生まれ育った環境と個人の特性は、生まれた本人では選べません。しかし、その後に受ける影響によって人はさまざまに個性が際立っていきます。ひとりのご婦人が、ごく普通のカフェで聞かせた言葉遣いに、優雅な美しさを感じる人が相次いでいます。

ドトールで隣に来た素敵なご婦人。
「お誘い有難う、とても嬉しかったわ!」
「先生はどうしてらっしゃるの?」
「何か召し上がる? あちらまで行って注文するの?あたくし頼み方知らないの。見てきて、右にならえをするわ」
マンガで上品な人物を描く時、こういう言葉遣いがなかなか出てこないのよね

 そんな場面に出くわしたのは、ニコ・ニコルソンさん。「マンガ認知症」(WEBちくま)と「アルキメデスのお風呂」(ジヘン)を連載中で、「ナガサレール イエタテール」(太田出版)「わたしのお婆ちゃん 認知症の祖母とのくらし」(講談社)などを刊行している漫画家さんです。

 ニコさんによると、その日偶然居合わせたご婦人の年の頃は60代あたり。お連れの方はもう少し庶民的な雰囲気を漂わせていたということですが、背筋を伸ばし、楽しそうに会話をお楽しみになられていたとか。そして発せられたのが上記の言葉。上品な言葉遣いに、「見てきて、右にならえをするわ」なんて茶目っ気ある言葉も、そう出てくる物ではありません。最初から誰かを頼ろうとせずに自分で行動してみようかしら?そんな謙虚さをも感じる言葉に、真の上品さを漂わせているような雰囲気があります。

 わずか数行の発言だけで、「ご婦人は普段から丁寧な日常を送ってらっしゃるのでは」と、感じる人も多く、言葉遣いから優雅な所作を同時に想像する人も。こういう上品さは、付け焼刃ではなかなか醸し出すことはできないもの。だからこそ、言葉の美しさからその人の人柄まで素敵に感じる人が多いのでしょう。

 品格は、長年の生活の中で培うもの。そして暮らしや心持ちに余裕がある人は、振る舞いも穏やかに品よく感じられるものです。そのような品格を身に付けられる暮らしぶりに、あこがれを感じる人も多いかもしれませんね。

<記事化協力>
ニコ・ニコルソンさん(@niconicholson)

(梓川みいな)