アメリカ空軍は2020年2月18日(現地時間)、コリンズ・エアロスペース、ロッキード・マーティンと連名で、新型光学センサーSYERS-2Cを装備したU-2高高度偵察機の試験飛行プログラムが無事終了したと発表しました。

 1950年代に就役したU-2は、ケリー・ジョンソン率いるロッキードのプロジェクトチーム「スカンクワークス」によって生み出された偵察機。高度2万m以上を長時間にわたって飛行し、地上の偵察を行います。

 就役から60年以上経過し、RQ-4などの無人偵察機が使われるようになっても、有人機によるきめ細かな偵察は戦略上不可欠。このため、エンジンや偵察機器などをアップグレードしながら現役にとどまってきました。現在の最新型はGPS受信機を備えたU-2Sです。

 U-2の主な偵察装備は、光学センサーと合成開口レーダー。今回の改修では、光学センサーが最新のSYERS-2Cにアップグレードされました。

 SYERS-2Cはコリンズ・エアロスペースが開発した、様々な波長の光で映像データを取得するマルチバンド光学センサーの最新型。SYERS-2シリーズはアメリカの光学偵察衛星にも採用されており、U-2では衛星軌道(平均軌道高度425km)よりはるかに近い距離で使用することで、非常に高精細なデータを得ることができます。

 コリンズ・エアロスペースのISR(Intelligence Surveillance Reconnaissance=偵察情報収集活動)・宇宙事業ゼネラル・マネージャのケビン・ラフテリー副社長は「SYERS-2Cは空軍にとって大きな前進をもたらします。高性能で熟成されたシステムにより、将来の戦場に確固たる新しい能力をもたらしてくれるでしょう」とコメントしています。


 ロッキード「スカンクワークス」のアイリーン・ヘレイU-2プログラム・ディレクタは「SYERS-2Cセンサーは最上級のISRセンサーであり、U-2ドラゴンレディに装備されることで大きくU-2の能力を拡大し、比類なき戦略的情報をもたらしてくれるでしょう」とのコメントを発表しています。

 テロとの戦いの一環では中東へも派遣され、アメリカ軍の進出した場所で目となり耳となって活動するU-2。今回の偵察装備改修で、まだまだ第一線にとどまりそうです。

<出典・引用>
コリンズ・エアロスペース ニュースリリース
ロッキード・マーティン ニュースリリース
Image:USAF/Lockheed Martin/Collins Aerospace

(咲村珠樹)