1000年以上前からある古代日本の乳製品「蘇(そ)」が話題です。しかし、その作り方は牛乳を何時間も煮詰めて水分を飛ばすという大変なもの。それを電子レンジでお手軽かつ短時間で作れるレシピがTwitterとYouTubeで公開され、話題となっています。

 奈良・平安時代に、貴族たちの滋養食として食べられていたという蘇。984(永観2)年に丹波康頼によって編まれた、現存する日本最古の医学書「伊心方(半井家に伝来した写本は国宝に指定)」にも「五臓(肺臓・心臓・膵臓・肝臓・腎臓)の気を補給し、大腸を良くし、口中の潰瘍を治す主治食(意訳)」とあり、常食すれば筋肉増強や肌にツヤを与えるという美容面の効能もうたわれています。

 平安時代の「延喜式」や「政事要略」に記された、その基本的な作り方は牛乳を丹念にコトコト煮詰めて水分を飛ばし、乳成分を濃縮するという、単純だけど何時間もかかるもの。沸騰させすぎると、乳たんぱくと乳脂肪の成分が固まって(これを「ラムスデン現象」といいます)鍋肌に焦げ付くので、火加減を調節して混ぜ続けなければなりません。これが結構地味でつらいんですよね。

 しかし、これを電子レンジを使ってお手軽な時短レシピにしてくれたのが、作家兼名古屋めし専門料理研究家のSwindさん。ご自身のTwitterアカウント(@swind_prv)とYouTubeチャンネルで、その作り方を公開してくれています。

 用意するのはスープ用の広めのお皿。これに牛乳300mlを入れ、ラップをせずに550Wで10分加熱。

 一旦かき混ぜ、さらに550Wで10分加熱します。この時、表面に張った膜(牛乳の水分が飛ばされ、乳たんぱくが乳脂肪を巻き込んで凝固したもの)は皿肌にこびりつかないよう、真ん中に寄せておくのがコツ。


 2回目の加熱が終わったら再びかき混ぜ、固まりつつある部分を真ん中に寄せ集めておきます。そして今度は、出力を落とした解凍モード(作例では190W)で10分加熱。

 だいぶ乳成分が凝縮し、クリーム色になってきました。またかき混ぜて固まった分を真ん中に寄せ、仕上げに解凍モード(190W)で再加熱。ここでは水分が蒸発して焦げ付きやすくなるので、様子を見守りながら「シュー」という蒸発する音が聞こえたらすぐに止めてください。最後は固まった分をラップにまとめ、冷蔵庫で冷やせば完成。

 Swindさんによれば、ご家庭のレンジの出力によって加熱時間が変わるので、加熱の様子を見ながら調整してみてください、とのこと。また、お皿に対して牛乳の量が多すぎる(水深が深い)と、突沸現象により吹きこぼれが発生するので注意が必要です。

 電子レンジは水分子に作用するので、ガス火と違って温度が上がりすぎず、ずっとかき混ぜる必要がないのが楽チンですね。加熱時間はレンジの出力のほか、牛乳を張った表面積と深さの関係によって水分の蒸発しやすさが変わるので、使う電子レンジと食器によって加熱時間や回数の調整をした方がいいかもしれません。

<記事化協力>
Swindさん(@swind_prv)

(咲村珠樹)