ペーパークラフトの世界は非常にバラエティ豊かなのですが、その中でも紙を切って折る、という手法で作られる「切り折り紙」は繊細な表現が可能。Twitterに投稿された切り折り紙の作品が、その繊細で立体的な装飾で注目を集めています。

 刀身に鶴や牡丹などの透彫を入れた切り折り紙の短刀を作ったのは、まさきや(真咲屋)さん(@masakiya1624)。フリーランスのプログラマをなさる傍ら、様々な造形作品を作っており、以前にも水晶と透明レジンで作ったドラゴン(龍)が話題となりました。

 今回の作品は、切り折り紙のグループ展に出品するために作ったという、短刀。流水や牡丹、鶴に松、月といった風物が、切り絵による透彫で表現されています。モチーフは、まさきやさんが日本刀に持つイメージから、月、波、鳥、雲などを選び、色は白で統一して神聖な雰囲気に仕上げたとのこと。


 この短刀、実に20枚以上の紙を重ねて作られているから驚き。角棟に仕上げられた棟(むね)の厚みはおよそ5mm。実際の日本刀のように、刃に向かうにつれて薄くなっています。日本刀で棟から見た刀身の厚みを「重ね」といいますが、文字通り「重ねの厚い」刀身です。

 この短刀に用いられているのは4種類の紙。不透明な部分を作っている厚手の紙と、半透明に透かしている部分に使われる薄手の紙、それぞれ2種類ずつが使われています。

 主に使われているのが厚手のキュリアスメタル(平和紙業)のホワイト。両面パールカラーのファンシーペーパーで、色違い(クリーム)のものが柄の模様や鐔、柄頭に使われています。

 鶴の翼や柄の月など、半透明な部分は、同じく平和紙業のキュリアスTL(55kg)というトレーシングペーパー。鶴の翼にはシルバー、柄の月にはゴールドを使っているそうです。これらはいつも紙の作品をつく際に利用している、地元の「紙通販ダイゲン」という会社から購入したとのこと。



 まさきやさんによると、厚みがあって多くの紙を重ねられる棟の部分から、薄くなる刃の部分に至るまでの構造で、どの層にモチーフを配置するか、バランスを考えるのが大変だったといいます。各モチーフは全て別々の層になっており、立体感を残すために少しずつずらしているんだとか。

 こうして重ねられた紙は木工用ボンドで接着されています。実際の日本刀を作るように、刀身を造形した後に“はばき”を巻き、切羽、鐔(つば)、柄、柄巻と作られました。20時間ほどの作業時間で、刀身に3日、そのほかの部分に1日あまりを費やしたとのこと。

 鐔は小判型で、草木文様が表現されています。

 作品を作り出したらほかのことに集中できないとのことで、週末の土曜日に作り始めて以来、家事と寝る時間以外は、ほぼ制作作業に没頭していたというまさきやさん。火曜日の昼過ぎに完成した時は、充実感も大きかったでしょうね。

 今回作られた短刀は、東京都文京区湯島にある折り紙会館のギャラリーで12月10日~21日に開催される「第三次 切り折り紙の世界展」というグループ展で展示される予定です。「切り折り紙」という名前を提唱した川合工房の川合正和さんや、運営を務める我流切紙人さん(@garyukirigami)ら、15人以上の作家による作品が展示されます。切り絵の繊細さと、紙を折って作る立体感が同居する切り折り紙の世界は、かなり奥が深そうです。

<記事化協力>
まさきや(真咲屋)さん(@masakiya1624)

(咲村珠樹)