(宇宙遊泳)を行った故アレクセイ・レオーノフ氏にちなむミッションパッチが作られました。



 アメリカのフロリダ州で製造され、コンテナに詰め込まれた衛星が、バイコヌールに到着したのは2020年2月25日のこと。ヴォルガ・ドニエプル航空のAn-124貨物機で空輸され、バイコヌール宇宙基地まではトレーラーに積載されて陸送されました。

 ペイロードフェアリングに納められた衛星と、ロケットの組み立てが行われます。今回の打ち上げでは、発射施設を管理するロシアのロスコスモス(ロシア宇宙庁)と、ロスコスモスの関連会社でロケット打ち上げビジネスを展開するグラフコスモス、フランスのアリアンスペースなどが共同で実施するため、ロケットには各社のロゴが並びました。


 ロケット組み立て棟では、2020年4月9日に打ち上げ予定のソユーズMS-16(ロシアのイヴァニシン宇宙飛行士、ヴァグナー宇宙飛行士、NASAのキャシディ宇宙飛行士が搭乗予定)用のロケットも並行して組み立てが進んでいます。ロシアやカザフスタンでは新型コロナウイルスの影響が少ないため、宇宙関連のミッションも予定通り進んでいますが、宇宙飛行士の記者会見を含むメディアの取材対応は、新型コロナウイルス感染を防ぐために実施されていません。

 ロールアウトしたロケットが、発射台に据え付けられます。発射台での試験を済ませ、静かに打ち上げの時を待ちます。




 ソユーズロケットはモスクワ時間の3月21日20時6分58秒に、打ち上げられました。打ち上げからおよそ3時間45分後、衛星は高度450kmの初期軌道に投入。打ち上げは成功しました。




 OneWebのエイドリアン・ステッケルCEOは「私たちは、2020年において大きく前進したことを誇りに思うとともに、このミッションに関係した全ての企業、人々に感謝したいと思います。世界的なCOVID-19(新型コロナウイルス肺炎)の感染拡大により、多くの人々がリモートワークを強いられている現状を目の当たりにして、世界のどこからでもインターネットにアクセスする手段が必要だと、より一層強く感じました」と、現在の状況に言及し、もはやインターネットが必要不可欠なライフラインであることについてもコメントしています。

 打ち上げられた衛星群は、それぞれ起動試験を行い、性能がチェックされます。今後衛星群は、OneWebの衛星インターネット接続サービスに備えて、高度1200kmの軌道へと移動する予定です。

<出典・引用>
OneWeb プレスリリース
ロスコスモス ニュースリリース
アリアンスペース ニュースリリース
グラフコスモス ニュースリリース
Image:OneWeb/Roscosmos/Airbus/Arianespace/OneWeb Satellites

(咲村珠樹)