欧州宇宙機関(ESA)とロシア宇宙庁(ロスコスモス)共同の火星探査計画ExoMarsで、火星表面を探査する無人探査車(ローバー)「ロザリンド・フランクリン」が、フランスでの宇宙環境試験を終了したとESAが2020年1月16日(現地時間)に発表しました。

 火星探査計画「ExoMars」は、火星の大気の状態と火星表面の探査を通じ、火星に関する知見の収集と生命の痕跡を探るヨーロッパとロシアのプロジェクト。すでに第1陣として、火星の大気を観測するExoMarsガス・オービターが2016年に火星周回軌道に入り、観測を行っています。


 オービターに続いて、火星の地表面に降りて岩石などの探査を行う探査車(ローバー)が、2020年にカザフスタンのバイコヌール宇宙基地から打ち上げられることになっています。この探査車はDNAをはじめ、石炭やグラファイト、タバコモザイクウイルスの化学構造解明に貢献したイギリスの女性科学者、ロザリンド・フランクリン(1920年~1958年)にちなみ「ロザリンド・フランクリン」と命名されています。

 火星探査車ロザリンド・フランクリンは、6つの車輪で走行します。本体から高く飛び出したマスト上には、火星の風景を可視光や赤外線などで撮影するパノラミックカメラを装備。




 また、本体前面にはドリルが装備されており、火星表面を掘削し、大気に触れていない火星の岩石サンプルを採取し、分析することができるのが大きな特徴です。

 フランスのトゥールーズにあるエアバスの試験施設で実施された環境試験では、宇宙機の試験を行う「スペースチャンバ」と呼ばれる施設に入り、火星表面の環境を模した条件での動作が確認されました。地球より太陽の光が届きにくい火星では、最低気温が摂氏マイナス12度くらいになると予想されています。この時、ローバー内部の温度も摂氏マイナス50度ほどに低下。そんな条件でも問題なく機器が動作することが求められます。

 また、火星は地球より大気が薄く、大気組成も二酸化炭素が多くなっています。そんな環境もスペースチャンバ内に再現され、動作に支障がないかが確認されました。

 環境試験を終えたロザリンド・フランクリンは、システムチェックを経てフランスのカンヌに移動。タレス・アレニア・スペースの事業所で組み立てが進められている「ExoMarsランダー」の降下モジュールに収納され、打ち上げの時を待つことになります。


 ExoMarsランダーの打ち上げは2020年7月26日~8月11日のうち、条件の良いタイミングでカザフスタンのバイコヌール宇宙基地から、プロトン-Mロケットで行われる予定。火星到着は2021年3月19日を見込んでおり、分離された降下モジュールはパラシュートを使って火星表面に軟着陸することになっています。

<出典・引用>
欧州宇宙機関(ESA) ニュースリリース
Image:Airbus/ESA

(咲村珠樹)