2016年に発売された「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ」(通称:ファミコンミニ)に続く形で、往年の名機たちが次々とミニゲーム機化されていますが、2019年10月には株式会社HAL研究所から、PasocomMini PC-8001/PCG8100が発売。そして突如、レトロPC・ゲーム専売店BEEP専売品として、パッケージ版の新作ゲーム「Newシティヒーロー」の発売が発表されました。まさかの新作!

 そこで、ゲーム開発者に直撃インタビューしてみました。

■ ビッグネーム四人衆、集結

 「Newシティヒーロー」は、名作ゲーム「ハイドライド」シリーズや「アンデッドライン」などビッグタイトルを代表作に持つ内藤時浩さんが製作総指揮・プログラミングを担当。「悪のボスと猫。」「魔法少女は笑わない(まほわら)」が人気の漫画家のボマーンさんがキャラクターデザインを担当。「サイレントメビウス」「ふしぎの海のナディア(ゲーム版)」「プリンセスメーカー」の作曲などで有名な梶原正裕さんが作曲・効果音を。さらに、アニメパターンの追加や修正を、「マイコンBASICマガジン」表紙絵担当であるしおQさんの4名で作り上げたもの。

 分かる人には分かる、レジェンド級の4名が集結したのは、内藤さんの昔の作品が原点だったそうです。

■ 「お蔵入りをどうにかして復活させたい!」

 この数奇な運命を経て出来上がった“新作レトロゲーム”が、一体どうして販売という話にまで繋がったのかを、内藤さんに直撃してみました。

内藤さん:「最初、80mk2会(※)のメンバーが私が持っていた大昔に制作したゲームのアセンブルリストから、実際に動くまでに復刻させたのが、Newシティヒーローの制作のきっかけです」

(※)PC-8001mkII本体や周辺機器、自作ゲームや自作の何かを持ちより、その場で遊び倒したり突然起こる故障に対応したり、マシン言語が分かる人しか通じない話など、ディープなマニアの交流会として2015年に発足し、現在も続いている会

内藤さん:「このゲーム、すごく基本アイディアは良かったのですが、全然作り込みが足りない。これはあかん、若いときの内藤は何をやってんだ、作り直したいなーとツイートしたのが最初でした」

https://twitter.com/tokihiro_naito/status/495875421007650816

 ―― ツイートをたどってみるとこの話が一番最初に出たのが、2014年のことなんですね。

内藤さん:「で、そのツイートの翌日、会社に行くと、私の机の上にPC-8001とPCG8100がポンッと置いてあるではありませんか。これ、後から聞いたのですが当時のBeep店長、現エムツー所属の駒林名人(駒林 貴行さん)が、内藤にと持ってきたヤツらしいのです。そこで私は権利関係の問題でお蔵入りとなったタイトル、後のNewシティヒーローの制作に着手を始めました」

 ―― 駒林さんからの無言の圧のようですね……。

内藤さん:「(PC-8001が現役)当時のゲーム開発ならまだしも、プログラムは作れてもサウンドセンスもなければ、デザインを今風に作る技量もなく、これは困ったなー、と呟いていたら、『サウンドなら私が作りますよ』と梶原さんが声をかけてくれて。これは嬉しかったですね」

 ―― レジェンドがレジェンドに協力していく……。昔ではなかなかできない話ですよね……。

内藤さん:「続いてデザイナーを募集していたのですが、こちらは立候補が来ない。ふと、その時、PC-8001でまほわらをゲーム化してる人がいるじゃないですか。それがボマーンさんでした。原画と作画をお願いしますとお願いしたところ、サクッと快諾してくれました。後から聞いたら、これは私がやるしかないと運命的なものを感じたとか感じなかったとか」

 ――ボマーンさん、自作漫画のキャラクターでPC-8001のゲーム作っていたんですか!しかもキャラクターグラフィックスで……。ボマーンさんがPC-8001を触っていなければこのゲームも成り立たなかった、と……。最初はこの3人でゲーム開発を続けていたそうでしたが、ボマーンさんの本業である漫画の方が多忙に。ツイッターで「悪のボスと猫。」が大ヒットしましたもんね。

内藤さん:「多忙になったボマーンさんが自ら作画手伝いで引き込んだのがしおQさんになります。こうしてNewシティヒーロー開発四人衆は生まれました」

■ 本業の傍らでコツコツと制作、そしてパッケージまで出来上がり……

 ―― 2018年の80mk2会には完成していて、開催時に試遊に持って行ったんですよね。

内藤さん:「最初は80mk2会のメンバーにこんなんできましたと、公表するだけのつもりだったんです。ですが、出来が良くて欲しいという人がたくさん出てきて、一般配布を開始して。そうこう1年ぐらいしたところで、Beepさんがパッケージ販売しませんかと、むこうからお声がかかりました」

 ―― しかし実機で遊ぶとなると販売するにはさすがに敷居が高いですよね。当時、PasocomMini PC-8001が開発中だったとか。

内藤さん:「そうなんです。そこでHAL研さんにもオファーしたのですが、体よく断られましたけどね、その時の断られ方が『Beepさんから売ればいいやん』だったので、もしかしたらここから繋がったのかもしれません」

https://twitter.com/tokihiro_naito/status/1008169982314729472

 ―― もしかしたら、HAL研さんのどなたかお偉い方がBeepさんに話を持って行ったのかも、ってあり得なくないですね。HAL研さんも、既に収録タイトルはなじみのタイトル路線で行こうと計画していた可能性もありますもんね。ところで、今後Beepさん以外での販売とかは特にお考えではないですか?例えば、ニンテンドースイッチとか。

内藤さん:「移植検討は全く考えていないです。こんなゲーム、今どきのゲーム機やPCだったら動いて当然です。何の驚きも新しさも感じられません。これは1979年当時のPCで動くところに価値があるのです(キッパリ)」

 ―― そうそう、一部の方面からは、「ハイドライドシリーズの続きはマダ~?」などという声が聞こえてきますが、実際開発とかってどうでしょう??

内藤さん:「ハイドライドのことは権利を保有するD4Eさんにお問い合わせください」

 ―― たしかに。今回はありがとうございました。

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 PasocomMini PC-8001は、N-BASICが動くPC-8001エミュレータで、16本のゲームも同梱されているという、実際に遊べるだけではなくプログラムを作ることもできるミニPC。同梱のゲーム自体もPC-8001が現役当時のゲームセンターを賑わせていたアーケードゲーム風の移植タイトルが多いというのは、やはりその頃に青春をかけた年代を意識してのものでしょう。

 それにしても、Beepさんの方から「パッケージ販売しませんか」と、声がかかっていたとは。Newシティヒーローは2月1日からBeepさんより予約受付を開始。価格は5280円(税込み)で、付属品として特製紙パッケージ、ダウンロードカード、オリジナルサウンドトラックCD、マニュアル、そして何故かカセットテープ(A面:CDと同じくサントラ収録・B面:ブランク)と、キャンペーン応募カード(購入から1年有効)が同梱。ただ、パッケージ構成は現段階では未定ですが発売は決定しています。2020年3月27日より順次発送となります。

https://twitter.com/tokihiro_naito/status/1223826020689530881

<取材協力>
内藤時浩さん(@tokihiro_naito)

(梓川みいな)