ロッキード・マーティンは2019年11月20日(現地時間)、日本の防衛省から代理店を通じて、イージス・アショア用のAN/SPY-7(V)1レーダーを2セット受注したと発表しました。イージス・アショア設置に向けたプロセスが、一歩進んだことになります。

 イージス・アショアは、艦船向け防空システムとして設計されていたイージス・システムを、水際(アショア)での弾道ミサイル防衛向けに再設計したもの。洋上の艦船で使用されるイージス・システムに比べ、動作に必要なエネルギーや、弾薬(迎撃ミサイル)の補給が容易なため、より強力な防空システムを構築することができます。

 日本向けイージス・アショアに使用されるレーダーは、海上自衛隊のイージス・システム搭載艦に使用されているAN/SPY-1レーダーより高出力の次世代型、AN/SPY-7(V)1。従来のAN/SPY-1装備のイージス・アショアより遠方から目標を捕捉できるだけでなく、複数の目標を同時に追尾し、それぞれに対して同時に迎撃ミサイルを発射することが可能です。

 イージス・アショアの弱点と利点は、イージス・システム搭載艦のそれと表裏一体の関係にあります。イージス・システム搭載艦は状況に応じて自由に移動できる反面、船体規模から供給できる電力と搭載する迎撃ミサイルに限りがあり、必要に応じて補給が不可欠。イージス・アショアは陸上にあるため電力供給や補給面で有利ですが、移動することができません。

 このため、2つのイージス・システムを一体として弾道ミサイル防衛(BMD)に活用することで、互いの弱点を補いあう運用が可能になります。陸上固定式のイージス・アショアは、より遠くからの目標探知と複数目標に対する同時迎撃を担い、イージス・システム搭載艦は機動的に洋上を移動哨戒し、イージス・アショアでは対処不能な場所での弾道ミサイル防衛を行うのです。

 AN/SPY-7(V)1は、カナダ海軍で計画中の水上戦闘プログラムや、スペイン海軍で建造されるF-110型フリゲートにも採用が決まっています。次世代型イージス・システムの要として、AN/SPY-7(V)1レーダーは採用が進むことでしょう。

<出典・引用>
ロッキード・マーティン プレスリリース
Image:Lockheed Martin

(咲村珠樹)