趣味の創作で絵や文章を書いている人にありがちな悩みが、「(キャラクター)設定でつかいたい職業の裏側や日常が分からない」。かきたい題材が思いついても実際に知らないと描写できないものです。実際を知らないことには描写も納得いくものが描けずに悶々となることも。そんなオタクのつぶやきが、同じ思いを抱えた人たちに大きく響いています。

「オタク女、創作のためにお互いの職業の情報交換とかまじできないかな?って思うときある。
求:証券マン
出:IT
みたいな…」

 と、暗号めいた書き方のツイートを投稿しているのは、ワールドトリガーの世界にどっぷりな自称オタク女である、ぽんすけさん。

 この暗号のような書き方を見てピンとこない人のために説明をしますと、「求:証券マン」の「求」は、自分が欲しい職業情報。今回の場合は「証券マン」の経験者を求む。といったところでしょうか。そして「出:IT」の「出」は、自分が提供できる情報。今回の場合でいえば「IT業界の職業情報を提供できますよ」ということです。

 この「求」「出」は、オタク界隈で主に物の交換で使われているテンプレート。観劇やコンサートのチケットが急用のために行けなくなってしまったなどで他の日と交換できる人がいれば交換して欲しい、ダブって出てしまったグッズなどをあげる代わりに他のものと交換して欲しい場合などに、等価交換となるように交換し合うといったもの。ツイッターでもよく見かけますが、多くの場合は等価交換なので金銭の授受には至らない様子。

 実際にマッチングした場合は、DMで連絡を取り合い、会場現地などお互い合意した場所や郵送などで交換し合っています。等価交換が基本で、お互い持て余していたものを同じ価値のあるほかのものと交換できるので、お互いにwin-win状態となるわけです。

 この「オタクマッチングテンプレート」を、創作ネタに生かせないかな……とつぶやいたところ、驚くほどの反響が。リプライ欄では、さながら情報交換会状態に。皆さん、様々なキャリアの情報が欲しいようですね……。

 プロの漫画家や作家であれば、出版社が付いているので書きたい内容についての取材を行うことができますが、趣味の場合にはそう簡単にはいきません。そこで、お互いのキャリアやスキルを求めている人に提供する代わりに、自分が求めている情報を誰かから教えて欲しい、という状態が発生するわけです。

 特に趣味で行う同人活動は様々な職種の人が周囲にオープンにしていたりしていなかったりなので、職場バレを嫌う人も多く、密かにツイッターなどで同人活動の告知や活動を行っている人も多くいます。中には警察官や自衛隊員、鉄道関係なども同人誌を即売会に参加しています。ちなみに、筆者が看護学生時代(20年以上前、昭和の遺物のような寮生活時代)、地獄のような看護実習の合間を縫うように、看護学生のリアル系漫画を描いていた先輩がいましたが、今どうしているのかな……。

 ぽんすけさんもここまで話題になるとは思っていなかったようで、急遽、「#オタク的お仕事情報交換」のハッシュタグを作りましたが、こういうのってオタク特化アプリやサービスにあるといいのかな、と思う筆者。しかしタグで検索して見てみると、結構な人が様々な情報交換を求めているのが分かります。創作活動に必要な情報って、幅広いジャンルであるのですね……。

 ぽんすけさんも、パロディものを書きたいと思ったときに「やはりどうしても(その職業の)裏側やその仕事の些細な日常のことほど知りたいなと思うので……。しかもそういうことほど専門書籍をあたっても書いてる人からしたら当たり前すぎて載っていなくて」と、職業物の日常的なパロディの参考にしたいけど、「その職業あるある的な些細な日常の一コマ」を知りたいけど難しい、といったご様子。

 そこで、自分の提供できる職業情報をアプリやサービスに登録しておき、求める情報を持つ人が登録していれば簡単にマッチングできそうな気がするんですけど、どうでしょうか……。

 創作活動を支援しているサイトはいくつもあるので、漫画家向けサイトや小説系サイトなどにこの機能があると、取材ができない人にとってはとても助かる機能となりそうな気がします。ただし、マッチングで知りえた情報は秘匿性の高いものもあるので、提供者はかなり気を付ける必要がありますが……。

<記事化協力>
ぽんすけさん(@otawa0416)

(梓川みいな)